部屋選び、指先一つでリアル体験
不動産の物件選びの過程では、間取り図や静止画像だけでは伝わらない物件の魅力や実際の様子を把握するために、時間と労力をかけて現地に足を運ぶ必要がありました。
今回紹介する特許は、このような問題を解決するために、遠隔操作によって物件内の仮想カメラを動かし、内覧者目線で部屋を見ることができる技術です。ユーザーは自宅やカフェから、あるいは移動中でも、スマートフォンやパソコンを通じて、まるで現地にいるかのような体験を得ることができます。具体的にどのようなシステムなのか、そして私たちの物件選びにおける体験をどのように変えるのかを深掘りしていきたいと思います。
発明の背景
本発明は、インターネットなどの通信ネットワークを介して賃貸物件の情報を提供する物件情報提供サーバに関します。
従来、この種の物件情報提供サーバとして、間取り図や物件内の写真を物件情報として提供するサーバが知られています。
しかしながら、上述した写真等の物件情報に基づいて賃貸契約を検討する物件を絞り込んだとしても、実際に内覧してみると、物件情報によるイメージと実物とが大きく異なる場合があります。そのため、実際に現地へ行って物件を確認する必要があり、賃貸物件の選定に手間がかかるという問題があります。
仮に、物件の部屋内の様子を伝えるために、多量の写真を掲載したとしても、写真での印象と、実際に見たときの印象とが異なってしまう場合が多いという問題があります。
以上のような問題点があるため、賃貸物件の選定を効率良く行うことが可能な物件情報提供サーバが要望されています。
どんな発明?
発明の目的
本発明の物件情報提供サーバを利用すると、ユーザ端末(スマホなど)の遠隔操作によって、興味ある物件内の仮想カメラを移動させることができます。そして、ユーザ端末のモニタを通して、物件の部屋の様子を内覧者目線で移動しながら見ることができます。よって、本発明の物件情報提供サーバが提供する物件情報から予想される部屋と、実物の部屋との間におけるイメージの差を小さくできます。したがって、無駄な内覧を減らすことができるため、賃貸物件の効率的な選び出しが可能です。
本発明の物件情報提供サーバは、通信ネットワークとつながったユーザ端末からの要求に応じて、物件情報を提供します。
物件情報提供サーバは、データ記憶装置、仮想画像提供装置、および、移動画像提供装置を備えます。
データ記憶装置は、物件ごとに部屋内のさまざまな位置で撮影されたパノラマ画像を記憶します。
仮想画像提供装置は、物件の部屋内にあると仮定される仮想カメラが映す仮想画像を、上記データ記憶装置のパノラマ画像から生成してユーザ端末のモニタに表示させます。また、ユーザ端末によって操作される仮想カメラの位置および向きに応じて、仮想画像を変えていきます。
移動画像提供装置は、ユーザ端末の操作によって移動する仮想カメラの移動に対応し、その移動方向に沿った様々な位置であらかじめ撮影したパノラマ画像から各種の仮想画像を生成し、ユーザ端末のモニタに順次表示させます。
上記のデータ記憶装置は、建物内のいずれの部屋でも共通する部屋内パノラマ画像、および、各部屋から撮影した景色パノラマ画像を記憶します。
上記の仮想画像提供装置は、建物内の特定の部屋が選択されたときに、いずれの部屋でも共通する上記の部屋内パノラマ画像、および、選択された部屋から見える上記の景色パノラマ画像を組み合わせて、仮想画像を提供します。
本発明の物件情報提供サーバにユーザ端末を接続すれば、ユーザ端末の遠隔操作によって、部屋内で仮想カメラを移動させ、部屋内をモニタ越しに内覧者目線で移動しながら見ることができます。
発明の詳細
以下、本発明の具体例について図面を参照しながら説明します。図1は、賃貸物件検索システム9の全体的な構成(概念図)を示します。この賃貸物件検索システム9では、物件情報提供サーバ12に通信ネットワーク11を介してユーザ端末10が接続されています。賃貸物件検索システム9は、例えば、WWW(World Wide Web)技術を用いて実現されています。
【図1】
ユーザ端末10は、通信ネットワーク11に接続可能な、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯型端末機(Personal Digital Assistant)等であり、WWWブラウザを搭載しています。
通信ネットワーク11は、例えば、インターネット、ローカルエリア通信ネットワーク(LAN)、ワイドエリア通信ネットワーク(WAN)、公衆交換電話網等、または、それらを組み合わせて構成されます。通信ネットワーク11は、有線または無線のどちらでも可能です。
