人気協力アクション『IT Takes Two』が商標トラブルに。商標登録にパブリッシャー「Take Two」から異議申し立て


Electronic Artsから販売中の協力アクションゲーム『It Takes Two』のタイトル名について、米国での商標登録が取り下げられていたことが明らかになった。

パブリッシャーのTake-Two Interactive(以下、Take-Two)からの異議申し立てを受けての措置だとして海外メディアEurogamerなどが報じていることを、さまざまなゲーム情報を発信するAUTOMATONは21年12月4日次のように伝えている。

『It Takes Two』は、デベロッパーのHazelight Studiosが手がけた2人協力プレイ専用アクションゲーム。『Brothers: a Tale of Two Sons』や『A Way Out』といった協力プレイゲームを手がけてきたJosef Fares氏の新作だ。

本作は、PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに今年3月26日に発売。非常に高い評価を獲得し、今年10月時点で300万本を超える売り上げを記録している。The Game Awards 2021ではGame of the Yearを含む複数の賞にノミネートされており、今年を代表する作品のひとつといえるだろう。

本作のタイトル名である「It Takes Two」については、SteamやMicrosoft Storeのページを見ると、Hazelight Studiosの登録商標であると記載されている。ただ、米国特許商標庁での登録情報を確認すると、同スタジオからの商標登録出願の取り下げ申請が、今年3月25日に受理されたと案内されている。

時系列を追って見ていくと、まずHazelight Studiosは2020年5月に「It Takes Two」の商標登録を米国にて出願。そして同年9月に出願情報が公開された。その後一定期間のあいだに異
議を申し立てるものがいなければ、商標登録が認められる流れとなる。

ここで待ったをかけたのが、パブリッシャーのTake-Twoだった。同年10月に、同商標に対して異議申し立てをおこなった情報も、米国特許商標庁にて公開されている。

同様の動きは欧州でも同時期に起こっていた。欧州連合知的財産庁の公開情報を見てみると、Take-Twoは先行商標として「T2 TAKE TWO」を提示し、「It Takes Two」の商標登録に異議
を申し立てていたことが分かる。

理由としては、混同を招く恐れや、(Hazelight Studios側が)不当な利益を得る可能性、また先行商標の独自性や評判に不利益がおよぶ可能性が挙げられている。こうした理由の正当性はともかく、両者が似ているといえなくもないのは確かである。

Take-Twoは、Rockstar Games や2Kなどを傘下にもつ大手パブリッシャーだ。実は同社はこうした異議申し立てを数多くおこなっており、本件はそのひとつに過ぎない。

「Take」や「T2」「Rockstar」「R」「2K」「Mafia」「Dot」「Civilization」などの言葉が含まれる商標の登録申請に対し、自社の登録商標との類似性を挙げて、次々に異議申し立てをおこなっている
のだ。相手はゲーム会社とは限らないため、『It Takes Two』が目をつけられたのはたまたまかも
しれない。

『It Takes Two』が発表されたのは2020年6月のこと。Hazelight Studiosはこれに先立って本作のタイトル名を商標として登録しようとしたが、Take-Twoからの異議申し立てを受けて、発売前日になって取り下げたかたちとなる。
同スタジオは海外メディアEurogamerに対し、進行中の懸案についてはコメントできないとしつつ、問題が解決されるよう期待していると述べている。

Take-Two側としては、自らの商標の価値を守るために行動しているのだろう。ただ、少しでも似ている名称の出願に対して手当たり次第に異議申し立てをおこなっているようにも映り、また今回は人気ゲームが対象になったことで、たとえば海外フォーラムResetEraでは、同社に対する批判
的な意見が数多く投じられている。

今回Hazelight Studiosは商標の取得は断念したものの、『It Takes Two』はそのままのタイトル名にて販売されている。しかしTake-Twoの対応次第によっては、今後タイトルを変更せざるを得なくなる可能性もあるだろう。

もっとも、何事もないまま発売からかなり時間が経っており、また本作の存在を知らないとも考えにくいため、Take-Twoは本作に対して権利を主張するつもりがないとも受け取れる。一方で、進行中の懸案という上述のコメントもあることから、今後何らかの動きがあるかもしれない。


【オリジナル記事・引用元・参照】
ttps://automaton-media.com/articles/newsjp/20211204-184590/


Latest Posts 新着記事

知財の主戦場は「充電」から「交換」へ——CATLが先回りする日本市場の布石

世界最大級の車載電池メーカーCATLは、セルやパックの“モノづくり”を超えて、交換式バッテリーによる「BaaS(Battery as a Service)」へと事業射程を拡張している。交換ステーション、共通モジュール、運用ソフト、資産管理—この新モデルが成立するとき、勝負を決めるのは工場規模だけではない。規格化を押さえる特許と、サプライチェーン横断で効くサービス設計の知財である。中国本土では、Si...

