2秒で設営完了!?画期的折り畳み式テント


2秒で設営完了!?画期的折り畳み式テント

2秒で設営完了!?画期的折り畳み式テント

初夏から秋にかけて、日本ではキャンプ場や登山などでテント泊を楽しむアウトドア愛好家が大勢いらっしゃいます。

キャンプといえば、なによりテント泊が代名詞ですよね。テントの中で仲間や恋人、家族で過ごす時間は、貴重な思い出づくりに最高です。

でも、テントって設営に時間がかかったり、かさばって重たい、金属の支柱を複雑に組み合わせるのが難しい、といった理由から、意外とテントを難なく設営及び収納できる方って少ないのではないでしょうか(逆に、テントを早く設営できる人をみると、ちょっと憧れちゃいますよね)。

このような背景から、テントを素早く展開したり、収納したりすることを目指した製品は、これまで数多く開発されてきました。

しかしながら、このようなテントの欠点は、多くの場合、内部に支柱を設けないことにも起因して、内部容積が小さくなってしまうことでした。

このため、ユーザーが横になったときに、十分な床面積が確保できないという問題点がありました。

さらには、テントの骨組みであるロッドを複雑に組み合わせる必要があり、設営に時間がかかるという問題もありました。

そこで、フランスのアウトドアスポーツメーカーDECATHLONは、2つの傘(アンブレラ)をつなげたような構造のテントを開発し、ちょうど折りたたんだ2つの傘を順番に開くような動作機構によって、わずか数秒で設営が完了するテントを発明しました。

この発明は、2018年10月17日にフランス特許庁に出願され、その後フランスで特許権を取得(特許番号:FR.3087466.B1)、そしてフランスでの出願を優先権基礎とした出願を、日本を含む10カ国に行いました(日本での公開番号:特開2020-76301、公開日:2020年5月21日)。

この出願に係るテントは、Quechua(ケシュア)というブランドから「2 SECONDS EASY」という商品名で既に販売されており、日本国内でも入手が可能です。

商品名の「2秒」というのはちょっと大げさかな、とも思えますが、従来知られているテントよりは大幅に短時間で簡単に設営できそうです。

また、このテントは畳んだ際には2つの傘を束ねたような形となり、円筒形状の格納袋に格納し、簡単に持ち運べるようになります。

このような画期的構造のテントを用いて、設営に時間をとられることなく、キャンプをさらに楽しめるようになるといいですね。素早く設営、撤収すれば、キャンプ慣れしたカッコいい大人にみえるかも・・・?

従来の折り畳み式テント

従来、ハイカーやキャンパーにより折り畳み式のテントが一般的に用いられている。折り畳み式テントは、スムーズに展開または折り畳むことにより、迅速な設置または格納を可能にする。

従来の折り畳み式テントの課題

しかしこれまでの折り畳み式テントは、テントの内部容積が小さいため、ユーザに必要な快適性が提供できないなどの欠点があった。

特に、テント内で横になったユーザの頭部と足がテントのキャンバスに接触する可能性があることはユーザにとって不快であり、心地よい睡眠を提供できないなどの課題があった。

ユーザの快適性が改善される

本発明は、上述した課題を克服する折り畳み式テントを提供する。

本発明のテントは二つのアンブレラ構造を有し、格納位置に対応する折り畳み位置と、使用位置に対応する設置位置をとることが可能な折り畳み式テントに関するものである。

テントキャンバスの内容積が増加することで、折り畳み式テント内で横たわるユーザの頭部と足がテントキャンバスに触れるのを防ぐことができるため、ユーザの快適性が改善される。