物件情報提供サーバ12の構成に関しては後に詳述します。まず、物件情報提供サーバ12に接続したユーザ端末10で得られる物件情報について説明します。なお、「賃貸物件」とは、その賃貸物件の貸し主が、不動産業者に賃貸契約の締結の代行を依頼している物件です。例えば、集合住宅の複数の部屋をそれぞれ別々で賃貸契約するように不動産業者へ依頼している場合、1つの部屋が1つの賃貸物件となります。また、以下の説明において、単に「物件」と表記する場合、「賃貸物件」を意味します。
物件情報提供サーバ12のURLは、物件検索サイトとして登録されています。ユーザ端末10によって例えば汎用検索エンジンを利用すれば、その物件検索サイトをヒットさせることができます。そして、ヒットした物件検索サイトをクリックすることで、ユーザ端末10が物件情報提供サーバ12と接続されて通信可能な状態になります。すると、物件情報提供サーバ12が提供するメイン検索画面(図示せず)が、ユーザ端末10のモニタ10Mに表示されます。地域、家賃等の検索条件を入力して検索実行ボタンをオンすると、検索条件を満たす物件の検索結果リストがモニタ10Mに表示されます。そして、その検索結果リストから特定の物件をユーザ端末10によって選択すると、図2に例示する基本情報画面G1(基本情報画面の概略図)がモニタ10Mに表示されます。
【図2】
基本情報画面G1には、物件の建物名、所在地、賃料などのデータD1、写真D2、および、間取図(まどりず)D3などが表示されます。また、写真D2をクリックすると、外観、内部、駐車場などへと順次、写真内容が切り替わります。
従来の物件情報提供サーバが提供する物件検索サイトであれば、この基本情報画面G1に表示されるような物件情報だけで、物件検索サイトにおける絞り込みが終了し、絞り込んだ物件リストを、例えば不動産会社に連絡します。そして、実際に物件を内覧するステップへと進みます。
これに対し、本発明の物件情報提供サーバ12が提供する物件検索サイトでは、基本情報画面G1の物件情報で絞り込みを行った後、実際の内覧を行う前に、さらに十分に検討できます。具体的には、基本情報画面G1には、自由内覧ボタンB1とアシスト付内覧ボタンB2と内覧動画ボタンB3とが設けられています。自由内覧ボタンB1をオンすると、図3に示す内覧情報画面G2(内覧情報画面の概略図)がモニタ10Mに表示されます。なお、自由内覧ボタンB1がオンされた場合を、以下「フリーモード」といいます。
【図3】
内覧画面G2には、画像表示部26、現在位置表示部27、および、コメントボックス28が設けられています。
画像表示部26には、物件内を中継カメラが撮影しているLive映像のような画像が表示されます。換言すると、物件検索サイトのユーザが、物件を内覧したときの視覚情報に近い画像が画像表示部26に表示されます。後に説明するように画像表示部26の画像は、中継カメラのLive映像ではないため、以後「仮想画像」といいます。また、Live映像であるかのごとく物件内に配置されて「仮想画像」を映し出したとみなすカメラを、以後「仮想カメラ」といいます。
現在位置表示部27には、例えば、矢印形状のポインタP、内覧ラインL、および、内覧ポイントSが、物件の間取図D3に重ねて表示されています。内覧ラインLおよび内覧ポイントSは、物件内において仮想カメラが移動できる位置を示します。また、間取図D3上のポインタPの位置は、仮想カメラの現在位置を示します。ポインタPの矢印の向きは、仮想カメラの向きを示します。なお、図3に示す内覧画面G2では、間取図D3の玄関が、現在位置表示部27の下側に配置されています。一方、上下を逆転させて玄関を現在位置表示部27の上側に配置して表示する場合もあります。
コメントボックス28には、内覧画面G2の操作案内、および、物件案内等のコメントが表示されます。例えば、内覧画面G2を開いた直後に、コメントボックス28に、以下のような操作案内のコメント文が表示されます。「マウスまたはタッチパネルによって、映像内の矢印をクリックして物件内を進んで下さい。また、画面をドラッグして見る向きを変えたり、スクロールしてズーム変更したりすることもできます。間取図上の位置を選んで移動できます。」
