アスタミューゼ、AI・VR・脳科学がひらく流通と買物の未来~リテールテックの特許分析レポートを公表


アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区 代表:永井歩)は、リテールテックに関する技術領域において、弊社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめたことを、24年2月1日プレスリリースで公表した。

リテールテック(Retail Tech)とは、小売業界で使われる新しい技術のことでで、eコマース(電子商取引・電子決済)、自動化、AI、データ分析などが含まれる。最近の特許分析によると、リテールテックの潮流は、店舗の無人化、ウェアラブル端末を使用したショッピング体験の個人化、サプライチェーンの効率的な管理、マーケティングの新しい戦略などに焦点が当てられている。

本レポートでは、リテールテックに関する特許の分析を行い、リテールテック産業全体の推移と、関連技術分野別の成長性、およびリテールテックを代表する企業の保有する注目の特許事例について解説をしている。

そのなかで、いくつか特徴的な特許が紹介されている。まずAmazonは、物流効率化に関する特許「集荷場所」 (US9830572B2) を保有している。これは、出荷前に物品を包装することなく、配送業者によるピックアップを可能にする方法の提案だ。

また、同社は「コンピュータを使った売り手のパフォーマンス分析」(US8510178B2)や「ユーザープロファイルとジオロケーションによる効率的なトランザクション」(US8135624B1)といった店舗効率化に関する特許、さらに、無人店舗におけるオンデマンドビデオストリーミングへの展開を可能にする特許「インタラクティブなショッピングインターフェースのためのブロードキャスターツール」(US9883249B2)を保有している。

Alphabetは、衣類やアパレルをリコメンドする特許「検出されたウェブブラウザの入力とコンテンツタグの解析に基づく衣服や衣類のフォトリアリスティックレコメンデーション」(US10580057B2)がある。

eBayは「ウェアラブルセンサーに基づく推奨のためのシステム、方法、およびコンピュータ可読媒体」(US10956956B2)で、ユーザの状態に基づいて文脈的な推奨を提供するための装置および方法を提案している。

また、近年増えているブロックチェーン関連の特許として、NIKEは「ブロックチェーンで保護された小売商品のための暗号デジタル資産をプロビジョニングするためのシステム及び方法」(US11295318B2)、Accenture は「ブロックチェーン分散データベースを介して商品サプライヤを自律的に選択するための装置、方法およびシステム」(US11062305B2)、salesforceは「分散型台帳技術(DLT)を使用してブロックチェーン上で取引されるデジタルツインの真正性証明を実装するためのシステム、方法、および装置」(US11488176B2)、IBMは「ブロックチェーン上でスマートコントラクトの実行階層を強制する方法及び装置」(US11663609B2)を保有している。

VR・AR・MR(Mixed Reality:複合現実)関連の特許も増えている。SAPは「ネットワーク化されたモバイルデバイスを使用した拡張現実ショッピング」(US9449343B2)、ベルシステム24は「複合現実感技術を用いた顧客支援装置及びウェアラブル情報処理端末」(JP6823688B2)、eBayは「オンラインマーケットプレイスにおけるデジタルアバター」(US10529009B2)、Microsoftは「アバターベースの仮想試着室」(US9646340B2)や「感情的文脈を持つコンテンツに広告を提示する方法と装置」( US9426538B2)等が注目の特許となっている。

AIや機械学習を用いた特許も増えてきた。Accenture は、顧客関係管理(CRM)を自動化する特許「セマンティック人工知能エージェント」(US10951763B2)を保有している。Price Technologies は「マルチモーダルデータを用いたディープラーニングモデルに基づく商品マッチングのためのシステムおよび方法」(US10949907B1)を提案している。Capital One Financial は、機械学習を用いた「顧客との自動化された自然言語対話を提供するためのシステムおよび方法」(US11004440B2)を保有している。

脳科学や認知科学を利用した特許も見られる。Nanjing University(南京大学)は「脳波に基づいて感情を特定するショッピングシステム」(CN108073284B )や「脳とコンピュータの相互作用に基づくショッピング意思決定方法」(CN108932511A)など、買い物における心理を対象とした技術の特許を保有している。

最後に、このように、リテールテックは、さまざまな最新技術や研究を取り入れて進化しているが、今後は生成AIや大規模言語モデル、さらには脳科学を活用した特許が増えることが予想されている。店舗の無人化や自動化が広まりつつある今、リテールテックは、小売・流通業界だけにとどまらず、買い物の未来、さらには、生活の未来を切り拓いていく推進力になることが期待されている。


Latest Posts 新着記事

DXYZ、集合住宅向け顔認証システムで新特許──「FreeiD」が描く次世代ID戦略

近年、顔認証技術をはじめとする生体認証技術の進化は目覚ましく、私たちの生活に急速に浸透しています。特に、住宅分野においては、入退室管理の安全性と利便性の向上に大きく寄与し、マンションや集合住宅のスマート化が加速しています。その流れの中で、DXYZが展開する顔認証IDプラットフォーム「FreeiD」が新たにマンションサービス向けの特許を取得したニュースは、今後の住環境の変革を象徴する重要な出来事と言...

