全固体電池の技術で日本がリード、特許申請のトレンドから明らかに


全固体電池の日本の強み:トップ20企業中14社が日本

全固体電池は、液体ではなく固体の物質を用いて電気を貯める次世代のバッテリーです。この技術は、今のリチウムイオン電池に比べて、より多くのエネルギーを安全に蓄えられるため、特に電気自動車の分野での使用が期待されています。国際的に特許を申請する「国際展開発明件数」で、日本は全体の約48.6%を占め、他国よりも大きくリードしています。特にパナソニックとトヨタ自動車など、トップ20の企業中14社が日本企業です。

この調査は全固体電池の重要な部分である正極や負極、そしてセパレーター層に使われる固体電解質に関連する技術や材料、製造技術にも焦点を当てています。特に、電気自動車向けの硫化物系電解質が注目されていますが、この分野では中国を含む多くの国が積極的に特許を申請しているため、日本は引き続き研究開発を進める必要があります。

量子計算機の技術動向:富士通やNECが牽引

量子コンピュータは、量子力学の原理を用いて従来のコンピュータよりも高速な計算が可能なため、機械学習やシミュレーションなどの分野での応用が期待されています。米国が国際展開発明件数で全体の約50.5%を占めて先行していますが、日本からの出願も富士通やNECを中心に増加しています。

量子コンピュータの研究は多様な方式で進められており、大規模集積化、コヒーレンス時間の向上、量子エラー訂正などが主な研究テーマです。まだどの方式が最も効果的かは確定していないため、日本を含む各国が技術開発に取り組む必要があります。

ZEHとZEBの動向:日本企業が活躍

ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)は、年間のエネルギー消費をゼロにすることを目指した住宅や建物です。この分野では欧州が国際展開発明件数の約48.5%を占めていますが、日本企業も6社がトップ20にランクインしています。

太陽光発電モジュールの支持構造や太陽光電池一体型建材の技術開発においても、日本は特許申請を積極的に行っています。特に太陽光一体型建材は、ZEH普及の追い風を受けて市場拡大が見込まれ、日本企業による巻き返しが期待されます。

ドローンの展開:農業・物流・点検で日本の存在感

ドローン技術の分析では、中国が主導しており、2017年から2021年の間に1042件の特許が申請されています。しかし、日本も農業用ドローンの開発・製造を手がける企業が上位に入るなど、農林水産業や物流搬送、点検などの分野での特許申請が増えています。

ヘルスケアインフォマティクス:日本の医用画像技術が際立つ

ヘルスケアインフォマティクスは、医療情報を携帯機器などを通じて自由にやりとりできる技術です。米国がこの分野の特許申請でリードしていますが、日本も医用画像技術で強みを発揮しており、特に放射線診断機器やファイバースコープなどでの出願が多く見られます。


Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る