また、内覧画面G2が開いた直後に、画像表示部26には、例えば、図3に示すように物件の玄関内または玄関前にポインタP(仮想カメラ)が配置され、その場所での仮想画像が表示されます。そこで、コメントボックス28の前述のコメント文に従って画像表示部26の仮想画像をドラッグすると、上下左右のいろいろな方向に仮想カメラを向けたさまざまな仮想画像へと変化します。例えば、玄関前にポインタPが配置されている場合、玄関前の外の景色を見渡すことができます。
画像表示部26には、仮想画像に重なって操作用矢印26Aが表示されます。操作用矢印26Aをクリックすると、その操作用矢印26Aが指す方向に仮想カメラを移動させた、動画のような移動画像が表示されます。その後、例えば図4の内覧情報画面の概略図に示すように、所定距離だけ進んだ位置の仮想画像に切り替わります。このとき、現在位置表示部27のポインタPの位置も連動して内覧ラインLの上を移動します。このようにして、物件内を移動したような感覚を得ることができます。
【図4】
現在位置表示部27の内覧ラインL上のどこかの点または内覧ポイントSを選択すると、選択された位置へ仮想カメラを瞬間的に移動させ、仮想画像を切り替えることもできます。また、図4に示すように、間取図D3上の窓付近に内覧ポイントSが設定されている場合、方向を変えながら窓の外の景色を見ることができます。間取図D3上のテラスに内覧ポイントSが設定されている場合も同様です。さらには、マウスのスクロールボタンをスクロール操作するか、または、タッチパネルで仮想画像上の2点を触って拡げる操作をすれば、仮想画像の一部を拡大して(即ち、ズームアップして)見ることもできます。
間取図D3上に設定されたコメント発動位置SP1にポインタPが来たときには、コメントボックス28にコメント文が表示されます。コメント文は、物件内の各部分(例えば、システムキッチン、証明器具、洗面所等)をアピールする文です。なお、コメントボックス28にコメント文が表示されるときに、コメント音声がスピーカから出力されるように構成することもできます。また、コメント文を表示せずにコメント音声のみが出力されるように構成することもできます。
物件によっては、図5の内覧情報画面の概略図に示すように、視線高さ変更ボタン28Bと、視線高さを標準に戻す視線高さリセットボタン28Cとが、内覧画面G2に表示されます。視線高さ変更ボタン28Bの操作によって、仮想カメラの高さを標準(例えば、床上150~170[cm])よりも低い位置(例えば、90~100[cm])、または、高い位置(例えば、190~200[cm])に変更できるため、高さを変更した仮想画像が画像表示部26に表示されます。これにより、例えば、車椅子を利用している身障者、または、極めて背が高い人の視線に合わせた仮想画像を提供できます。
このように自由内覧ボタンB1が選択されてフリーモードになった場合、ユーザ端末10によって仮想カメラを自由に操作して物件内を見学できます。なお、内覧画面G2中の終了ボタン(図示せず)をオンすると、フリーモードを抜けて基本情報画面G1に戻ります。後述するアシストモード、自動案内モードに関しても同様です。
基本情報画面G1にてアシスト付内覧ボタンB2をオンした場合(以下、「アシストモード」という)も、上述したフリーモードの場合と同様に、図5に示すような内覧画面G2が表示されます。そして、コメントボックス28に、例えば不動産会社の内覧アシスタントをイメージさせるキャラクタ画像28Gと、以下のようなコメント文とが表示されます。「ご希望の物件に到着しました。先ずは、ご自由に物件内をご覧下さい。マウスかタッチパネルで、映像内の矢印をクリックして物件内を進むことができます。また、画面をドラッグして見る向きを変えたり、スクロールしてズーム変更したりすることもできます。間取り図上の位置を選んで移動することも可能です。」
【図5】
アシストモードでも、フリーモードと同様にユーザ端末10によって仮想カメラを操作し、物件内の所定箇所の仮想画像を画像表示部26上で見ることができます。ただし、その操作に伴い、あらかじめ設定された動画発動位置SP2にポインタP(仮想カメラ)が最初に移動したときには、ユーザ端末10の操作ができなくなります。即ち、ユーザ端末10の操作が無効化されます。
そして、例えばキャラクタ画像28Gが再登場して、「お客様。是非、こちらをご覧下さい。」というコメント文が表示され、ユーザ端末10の操作とは無関係に強制的(自動的)にポインタPが、あらかじめ設定された方向に進みます。それに連動して画像表示部26の仮想画像も変化して表示されます。即ち、あらかじめ用意された仮想画像の動画(発動動画)が画像表示部26に表示されます。発動動画が表示されている間に、発動動画に合わせたコメント文またはコメント音声が出力される場合もあります。そして、発動動画の表示終了後に「有り難うございました。また、自由に物件内をご覧下さい。」というコメント文が表示されます。