“走らずして勝つ”華為の自動運転戦略 小米の知財布陣が追う

自動運転技術を巡る開発競争が、いま中国を中心に急加速している。特に注目されるのが、通信大手・華為技術(Huawei)とスマートフォンメーカー・小米(Xiaomi)による知的財産(IP)分野での攻防である。中国最大のNEV(新エネルギー車)市場において、彼らは「EV=車」の枠を超えた、テクノロジー中心の覇権争いを繰り広げている。 とりわけ、華為はもはや「通信企業」の枠を超えた存在であり、自動運転にお...

住宅の“健康診断”が見える時代に──LIFULLの新ツールが特許を取得

不動産業界の「透明性」革命 不動産業界は、長らく「情報の非対称性」が問題視されてきた分野だ。物件の価値、状態、修繕履歴など、重要な情報が十分に共有されず、購入者や借主が不利益を被るケースも少なくない。とりわけ中古住宅市場では、築年数のみに頼った価格設定や、目に見えない劣化のリスクが購入判断を曇らせてきた。 こうした中、株式会社LIFULLが提供する不動産情報サービス「LIFULL HOMER...

物流の信頼は“証明”できる時代へ:NONENTROPY JAPAN、DID活用技術で特許取得

かつて情報は中央に集められ、誰かの信頼に依存して管理されていた。しかし今、Web3.0の到来によって「信頼」の形が根本から変わりつつある。その変化は、私たちの生活に密接に関わる“物流”の分野にも及び始めている。2025年、NONENTROPY JAPAN株式会社は、分散型ID(DID)技術を活用した情報処理システムに関して特許を取得し、物流における信頼構築の新たな基盤を提示した。これは単なる技術革...

動物の“本音”がわかる時代へ──バイドゥの鳴き声翻訳AIがすごい

中国IT大手バイドゥ、動物の「声」を理解するAI開発へ 中国のIT巨人、バイドゥ(Baidu)がまたしても世界の注目を集めている。今回は、検索エンジンや自動運転ではない。彼らが新たに手を出したのは、「動物の鳴き声を翻訳するAI技術」である。この分野における特許取得を目指していることが明らかになったのだ。 動物の鳴き声を解析し、それを人間の言語に「翻訳」するという、まるでSF小説のような構想。これは...

ドローンと花火が奏でる光の交響曲――特許取得が示す日本発・演出技術の進化

2025年、日本のエンターテインメント技術に新たな金字塔が打ち立てられた。ドローンショー・ジャパン株式会社(本社:石川県小松市)が、ドローン・花火・音楽の三位一体による演出システムについて特許を取得したという発表は、単なる技術の進歩にとどまらず、現代の「空間芸術」が新しい段階へと突入したことを示している。 この特許の中核にあるのは、空を舞台にした総合演出だ。無数のLEDドローンがプログラムされた軌...

DEXは金融の未来となるか?Uniswap急成長と法的リスクの交差点

2025年に入り、仮想通貨市場における分散型取引所(DEX)の存在感が一段と増しています。特に、イーサリアムベースのDEXにおけるトレーダー数は前年比で70%以上増加しており、その中心に位置するのがUniswapです。使いやすさ、信頼性、流動性といった利点を活かし、UniswapはDEX市場における圧倒的な地位を築いてきました。しかしその一方で、米国の規制当局との摩擦や特許をめぐる訴訟など、新たな...

アレルギー治療の未来を変える一歩:物質特許が日本で成立

2025年、日本の特許庁がついに、ある画期的なアレルギーワクチンに対する「物質特許」を正式に認めた。このニュースは、製薬業界だけでなく、慢性的なアレルギーに悩まされている多くの患者たちにも希望の光となった。これまで「対症療法」に留まってきたアレルギー治療の歴史において、根本治療への転換点となり得る出来事である。 ■ 特許の意義:なぜ「物質特許」が重要なのか 医薬品における特許にはいくつかの種類が存...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る