加えて本発明の折り畳み式テントは格納が容易であり、設置安定性に優れている。

本発明のポイントは以下より構成される折り畳み式テントである。

・テントキャンバスと、支柱無しの第1アンブレラ構造であって、第1上方ハブと、第1下方ハブと、前記第1上方ハブにヒンジ式に接続されるとともに前記テントキャンバスと協働する複数のリブと、複数のカウンタリブとを含み、前記第1アンブレラ構造の各カウンタリブは、前記第1アンブレラ構造の前記リブの一つにヒンジ式に接続された第1端部と、前記第1下方ハブにヒンジ式に接続された第2端部を有し、前記第1アンブレラ構造の前記リブと前記カウンタリブとは、前記第1下方ハブが前記第1上方ハブに対して第1移動方向(Y1)に沿って移動可能となるように構成され、前記第1アンブレラ構造は、開放位置と閉鎖位置をとることができる、第1アンブレラ構造と、
 支柱無しの第2アンブレラ構造であって、第2上方ハブと、第2下方ハブと、前記第2上方ハブにヒンジ式に接続されるとともに前記テントキャンバスと協働する複数のリブと、複数のカウンタリブとを含み、前記第2アンブレラ構造の各カウンタリブは、前記第2アンブレラ構造の前記リブの一つにヒンジ式に接続された第1端部と、前記第2下方ハブにヒンジ式に接続された第2端部を有し、前記第2アンブレラ構造の前記リブと前記カウンタリブは、前記第2下方ハブが前記第2 上方ハブに対して第2移動方向(Y2)に沿って移動可能となるように構成され、前記第2アンブレラ構造は、開放位置と閉鎖位置とをとることができる、第2アンブレラ構造と、
 前記第1アンブレラ構造の第1リブの遠端部と、前記第2アンブレラ構造の第1リブの遠端部をヒンジ式に接続するように構成された少なくとも一つの第1接続部を備える屋根を有する折り畳み式テントであって、
 前記折り畳み式テントは、前記第1アンブレラ構造及び第2アンブレラ構造が前記開放位置にある設置位置と、前記第1アンブレラ構造及び第2アンブレラ構造が前記閉鎖位置にある折り畳み位置をとることができる、折り畳み式テント。

本発明の更なるポイントとして、以下が挙げられる。

・折り畳み式テントが設置位置にある時、第2移動方向(Y2)は第1移動方向(Y1)に対して傾斜している。
・第1アンブレラ構造と第2アンブレラ構造は、折り畳み式テントが設置位置にあって地面上に載置されている時、第1接続部を通過する垂直平面の両側に広がる。
・第1接続部は、第1アンブレラ構造及び第2アンブレラ構造の第1リブの遠端部を受け入れるように構成される第1シースを有する。

折り畳み位置にある本発明の折り畳み式テントを図1に示す。

【図1】本発明の折り畳み式テント

折り畳み式テント全体

本発明の折り畳み式テントは、テントキャンバスと、第1アンブレラ構造16と、第2アンブレラ構造16'からなる屋根12を有する。第1アンブレラ構造16は、第1上方ハブ18と、第1下方ハブ20と、前記第1上方ハブ18にヒンジ接続された複数のリブ(第1リブ21と、第2リブ22と、第3リブ23と、第4リブ24と、第5リブ25)を有する。

第1アンブレラ構造16

さらに第1アンブレラ構造16は、第1カウンタリブ26と、第2カウンタリブ27と、第3カウンタリブ28と、第4カウンタリブ29と、第5カウンタリブ30とを有する。

これらカウンタリブの各々は、第1端部26a、27a、28a、29a、30aと、当該第1端部の反対側に第2端部26b、27b、28b、29b、30bを有する。

第1カウンタリブ26と、第2カウンタリブ27と、第3カウンタリブ28と、第4カウンタリブ29と、第5カウンタリブ30の第1端部は、それぞれ接続部32によって、前記第1リブ21と、第2リブ22と、第3リブ23と、第4リブ24と、第5リブ25にそれぞれヒンジ接続されている。

また本発明の折り畳み式テントは、第1アンブレラ構造16と同様の構造を有する第2アンブレラ構造16'を有する。

第2アンブレラ構造を開放位置にする操作方法は、第1アンブレラ構造を開放位置にする方法に類似する。

これらのアンブレラ構造によって、前記リブの各々を同時にかつ簡単に開放することが可能となる。最小限の労力でスピーディーな設置を可能とする。

図2に設置位置にある展開された折り畳み式テントの側面図を示す。

【図2】設置位置にある展開された折り畳み式テントの側面図

テントキャンバス14

本発明のテントキャンバス14は、第1及び第2アンブレラ構造16、16'の第3リブ23、23'と第4リブ24、24'の遠端部23a、23'a、24a、24'aと作動する周部エッジ14aを有している。

さらに第1及び第2アンブレラ構造16、16'の第5リブ25、25'の遠端部25a、25'aは、それぞれテントキャンバスの周部エッジ14aとは別のテントキャンバス14の協働部15,15'と協働する。また第5リブは、テントキャンバスから離間して内部容量を増大させる。テントキャンバス14には、縦三角パネル54、54'が形成されている。