そして、発動動画の表示終了時のポインタPの位置SP3(動画終了位置SP3)から再び自由に仮想カメラを移動できます。アシストモードを終了して再始動しなければ、動画発動位置SP2にもう一度移動してしまったとしても、発動動画は発動しません。
より具体的な一例では、ユーザ端末10の操作によって、図5に示す物件のリビング中央の動画発動位置SP2までポインタPが移動すると、ユーザ端末10の操作が不可能になります。そして、ポインタPが動画発動位置SP2から窓付近まで進んだあと、そこから戻って次にテラス外の動画終了位置SP3に進みます。その間、ポインタPの移動に連動して発動動画が表示され、「このすばらしい外の景色をご覧ください。」等のコメント文が表示されます。そして、発動動画が終了してから、動画終了位置SP3から再び仮想カメラの自由な移動操作が可能となります。
このようにアシスト付内覧ボタンB2が選択されてアシストモードになった場合、ユーザ端末10にて仮想カメラを自由に操作して物件内を見学できるだけでなく、部分的にユーザ端末10の操作が制限されて、物件のアピールポイントを容易かつ迅速に確認できます。
基本情報画面G1にて内覧動画ボタンB3が選択された場合(以下、「自動案内モード」という)は、前述の内覧画面G2が表示され、画像表示部26にて動画が再生されます。その動画は、上述したアシストモードの発動動画が物件内全体にわたって展開された動画です。
次に、上述したように物件情報を提供する物件情報提供サーバ12の構成について説明します。物件情報提供サーバ12は、図6のコンピュータシステムの概念図に示すように、汎用的なコンピュータシステム13が所定のアプリケーションソフトウェアを実行できるように構成されています。具体的には、コンピュータシステム13は、CPU、ROM,RAMを有した主制御部13Aを備えます。
また、例えばハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)等からなるデータ記憶部13Bを備えます。さらに、通信ネットワーク11に接続された通信制御部13Cを備えます。そして、データ記憶部13Bにインストールされたアプリケーションプログラムを主制御部13Aが実行することで、コンピュータシステム13が、図1に示すWWWサーバ21、データ処理部22、データベースサーバ23等として機能します。物件情報提供サーバ12は、それらWWWサーバ21等によって構成されます。
【図6】
データ記憶部13Bには、データベース15が記憶されています。データベース15は、データベースサーバ23のデータベース管理システム(DBMS:DataBase Management System)によって管理されます。データベース15は、例えば、物件ファイル、通常画像ファイル、複数の特殊画像ファイル、および、マップファイルなどを含みます(図1もご参照)。
特殊画像ファイルは、図9に示すパノラマ撮影装置99を使用して作成されます。図9は、パノラマ画像の撮影法を示す概念図を示しています。図9(A)ではパノラマ撮影装置99を横から見ています。図9(B)ではパノラマ撮影装置99を上から見ています。パノラマ撮影装置99は、複数のカメラ(図示せず)を備え、ほぼ全方位(真下を除く)を同時に撮影し、パノラマ撮影装置99を中心とするパノラマ画像29を撮影します。
図10は、パノラマ画像の概念図を示し、パノラマ画像29が上下軸を中心にして展開されたイメージ図です。
【図9】
【図10】
また、パノラマ撮影装置99は、GPSおよび加速度センサ(図示せず)を搭載しています。よって、現在位置データを取得可能であり、しかも、基準カメラの水平軸がどの程度傾いているかという傾きデータを取得できます。そして、パノラマ画像29を撮影するたびに、パノラマ画像データPM1、現在位置データ、および傾きデータをセットにしたパノラマセットデータがメモリに取り込まれます。