環境×技術×知財 BlueArchがつくる“持続可能な海洋モニタリング”の新モデル

海岸林、マングローブ、塩沼、藻場などの ブルーカーボン生態系 は、地球温暖化対応の大きな鍵となる。これらの環境は、陸上森林よりも濃密に炭素を隔離する能力を持つという報告もある。Nature+2USGS+2 だが、こうした海・沿岸域の調査・保全には「アクセス困難」「高コスト」「リアルタイム性の欠如」といった課題が横たわる。ここに、ドローン技術、GPS(あるいは水中位置推定技術)、そして特許設計による...

ファーウェイ、特許で動く EV×5G基地局に見る中国知財の拡張戦略

■ 序章:静かに増える“赤い知財網” 特許庁の公開データを丹念に追うと、近年ひとつの変化が浮かび上がる。日本国内での中国企業による特許出願が、2015年以降、年率二桁で増加しているのだ。 とりわけ通信・電池・モビリティといった「脱炭素×デジタル」分野に集中しており、日本企業が得意とする領域を正面から狙っている。こうした動きの中心にいるのが、通信大手・華為技術(ファーウェイ)である。 米中摩擦のさな...

終わりなき創造の旅 厚木の発明家が挑む“次の技術革命”」

特許数でギネス更新 21世紀のエジソン、厚木に―発明の街が問いかける、日本の未来図 神奈川県厚木市―東京からわずか1時間足らずの距離にあるこの街が、世界の技術史に名を刻んだ。特許数の世界記録を更新した発明家、山﨑舜平(やまざき・しゅんぺい)氏が拠点を構えるのが、まさにこの地である。彼の名がギネス世界記録に再び載ったというニュースは、科学技術の世界だけでなく、日本人のものづくり精神を象徴する話題とし...

知財は企業の良心を映す鏡――4億ドル評決が語るイノベーションの倫理

2025年10月、米テキサス州東部地区連邦地裁で、韓国の大手電子機器メーカー・サムスン電子に対し、無線通信技術の特許侵害を理由に4億4,550万ドル(約690億円)の賠償を命じる陪審評決が下された。この判決は、単なる企業間の紛争を超え、ハイテク産業における知的財産権(IP)の重みを再認識させる事件として、世界中の知財関係者の注目を集めている。 ■ 「技術を使いたいが、支払いたくない」——内部文書が...

知財が揺るがす電機業界――TMEIC×富士電機、UPS特許訴訟の裏側

2025年夏、産業用電源装置分野を揺るがすニュースが伝わった。東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が、富士電機の無停電電源装置(UPS)製品が自社の特許を侵害しているとして、韓国において訴訟および輸入禁止の措置を求めた件である。韓国貿易委員会(KTC)は8月下旬、TMEICの主張を一部認め、富士電機製の特定UPSモデルについて韓国への輸入を禁止する決定を下した。日本企業同士の知財紛争が、国外で具...

「JIG-SAW、AI画像技術で米国特許を獲得へ 知財を武器にグローバル競争へ挑む」

はじめに:発表概要と意義 JIG-SAW(日本発の IoT / ソフトウェア/AI ベンチャーと理解される企業)は、米国特許商標庁から「コンピュータビジョン技術」に関する Notice of Allowance(特許査定通知) を取得した旨を、自社ウェブサイトおよびニュースリリースで公表しています。 具体的には、JIG-SAW は「コンピュータビジョン技術、画像処理・画像生成支援技術」分野において...

「特許で世界を包囲する中国 イノベーション強国への加速」

はじめに:なぜ国際特許出願数が注目されるか イノベーション(技術革新)の国際競争力を測る指標として、研究開発投資、論文発表数、特許出願数などが長らく注目されてきました。特に国際特許(例えば、特許協力条約 PCT 出願、あるいは各国出願による外国での保護を意図した出願)は、一国の発明・技術が国際市場を見据えて保護を志向していることを示すため、技術力だけでなく国際志向性の強さも反映します。 近年、中国...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る