ライブなどで観客が飛び跳ねる振動を柔らかく~重たい梁で「縦ノリ」対策、日建設計が特許取得


ライブなどで観客が音楽に合わせて跳びはねる「縦ノリ」による振動を抑えようと、大手設計会社日建設計は、周辺施設の振動を8割以上低減できる技術を考案し、特許を取得した。

日建設計(本社:東京都千代田区 代表:大松敦)は、コンサートなどで観客が音楽に合わせて体を動かすことで発生する振動(縦ノリ)を低減する防振架構を開発し特許を取得。硬くて軽い梁で床を支える通常の架構と異なり、柔らかく重たい梁を用いる点が特徴。重りとダンパーを搭載して、重量と減衰を確保することで居住性能も高める。15日に効果測定の公開実験を行い、振動を8割以上低減できることを確認したことを日刊建設工業新聞が22年12月18日伝えている。

「縦ノリ防振架構」は、振動を周囲に伝えない柔らかい梁と、床自身の揺れを抑える重たい梁、制振ダンパーなどで構成。梁には、通常の鉄骨の2倍程度の強度を備える超高強度鋼材「H-SA700」を使用する。梁下部にコンクリート製の重りの箱を設置し、内部には電気炉酸化スラグ骨材を入れることで、ふわふわとした揺れの発生を防ぐ。制振ダンパーは縦ノリ時の揺れ戻しを防ぎ、地震時にも効果を発揮する。

公開実験は、愛知県長久手市内で12月15日に実施した。5人が同時に梁の上で連続で飛び跳ねて振動を発生したが、振動を8割以上低減した。データをモニターに表示し効果を確認した。

ライブ会場での縦ノリは、周辺の建物に震度3程度の揺れを引き起こすこともあるが、地盤改良などを実施するとコストがかかるため、対策が課題になっていた。同架構では、発生する振動を80~90%低減できるため、別用途の施設でもであっても音楽ライブが実施しやすくなり、事業者の収益改善につながる。

日建設計エンジニアリング部門構造設計グループの朝日智生アソシエイト(名古屋大学受託研究員)は「需要は多く、さまざまな場面で提案していきたい」、研究に協力する名古屋大学の福和伸夫名誉教授は「設計事務所がこのような取り組みを行うことは興味深い」と話したとしている。

特許概要

【公開番号】特開2019-90180(P2019-90180A)
【公開日】2019年6月13日
【発明の名称】構造物床の振動防止架構
【出願人】 【氏名又は名称】株式会社日建設計
【発明者】 【氏名】朝日 智生 【氏名】寺田 隆一 【氏名】山野 祐司

【要約】 【課題】 垂直方向振動を減衰する効果が大きく、構造物床の構造が複雑なものとならないと共に、施工に多大な時間と費用を要しない構造物床の振動防止架構を提供する。

【解決手段】 構造物床の振動防止架構1は、視聴者を載置する床面2をロングスパンの成の小さい梁材3により単純支持させ、梁材3と下階床面5との間に減衰ダンパー6を配設すると共に、梁材3の下方に適宜個数の錘体7を吊下する。梁材3の材料としては、超高強度鋼を採用するのが好ましい。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://nordot.app/977322400361005056?c=581736863522489441
https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/news/20230105-OYTNT50002/


Latest Posts 新着記事

プレーも快適、運営もスマート アクロディアがゴルフ場向け表示特許を獲得!

株式会社WHDCアクロディア(以下、アクロディア)は、2025年8月、ゴルフ場利用者の利便性向上と運営効率の改善を目的とした「ゴルフ場向け表示技術」に関する特許を正式に取得したと発表した。本特許は、スポーツ×IT領域における同社の知的財産ポートフォリオをさらに強化するものであり、今後の事業展開において大きな推進力となることが期待されている。 特許取得の背景 近年、スポーツ業界全体でDX(デジタルト...