このパノラマ撮影装置99を使用し、以下のようにして各物件のパノラマセットデータを取得します。実際の物件にパノラマ撮影装置99を持ち込み、パノラマ撮影装置99の基準カメラの高さを、あらかじめ設定された標準高さ(例えば、床上150~170[cm])に設定し、座標基準データを設定します。例えば、パノラマ撮影装置99を物件の玄関口の中央に配置し、基準カメラを物件内(部屋内)に向け、基準水平軸を水平方向に合わせます。例えば、玄関口から最も遠い壁面の画像を基準カメラがとらえるように設定します。そして、データ取得ボタンをオンにすると、例えば、玄関口の中央を原点とし、玄関口から物件の内側へ向く水平方向をY軸方向とし、そのY軸に直行する方向をX軸方向とする座標基準データが、メモリに取り込まれます。
次に、一定距離(例えば、20[cm])ずつパノラマ撮影装置99を移動させるごとに、自動的に撮影を行うオートモードがセットされます。そして、物件の内部でパノラマ撮影装置99を移動させながら連写します。これにより、物件内を一定距離移動したパノラマセットデータが取得されていきます。さらに、パノラマ撮影装置99を上記の原点から玄関口の外に移動させたり、テラスの外に移動させたりして、物件外のパノラマセットデータ(外画像)を取得します。加えて、マニュアルモードに切り替えて、例えば、トイレ内、窓付近、またはテラス等にパノラマ撮影装置99を移動させてパノラマセットデータ群を取得します。
場合によっては、基準カメラの高さを標準高さよりも低く(例えば、床上90~100[cm])、または、高く(例えば、床上190~200[cm])設定し、標準高さの場合と同様にパノラマセットデータ群を追加で取得します。
一方、複数の物件で間取りが同じ場合、窓またはテラス等から見える景色のみが異なるため、各物件から見た外側(屋外)のパノラマセットデータのみを取得します。
参考として図11の間取の概略図には、撮影位置がドットdt1、dt2,dt3,・・・で示されています。前述の図10に示す帯状のパノラマ画像が、円筒状に丸められたイメージで示されています。
【図11】
図9(A)に示すパノラマ撮影装置99による撮影法から把握できるように、パノラマ画像は、実際には円筒状でなく、中空の球の内面を内側から見た状態になります。説明の簡素化のために、円筒状から展開された帯状のイメージ(図10参照)の画像がパノラマ画像であると仮定しますが、パノラマ画像は、実際には図9(A)および図9(B)に示すように、上下方向および周方向でそれぞれの領域に分割され、領域ごとにファイル化されています。そして、ユーザ端末10の操作によって向けられる中継カメラの方向は、いずれかの領域に割り当てられて処理されます。
以上説明しましたように、本発明の物件情報提供サーバ12にユーザ端末10を接続すれば、所望の物件内で仮想カメラをユーザ端末10の遠隔操作にて移動するようにして、物件内をユーザ端末10のモニタ10M越しに内覧者目線で移動しながら見ることができます。これにより、物件情報提供サーバ12が提供する物件情報からイメージされる物件と、実物との差を小さくして無駄な内覧を減らすことができるため、賃貸物件の選定を効率良く行うことが可能です。
また、ユーザ端末10の操作によって物件内を移動しながら、物件内に設定された動画発動位置SP2に移動したときに、ユーザ端末10の操作が無効になり発動動画がユーザ端末10のモニタ10Mに表示されるため、物件のアピールポイントをユーザが見落とさずに済み、この点においても賃貸物件の選定を効率良く行うことが可能です。また、発動動画にはコメント文やコメント音声が付されることもあり、それらにより物件のアピールポイントを容易に理解できます。
さらには、物件の外を写した景色画像も見ることができるため、物件のイメージと実物との差をより一層小さくできます。しかも、同じ建物の異なる部屋に対して、部屋ごとに異なる画像が提供されるため、同じ建物でも部屋単位で細かい検討が可能です。また、ユーザ端末10による自由な操作で物件内をモニタ10M越しに見学している際に、物件内に設定されたコメント発動位置SP1に移動したときには、コメント文またはコメント音声が提供されるため、この点においても物件のアピールポイントをユーザが見落とさずに済みます。
別の具体例
本発明は、上述した例に限定されず、例えば、以下に説明するような別の具体例も含みます。
上記の例では、ユーザの視点から見た仮想画像が画像表示部26に映し出されていましたが、図18の内覧情報画面の概略図に示すように、ユーザ(即ち、内覧者)を表す人物66Wを映し出し、この人物66Wを操作するように構成することも可能です。また、人物66Wだけでなく、不動産会社の内覧アシスタントを表す人物を映し出ることも可能です。
【図18】
ここがポイント!
