中空プレッツェルによる、チョコの新しい魅力
ロッテの「トッポ」は、1994年に発売された、プレッツェル生地にチョコレートを充填したスティック型の菓子です。トッポが発売される前のスティック型チョコレート菓子は主にチョコレートを外側にかけるスタイルでしたが、トッポはこの概念を覆し、穴あきプレッツェルの中にチョコレートを入れるという革新的な構造・製法で人気を集めました。この製法により、手にチョコレートが付きにくく、持ちやすく、チョコレートが溶けても食べられるという利点がありました。今回はこの革新的な製造法について、詳説していきます。
発明の背景
従来のプレッツェルは、パン生地を細い帯状に切り、リング状、8の字形、B字形などに成型して焼き上げたものであり、これらは中空状ではありませんでした。また、イーストを使わない非発酵タイプの生地を使用したスティック状のプレッツェルも登場していましたが、これらにも中空状のものは存在しませんでした。
さらに、従来のスティック型プレッツェルにおいては、風味や感触の変化を避けられず、外側にチョコレートなどのコーティング材をつけたものもありましたが、そのような外側のチョコレートが、使用時に手についたり、夏場などの高温環境下でベタつくなどの問題がありました。
どんな発明?
発明の目的
本発明は、従来のスティック型プレッツェルの欠点を克服し、風味や感触の変化を生じることなく、また呈味料が手に付かない、ベタつかない製品を開発することを目指して開発されたものです。一般的なスティック型プレッツェルの生地は硬く、中空筒状のプレッツェルの製造には適していませんでした。
この問題を解決するため、糖質や油脂を加えた生地を使用し、さらに澱粉を使用することで、外径と内径の差の小さいリング状エキストノズルから押し出すことが可能となり、焼成生地の外径と内径差の小さいプレッツェルを製造することができるようになりました
発明の詳細
従来知られていた一般的なスティック型プレッツェルの配合は、穀粉100部に対して、糖質5部以下、油脂1〜4部以下の割合で使用し、澱粉は使用しません。このような配合の生地の場合、中空筒状のプレッツェルを製造することは不可能です。即ち、一般的なスティック型プレッツェルの生地は、かなり硬いことが知られていました。
このような生地を、本発明の製造方法に係るリング状エキストノズルから押出し成型した場合、生地が硬いために安定した押出し成型を行うことが困難であり、仮に押出すことができたとしてもエキストルーダー内で生地への負荷がかかるため、生地がダメージを受けてしまいます。一方、押出し適性を良くするために、加水量を増加して生地を柔らかくすれば、押出し成型後に生地がダレて変形してしまい、中空筒状の形で焼成することはできません。
押出し成型・焼成法により中空筒状のプレッツェルを製造するためには、生地が、押出し成型時には適度に柔らかく、延びがあり且つ繋がりの良いこと、そして成型後焼成したものが中空筒状を保つためには、保型性がありそして硬いことが条件となります。これらの要素は相反する部分があり、従来の生地では達成できませんでした。
この問題を解決するために種々研究の結果、穀粉に一定割合で糖質および油脂を加えた生地を用いれば所望の中空筒状のプレッツェルを製造することができること、そしてさらに、糖質および油脂の量を調整した上に、澱粉を使用した生地を用いれば、外径と内径差の小さいリング状エキストノズルから押し出すことが可能であり、焼成生地の外径と内径差の小さいプレッツェルを製造することができることを見出したのです。トッポの生地の特徴を以下にまとめます。
トッポの生地の特徴
- 主成分の配合:穀粉100重量部に対して、糖類5〜30重量部、油脂10〜30重量部、および澱粉20〜50重量部を含む。特に糖類は10〜20重量部、油脂は15〜25重量部、澱粉は30〜45重量部が望ましい。
 - 中空筒状の構造:この特殊な配合により、リング状ノズルから押出し成型し、中空筒状のプレッツェルを作ることが可能となる。外径が15mm以下、特に10mm以下で、内径が外径の40%以上の中空筒状構造を有する。
 - アルカリ溶液処理:焼成する前に生地をアルカリ溶液で処理する方法も含まれる。
 - 穀粉の種類:小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ粉、コーンフラワーなどが使用され、小麦粉は生地の硬さやグルテン強度を考慮して薄力粉50%以下で使用するのが望ましい。
 - 糖類と油脂の種類:砂糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、異性化糖などの糖類。バター、ショートニング、マーガリン、液状油、硬化油などの油脂。
 - 澱粉の種類:コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、または加工澱粉類。
 - 副原料:乳製品、卵、食塩、香料、化学調味料、膨剤などを任意的に使用可能。
 
この特殊な配合と製造方法により、従来のプレッツェルには見られない中空筒状の構造を実現しており、これがトッポのユニークな特性を生み出しています。
トッポの製造プロセス
- 生地の準備:適量の水を加えて、穀粉、糖類、油脂、澱粉などの原料を混合し、生地を作成する。
 - 押出し成型:生地をリング状ノズルを使用して連続的に中空状に押出し成型する。この中空筒状のプレッツェル生地は、内径が外径の40%以上に設定される。また、外径は15mm以下、望ましくは10mm以下が適切。
 - アルカリ液処理:必要に応じて、成型された生地を連続的にアルカリ液に通して処理する。これは食感をクリスピーにし、焼成工程でのベルトなどへの付着を減少させる。使用されるアルカリ液には、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム水溶液などが含まれる。
 - 焼成:成型された生地をオーブンに入れて焼成し、中空筒状の焼成生地を作成する。
 - 呈味料の充填:焼成された生地を所望の長さに切断し、中空部にクリーム、チョコレート等の呈味料を充填する。呈味料は、焼成生地の上方の開口端から粘性に調製されたものを注入する。
 - 呈味料の処理:クリームやジャムなどの粘性のまま賞味する呈味料を採用した場合はそのままで、他の呈味料は放置して冷却または乾燥固化させる。これにより、呈味料が焼成生地の両開口端から内方に位置し、独特の形状の複合菓子が完成する。
 
この製造方法により、トッポは下図に示すような独特の中空筒状構造と、呈味料を充填した特徴的な形状を持つプレッツェルとして製造されます。
【図】
ここがポイント!
この特許は、従来のスティック型プレッツェルの問題点を克服し、中空筒状のプレッツェルを製造する技術を提供することを目的としています。具体的には、糖質と油脂を適切な割合で穀粉に加え、澱粉を使用することで、中空筒状のプレッツェルを実現しました。これにより、風味や感触の変化が少なく、手に付かずベタつかない新しいタイプのプレッツェルが実現されました。
特許の概要
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 発明の名称  | 
プレッツェルおよびその製造方法 | 
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 出願番号  | 
特願平6−65143 | 
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 公開番号  | 
特開平7−274805 | 
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 特許番号  | 
特許第2894946号 | 
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 出願日  | 
平成6年4月1日 | 
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 公開日  | 
平成7年10月24日 | 
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 登録日  | 
平成11年3月5日 | 
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 審査請求日  | 
平成8年6月28日 | 
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 出願人  | 
株式会社ロッテ | 
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 発明者  | 
竹森 俊雄 他 | 
| 国際特許分類 | 
 A21D 2/10  | 
| 経過情報 | 
 期間満了により抹消されている(存続期間満了日2014/4/1)  |