第5リブ25,25'は、テントキャンバスがテント内に横たわるユーザの頭部または足に接触することを防止し、これによりユーザの快適性が改善される。

テントの内部からみる両アンブレラ構造

テントの内部から見ると、両アンブレラ構造は、凹状プロファイルを有しており、テントの内容積を増大させ、その結果ユーザの快適性が改善される。

前記折り畳み式テントは、好ましくは、少なくとも3つまたは4つのリブを有し、それらの遠端部は、テントが設置された時に地面上に載置されるように構成され、これによりテントは十分に安定する。

図3ないし図5に、折り畳み式テントの設置位置への配置状態を示す。

【図3】第1アンブレラ構造が中間位置にある状態の折り畳み式テント

【図4】第1アンブレラ構造が開放位置にある状態の折り畳み式テント

【図5】設置位置にある折り畳み式テント

(第1及び第2アンブレラ構造16、16'

第1及び第2アンブレラ構造16、16'は、順次、閉鎖位置から開放位置へ移動される。

ユーザは、折り畳み位置に置かれた折り畳み式テントの横に立ち、第1グリップリング48を使用して、第1コード46を自分の方に向けて引っ張る。

この引っ張りによって、第1下方ハブ20を第1移動方向Y1に沿って移動させ、それを、図3に図示されているように、第1上方ハブ18に近づける。

カウンタリブ

第1アンブレラ構造16の前記カウンタリブ26、27、28、29、30は、第1下方ハブ20の移動を導く。

第1下方ハブ20の平行移動に対し、カウンタリブは、第1アンブレラ構造16のリブ21、22、23、24、25の第1リブ部34に対して力を加え、それらを互いから離間移動させようとする。

第1リブ部34と、第2リブ部36に接続するヒンジ38は、互いに離間移動し、第1アンブレラ構造16の外側へ揺動する。

図3ないし図5に示されているように、カウンタリブは共に、リブとカウンタリブとの間の接続部32を通過するとともに、第1移動方向Y1に対して垂直な平面Pを交差する。

カウンタリブによるこの平面Pの交差は、ハードポイントの交差とも称される。第1下方ハブ20は、ユーザによって操作される力無しでは平面Pを交差することができないので、第1下方ハブ20は、安定した位置で第1上方ハブ18と接触する。

第1下方ハブ20の長手部分40は、第1上方ハブ18のオリフィス44を通過し、第1下方ハブ20の支持部42は折り畳み式テントから外部に突出する。

図4及び図5に示されているように、第2アンブレラ構造16'が開放位置に置かれたとき、第2アンブレラ構造の第1リブ21'と第2リブ22'が、第1アンブレラ構造16の第1リブ21と第2リブ22に対し上向きの押し力を加える。

この力は、図5に示されているように、第1アンブレラ構造を、折り畳み式テントの自動成形を可能にする傾斜にするべく、第1アンブレラ構造を更に揺動しようとする。

さらに、第1アンブレラ構造16が第2アンブレラ構造16'を支持し、反対に第2アンブレラ構造16'が第1アンブレラ構造16を支持する。その後、折り畳み式テントは展開される。

ドーム形状に維持

折り畳み式テントの設置位置において、テントキャンバス14は内部容積Vを規定する。第1アンブレラ構造の接続部を通過する平面Pは、地面に対しおよそ45度の角度で傾斜している。

第1及び第2移動方向Y1,Y2が地面に対しておよそ45度の角度で傾斜している。

それらは、互いに対して、およそ90度の角度αでさらに傾斜している。これにより、折り畳み式テントは、キャンパーを格納可能なドーム形状に維持する。

本発明の折り畳み式テントによれば、最小限の力でスピーディーにテント設置を行うことができる。

また、テントキャンバスの内容積が増大することで、折り畳み式テント内で横たわるユーザの頭部と足がテントキャンバスに触れるのを防止することができ、ユーザの快適性が改善される。

発明の名称:二つのアンブレラ構造を備えた折り畳み式テント
出願国:日本
出願番号:特願2019-189736
公開番号:特開2020-76301
特許番号:特許第6722516号
出願日:2019年10月16日
公開日:2020年5月21日
出願人:デカトロン
経過情報:出願審査中
その他情報:なし
IPC:なし

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。


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