渋滞フリーな未来の予感?

空飛ぶ自動車

渋滞フリーな未来の予感?

渋滞フリーな未来の予感?

SF映画の金字塔「フィフス・エレメント」に登場する近未来的空飛ぶ自動車。
SF映画の金字塔「フィフス・エレメント」に登場する近未来的空飛ぶ自動車。渋滞を気にする事なく、好きな時に、好きな場所に直接行けるという夢のような話です。しかし現在まで、交通法と技術の関係で実現は難航していました。具体的には、交通法で義務付けられているリアバンパーを装備した状態では、飛んでいる間の空気の圧力や摩擦力が高くなり、安全性が確保できていませんでした。今回の発明では、道路使用時に本体を支える車輪と、本体の後部の水平な翼、そして飛行時に展開可能な翼との装備方法を工夫しました。この工夫によって、道路で走行時に必要なリアバンパー機能をクリアする最小サイズを実現しつつ、飛行中も空気の圧力と摩擦を減少させる事に成功しました。これによって空飛ぶ車がより現実的なものとなり、道路状況を気にしないで目的地に行ける日も近いかもしれません。

■従来の課題

空飛ぶ自動車を道路使用する場合には、公道での使用に関する規制要件を遵守するために、リアバンパーを装備する必要があります。

しかし、リアバンパーを装備すると、車両を航空使用する場合に、抗力の増大や空力性能の低下をもたらすおそれがあるため、リアバンパーの装備と飛行中の抗力減少とを調和させる必要がありました

■本発明の効果

本発明にかかる空飛ぶ自動車では、道路使用のためのリアバンパーとして一定の最小の物理的寸法および性能の必要性と、飛行中の抗力の減少に対する要望とを調和させることができます。

■本発明のポイント

本発明は、道路での使用のために構成されたときに本体を支持するための車輪を有する本体と、本体と接続され、航空用途のために展開可能な翼と、少なくとも1つの水平尾翼を含む本体の後部にある尾部とを含む、航空または道路での使用のために構成可能な車両2(空飛ぶ自動車)に関するものです。そして、ここでは、少なくとも1つの水平尾翼が、最後端部の平面が実質的に水平である第1の位置と、最後端部の平面が実質的に垂直である第2の位置との間で、車両の縦軸を横切る軸の周りを枢動可能な平面の最後端部を含んでいる点が発明の主要なポイントとなっています。

ここで、尾翼は、最後端部と固定水平部とを含むことができ、第1の位置では、最後端部は実質的に同じ水平面内にあるように固定水平部に隣接して配置され、第2の位置では、固定水平部から後方に配置されています。

また、最後端部が枢動する軸は、水平尾翼の平面から離間することができます。

また、車両は、少なくとも1つの垂直フィンと、少なくとも1つのフィン上に画定される横軸上の枢動点と、最後端部を少なくとも1つのフィン上の枢動点に接続するヒンジとをさらに備えています。車両は、一対の垂直フィンと、フィンの間に延在する水平尾翼と、最後端部の各端部に設けられ、それぞれのフィンの枢動点に接続されたヒンジとを備えることができます。この場合、一対の垂直フィンそれぞれの下方領域に車輪を配置することができます。車両はまた、中央フィンと、最後端部を中央フィンの枢動点に接続するヒンジとを備えることができます。

また、プロペラは、尾部に取り付けることができます。この場合、第2の位置にあるとき、最後端部の実質的に垂直な面はプロペラの後方にあり得ます。水平尾翼は、プロペラの取り付け点の下に配置することができます。

