新型コロナウイルス感染症の５類感染症移行されもうすぐ２ヶ月。旅行、スポーツ観戦、自然観察、子供の行事などの日常が急速に戻ってきている。そのお供と言えば、マスクではなく何と言ってもまずはカメラ（スマホ）、その次にくるのが、双眼鏡・望遠鏡というひとも少なからずいるのでは。
この望遠鏡、遠くのものを近くで見ているように拡大して楽しみたいに応えるアイテム。最近はあまりみかけない感じもしないではないが、しかしスポーツ観戦やハイキング、子供の運動会などなどではあらためてその機能、確かに需要はありそうだ。まして「撮れる」機能がついてくれば、「そんなのが欲しかったんだ」とヒットの予感がしないでもないが果たしてどうか。
望遠鏡＋カメラ。ありそうでなかった製品だ。遠くのものを近くで見ているように楽しみたい機能と、それを写真や動画に残したい機能を足し算した複合型商品。実は映像機器、事務機器、半導体などを製造する精密機器メーカーのキャノンが、2020年にパワーショットズームとして開発、「撮れる望遠鏡」としてクラウドファンディングですでに発売していた。
常に変化する新たな需要を拾っていく、また新たな需要を創造していく開発手法としては、機能の「進化型」と「複合化型」とがある。「複合化型」といえば古くはラジカセ。電化製品の開発は複合化の歴史でもあり開発手法の王道でもある。今ではスマホを代表に電子レンジや空気清浄機など多くの製品が何らか複合機能となっている。
一方、デザインとエンジニアリングで電化製品などを開発する最近注目のバルニューダー。同社のトースターを代表格として、また、主にアイデア力、技術力とスピード力で電化製品などのシェア拡大するアイリスオオヤマ。例えば電化製品で注目されるこの二社のヒット場合では主に「進化型」だ。
キャノンの「パワーショットZOOM」。時はコロナ感染拡大が始まった年で最悪のタイミングもあった為なのか。資金もマーケティング力もある、あのキャノンがクラウドファンディングでのスタートだったことが筆者には興味深い。確かに望遠鏡の普及率はあまり高いとは言えない。そんな望遠鏡を複合化によってスポーツ観戦や旅行の楽しみ方を変えられれば、変えるまでいかなくとも新たな楽しみ方を加えられればというチャレンジングな開発だったに違いない。
それともスマホ、いや、それはいまでは複合機能型高性能カメラと言っていいほどで、キャノン代表的主戦場のカメラ市場を奪ってきたスマホへのメーカーの逆襲なのか、そんなことはわからないが、とにかくスタートアップ企業が考えそうな企画が何とも興味深い。
ともかく、ここではそのスペックには触れないがキャノンのオンラインショップでの説明を見る限り、この商品はあくまでも「写真と動画が撮れる望遠鏡」だとしている。つまりは写真が撮れるデジタル単眼鏡といった製品のようだ。
この製品、防振機構があるので使いやすいようだが、センサーサイズが1/3と小さく、開放F値が非常に暗いので低照度での視認性や画質はあまり期待できなさそうだ。しかしながら、秒10コマの連写に対応しており、WiFi/Bluetoothを搭載しているのでスマホと連携して面白い使い方もありそうだ。
そして、肝心な価格は37,950円（キャノンオンラインショップ価格・税込）。価格と価値、一般の生活者がはたしてこの価格を払ってスポーツ観戦や旅行の新しい楽しみ方を手に入れるだろうか。遊び感覚で楽しむ価格と機能ではなさそうだ。かと言ってプロユースにしてはそのスペックに物足りなさも残るのでは。どちらにしてもアイデアが面白いだけに筆者の見方が外れればいいのだが。
なお、キャノンのパワーショットZOOMと思われる特許が確認できたので補足しておく。
【特許番号】 特許第7271253号(P7271253)
【登録日】 令和5年4月28日(2023.4.28)
【発明の名称】 ズームレンズおよびそれを有する撮像装置
【特許権者】 【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【発明者】 【氏名】青木 宏治
【課題】 全系が小型でありながら、高いズーム比を有し、広いズーム範囲にわたり高い光学性能を有するズームレンズを得ること。
ライター
渡部茂夫
SHIGEO WATANABE
マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表
通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。
関連記事