日立・川崎・シーメンスに学ぶ ― 鉄道AI活用と特許戦略の最前線

1. ライフサイクル全体を貫く「予知×最適化×自律化」 AIの主戦場は、(1)予知保全(異常検知・故障予測)、(2)工程最適化(生産・点検・要員配置)、(3)自律化(画像・3D認識による自動検査/警報)に集約されます。2024~2025年にかけては、クラウド/エッジ連携とデジタルツインの普及で「1拠点PoC」から「複数拠点・他社路線展開」へ局面が移りました。特にNVIDIA系スタック(Jetson...

菱ガス化、CO₂から未来を創る ― メタノール製造特許で描くカーボンニュートラルの道

世界的に脱炭素化の潮流が加速する中、石油・天然ガスに依存しない新たな化学品製造プロセスの確立は、日本をはじめとするエネルギー輸入国にとって喫緊の課題となっている。その中で、菱ガス化(仮称)は近年、「メタノール製造方法」に関する複数の特許出願・取得を通じて、次世代の化学原料製造に挑戦している。本稿では、同社の技術的背景と特許の特徴、さらに業界全体における位置づけについて詳しく見ていきたい。 メタノー...

キヤノン参戦!? 新特許が示す“シネマ級スマホ”の衝撃

世界的なカメラメーカーであるキヤノンが、ついにスマートフォン市場へ参入するのではないか―そんな観測が特許情報をきっかけに広がっている。これまでカメラ業界をけん引してきた同社がもしスマホ分野に本格的に乗り出すとすれば、その意味は非常に大きい。単なる「カメラが強いスマホ」ではなく、映画撮影レベルの表現力を一般消費者の手のひらに届ける可能性があるからだ。ここでは、新たに明らかになった特許の内容や、カメラ...

高精細×省電力を両立 半導体エネ研の酸化物半導体特許が拓く未来

近年、スマートフォンやタブレットに加え、テレビやパソコン用ディスプレイ、さらには車載ディスプレイに至るまで「大画面化」の潮流が加速している。高精細かつ省電力を両立したディスプレイが求められる中、バックプレーン技術の要となる半導体材料として、酸化物半導体が再び注目を浴びている。 こうした状況下で、半導体エネルギー研究所(半導体エネ研)が、大画面パネル向けの酸化物半導体技術に関する新たな特許を取得した...

I-ne、東大と共同で「化粧品用マイクロニードル技術」を特許出願 株価後場に上昇

化粧品ブランド「BOTANIST」や「YOLU」を展開するI-ne(アイエヌイー、東証グロース上場)は、東京大学との共同研究の成果として「新規化粧品用途におけるマイクロニードル技術」を特許出願したことを明らかにした。この発表を受け、同社株は後場に入り上げ幅を拡大。投資家からは「技術力の裏付けとなる知財戦略が進展した」との評価が寄せられている。 ■ マイクロニードル技術とは何か マイクロニードルとは...

EV急速充電の主導権争い シリコン負極材で韓国勢が優位に

電気自動車(EV)の普及において最大の課題の一つが「充電時間」である。ガソリン車に比べて充電に時間がかかることは、ユーザー体験を損ねる要因となってきた。しかし近年、バッテリー技術の革新、とりわけ「シリコン系負極材」の実用化が進むことで、急速充電の実現に大きな期待が寄せられている。こうした中、韓国のLGエナジーソリューション(LGES)やSKオンが、関連する特許ポートフォリオの拡充によって、中国最大...

知財で支える防災社会──特許技術がもたらす安全と創意

知財を活用して防災を支える技術と創意の力 私たちの生活は、地震、台風、豪雨、火山噴火といった自然災害の影響を受けやすい環境にあります。災害によって命や財産が脅かされるだけでなく、社会インフラや経済活動にも大きな影響を与えます。こうした脅威に備えるためには、防災技術の開発や迅速な対応が不可欠ですが、近年では「知的財産(知財)」の活用が防災力向上に大きく寄与することが注目されています。 特許技術が支え...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る