また、車両が複葉機尾翼を備える場合には、少なくとも1つの水平尾翼が下部尾翼であり得ます。

また、車両が道路で使用するように構成されているとき(すなわち、第2の位置にあるとき)、最後端部は、リアバンパーとして機能するように構成され得ます。

■全体構成

図1及び図2には、飛行形態(図1)及び道路利用形態(図2)で、コンバーチブル車両(空飛ぶ自動車)を含む航空機の全体構成が示されています。空飛ぶ自動車は、乗員室12を提供し、モータ(図示せず)と、モータから本体構造10の後部14まで延在するプロペラシャフト(図示せず)とを収容する本体構造10を備え、プロペラは後述のように取り付けられています。(図示しない補助翼を介して)リフトおよび制御を提供するための翼16は、乗員室12のすぐ後ろの本体10の頂部に取り付けられています。翼16は、飛行使用のための伸長位置(図1)と道路使用のための折り畳み位置(図2)との間で移動することができます。折り畳み位置では、翼は本体10の頂部に沿って位置し、翼の長軸は本体10の長軸と実質的に平行にあります。

【図1】

【図2】

■細部構成

次に、図3及び図4を用いて空飛ぶ自動車の細部構成を説明します。ここでは、尾部構造18が本体14の後部に配置されています。

前輪26は本体構造10に取り付けられています。前輪は操舵可能で駆動されます。加えて、前輪26は、飛行中の抗力を減少させるためにそれらが本体に接近して配置される後退位置(図1)と、牽引力を向上させるために配置される開位置(図2)との間で移動でき、道路での使用のために制御されます。

ここで、尾部構造18は、複葉機尾翼18'、18''を含み、上部尾翼18'は本体14の後部に接続されています。昇降舵28は上面18'のみに設けられています。一対のフィン30が設けられ、それぞれが方向舵32と、フィン30の間に延在する尾翼18'、18''とを有しています。各フィン30の下部には後輪34が取り付けられており、各フィン30のトレーニングエッジには後輪ライトユニット35が設けられています。中央フィン36が、後部本体部14から下部尾翼18''まで下方に延在しています。プロペラ38は、上部尾翼18'のトレーリングエッジのすぐ後ろの後部本体14に取り付けられています。

下部尾翼18''は、2つの部分構造を有し、固定水平部40及び可動最後端部42を含んでいます。図3に示すように、最後端部42は、固定部40に隣接して配置され、実質的に同じ水平面内にあります。この構成では、下部尾翼18''は比較的低い抗力を示し、空力的ピッチ安定性を提供するように機能することができます。

図4に示すように、最後端部42は、下部尾翼18''の平面の上方でフィン32、36にヒンジで取り付けられたヒンジ支持アーム44によってフィン32、36上の枢動点に接続されています。アクチュエータ46が中央フィン36と関連する支持アーム44との間に接続されています。

アクチュエータ46の動作は、図4に示すように、それが実質的に垂直な平面内に位置するまで、最後端部42を、枢動点を中心にして枢動させます。最後端部の下面48は後方に向いており、車両が道路用に構成されているときにはバンパーとして機能することができます。アーム44の長さは、下面がプロペラの背後に位置するように、すなわち車両の最後尾の範囲に位置するような、かつ道路使用規制要件を満たすのに適した高さになるような長さです。このプロセスを逆にして、車両を飛行形態に戻すことができます。

【図3】

【図4】

■展望、結語

以上のように、本発明にかかる空飛ぶ自動車では、道路使用のためのリアバンパーとして一定の最小の物理的寸法および性能の必要性と、飛行中の抗力の減少に対する要望とを調和させることができるようになります。これにより、空飛ぶ自動車がより現実的なものになると予想されます。

また、空飛ぶ自動車に関する類似特許出願として、特開2019-14310号公報や特開2019-14311号公報(いずれも出願人はトヨタ自動車)などもあります。これらの特許出願は、本発明と同様、翼の折り畳み構造が発明のポイントとなっており、空飛ぶ自動車の実現にあたり、翼の折り畳み構造が非常に重要であることが分かります。

■概要

出願国:日本(欧州) 発明の名称:空飛ぶ車のための構成可能な尾部
出願番号:特願2019-542799号
出願日:平成29年10月23日(平成28年10月25日)
公開日:令和1年12月19日(平成30年5月3日)
出願人:エアロモバイルアールアンドディーエスアールオー
経過情報:平成29年10月23日に特許出願(国内移行)されていますが、未審査の状況です。
その他情報:欧州出願を優先権基礎として国際出願されています。
IPC:B60F 5/02、B64C 37/00

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。