以上説明しましたように、物件情報提供サーバを利用して、物件の部屋の様子を内覧者目線で移動しながら見ることができます。よって、物件情報から予想される部屋と、実物の部屋との間におけるイメージの差を小さくできます。したがって、無駄な内覧を減らすことができるため、賃貸物件の効率的な選び出しが可能です。
本発明の物件情報提供サーバは、通信ネットワークとつながったユーザ端末からの要求に応じて、物件情報を提供するために、データ記憶装置、仮想画像提供装置、および、移動画像提供装置を備えます。
データ記憶装置によって、部屋内のさまざまな位置で撮影されたパノラマ画像を記憶します。具体的には、部屋の内部を撮影した部屋内パノラマ画像、および、景色パノラマ画像を記憶します。
仮想画像提供装置によって、物件の部屋内にあると仮定される仮想カメラが映す仮想画像を、上記データ記憶装置のパノラマ画像から生成してユーザ端末のモニタに表示させます。また、ユーザ端末によって操作される仮想カメラの位置および向きに応じて、仮想画像を変えていきます。具体的には、部屋内パノラマ画像、および、景色パノラマ画像を組み合わせて使用します。
移動画像提供装置によって、ユーザ端末によって操作される仮想カメラの移動方向に対応して、その移動方向に沿ってあらかじめ撮影されたパノラマ画像から様々な仮想画像を生成し、ユーザ端末のモニタに順次表示させます。
本発明の物件情報提供サーバにユーザ端末を接続すれば、ユーザ端末の遠隔操作によって、部屋内で仮想カメラを移動させ、部屋内をモニタ越しに内覧者目線で移動しながら見ることができます。
未来予想
本特許出願は、東建コーポレーション社から日本国特許庁へ出願され、早期審査請求されたうえで、1回の拒絶理由通知を受けた後に特許となりました。同社は、賃貸住宅のあっせんなどの事業を行っている会社です。ホームメイトという賃貸物件の検索サイトも運営しています。
ホームメイトのウェブサイトで賃貸物件を実際に検索してみますと、部屋内の写真だけでなく、動画を撮影した物件もあります。しかし、本発明の技術を利用したサービスは、未だ提供されていないようです。
本発明は、競合他社の同様な物件検索サービスよりも優位なサービスを提供するために、将来的に提供される可能性があります。実際に現地へ足を運ばなくても、リアルのような感覚を得られる本発明のようなサービスは、今後増えていくと予想されます。
特許の概要
発明の名称 |
物件情報提供サーバ |
出願番号 |
特願2017-204568 |
公開番号 |
特開2019-079192 |
特許番号 |
特許第6297739号 |
出願日 |
2017.10.23 |
公開日 |
2019.05.23 |
登録日 |
2018.03.02 |
審査請求日 |
2017.10.23 |
出願人 |
東建コーポレーション株式会社 |
発明者 |
左右田 稔 |
国際特許分類 |
G06Q 50/16 |
経過情報 |
・本願は拒絶理由通知を1回受けた後、特許請求の範囲を補正することによって、特許となりました。 |