5月に公開されたAppleの特許出願:ヒンジを備えた電子デバイス

近年、スマートフォン業界では折りたたみデバイスの開発が急速に進んでいます。SamsungやHuaweiなどの主要メーカーは、すでに折りたたみスマートフォンを市場に投入し、その技術を洗練させています。しかし、Appleはまだ折りたたみデバイスを発表しておらず、その開発の遅れが指摘されています。

最近の報道によると、Appleは2025年に20.3インチのハイブリッド折りたたみデバイスを、2026年には折りたたみiPhoneを計画しているとされています(https://9to5mac.com/2024/05/05/foldable-iphone-hybrid-mac-iphone-rumors/)。このような背景から、今回紹介する特許出願は、Appleが折りたたみデバイス技術の開発に本腰を入れていることを示唆しています。

発明者:Scott J Krahn 等
出願日:2023年10月6日
公開日:2024年5月2日
発明の名称: Hinges for Folding Devices (折りたたみデバイス用ヒンジ)

従来技術の課題と解決手段

折りたたみデバイスの分野では、多くの技術的課題が存在しています。以下に示すような課題に対して、解決を図ることが本特許の目的の一つです。

1. ディスプレイの耐久性の問題

折りたたみ可能なディスプレイは、頻繁に曲げ伸ばしされるため、長期間の使用に耐えられないことが多いことが問題でした。特に、曲げ部分での亀裂や劣化が問題となります。

この問題に関しては、本特許出願では、回転軸をヒンジの上部に配置し、ディスプレイへのストレスを軽減する設計が採用されています。これにより、ディスプレイの耐久性が向上します。

2. ヒンジの構造的問題

従来のヒンジは、構造が複雑すぎて、折りたたみ動作が滑らかでない場合があります。また、ヒンジ部分が厚くなることが多く、デバイス全体の厚みを増す原因となります。

本特許出願では、同期ギアプレートと非対称の摩擦クリップを使用して、滑らかな折りたたみ動作を実現しています。また、多段リンク設計により、ヒンジ部分が薄くなり、デバイス全体の厚みを抑えることができるとされています。

3. ヒンジの回転同期の問題

従来のヒンジは、左右の部分の回転が同期していないことがあり、不均一な折りたたみや展開動作が発生します。これにより、デバイスの操作性が低下し、ユーザーエクスペリエンスが悪化します。

この問題に関しては、噛み合った歯を持つ同期ギアプレートを使用して左右のヒンジ部分の回転を同期させ、スムーズで均一な折りたたみ動作を実現するとされています。

4. 摩擦力の制御の問題

折りたたみデバイスのヒンジには、開閉時に適切な摩擦力が必要ですが、従来の技術では摩擦力が一定でないため、操作が滑らかでないことがあります。

この問題点については、非対称の摩擦クリップを使用し、回転方向に応じて異なる摩擦力を提供する設計が採用されます。これにより、折りたたみ時のトルクバランスが保たれ、滑らかな操作が可能となります。

ディスプレイとハウジング

本特許出願では、ディスプレイとハウジングの設計にも細心の注意が払われています。

ディスプレイの種類

ディスプレイは、OLED、液晶ディスプレイ、エレクトロフォレティックディスプレイ、エレクトロウェッティングディスプレイ、プラズマディスプレイ、MEMSディスプレイ、マイクロLEDディスプレイなど、様々なタイプが使用可能です。

柔軟性

ディスプレイは折りたたむことができ、収納時にはコンパクトな形状になります。ディスプレイカバー層はガラスや透明ポリマーで構成され、ディスプレイを保護します。

ヒンジの詳細設計

それでは、本特許のテーマである、ヒンジの詳細設計について、簡単ではありますが説明していきます。

多段リンク

ヒンジは複数のリンクで構成され、それぞれのリンクは一定の回転角度内で動作します。これにより、デバイスがスムーズに折りたたまれたり展開されたりします。

ピボットポイント

各リンクの回転軸は、ヒンジの外部に配置され、ディスプレイの曲げ応力を最小限に抑えます。これにより、デバイスの耐久性が向上します。
なお、回転軸は図2の参照番号42となります。このように、ヒンジの外側に軸があるような設計になっています。

同期ギアプレートと摩擦クリップの詳細

ギアプレートは、回転同期のために相互に噛み合う歯を持ち、左半分と右半分のヒンジの回転を同期させます。これにより、デバイスが均一に折りたたまれたり展開されたりします。

また、摩擦クリップ58(図3参照)は、ヒンジの開閉時に異なる摩擦力を提供し、ディスプレイの折りたたみ時のトルクバランスを保ちます。これにより、デバイスの操作性が向上します。

まとめ

Appleの特許出願(US20240147644A1)は、同社が折りたたみデバイス技術の開発に真剣に取り組んでいることを示しています。2025年には20.3インチのハイブリッド折りたたみデバイス、2026年には折りたたみiPhoneを計画していることからも、Appleがこの分野での競争に本格的に参入する準備を進めていることが伺えます。今後の展開が非常に楽しみです。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

好きなテーマは、#特許 #IT #AIなど新しいもが多めです。