耐食性が高いキースターのAAニードル~キャブレターに不可欠なニードルバルブで特許取得!!


キャブレターに欠かせないパーツのひとつにニードルがある。岸田精密工業株式会社(本社:兵庫県尼崎市 代表:榮治雄)はこのニードルの品質にこだわった会社。ほかのニードルとどう違うのか。それは『アルコールにも強い!』ということ。これは独自に開発した耐アルコールニードル(通称名:AA Needle)で、同社はこの技術で特許を取得したことをすでに公表している。

燃料タンクからフロートチャンバーに流れるガソリンの量を一定に保つために働いているのがフロートとニードルバルブ。燃調キットに含まれるニードルバルブのうち、先端部分がゴム製のものは「AAニードル」呼ばれるキースターの特許技術を採用。AAニードルは市場に普及しつつあるバイオガソリンに対する耐久性が高く、長期間に渡りガソリンに浸っても安定した性能を発揮するのが最大の特長。

キャブレターに必要不可欠なこのニードルバルブとは。フロートチャンバーにガソリンが流れ込むとフロートが浮き上がり、ニードルバルブがガソリン通路を閉じると流入が止まる。そしてガソリンを消費してチャンバー内の油面が低下すると、フロートが下がってバルブが開いてガソリンが流れ込む。走行中のバイクのキャブレターでは常にこの動作が繰り返されている。
ニードルバルブはその名の通り、円柱状の胴体に針のように尖った先端の円錐部分が付いた小さな鉛筆のような形状をしており、この先端部分がキャブレターボディ側のバルブシートに接する事でガソリンを断続する。原理的にはフロートの上下に連動して開閉しているだけの部品だが、長期間使用すると主に二種類の不具合が発生することがある。

ひとつは、バルブとバルブシートが振動を伴うことでニードル先端の接触部分が徐々に摩耗する。接触部分が摩耗してバルブシートとの当たり幅が拡大するとバルブの気密性が低下し、フロートが上昇してバルブが閉じてもガソリンの流れを止められず、油面の上昇につながる場合がある。それだけならまだしも、上昇した油面が一定レベルを超えるとガソリンがキャブレターの外部にあふれ出すオーバーフローを引き起こす。

ふたつ目は長期間同じガソリンに浸かることで起こるニードルバルブ自体の変質。日常的に使用するバイクで、フロートチャンバー内のガソリンが常に入れ替わるような状態なら問題はない。しかし同じガソリンが留まる状態が長く続くことで変質して、不揮発成分がワニスとなったり真鍮製のジェット類に緑青というサビを発生させる場合がある。

またニードルバルブが長期間ガソリンに浸漬する状況で、ダメージが生じる場合がある。特に最近市場に普及してきたバイオガソリンと呼ばれるエチルアルコール含有の燃料は、既存のゴム製品に対する攻撃性が高く相性が良くないことが報告されている。

それに対して2006年に特許公開となったAAニードルは、従来のゴム製ニードルバルブに対してバイオ燃料に対する耐食性が大幅に高く、長期間にわたってガソリンが浸漬するような条件下でも安定した性能を持続することが試験データから証明されている。

ニードルバルブには先端が金属製(洋白製研磨ニードル)とゴム製(AAニードル)があり、燃調キットは純正キャブレターのニードルバルブ材質に準じたバルブを使用している。複数のジェットやニードルによって純正キャブレターによるセッティングを可能にしたのが燃調キットの最大の特長だが、最新のガソリン事情に合わせて性能をアップデートしたAAニードルもまた、キャブレター専門メーカーだからこそ注目し実現できた技術の集大成と言える。

特許の概要

【特許番号】特許第4327700号(P4327700)
【登録日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【発明の名称】硬質樹脂を内蔵する弾性体ニードル
【特許権者】 【氏名又は名称】岸田精密工業株式会社
【発明者】 【氏名】岸田多門
【要約】
【課題】 流体制御用ニードルバルブのゴム等の弾性体ニードルを、成型工程をなくすことにより、きわめて安価に製作し、かつ性能を良くする。
【解決手段】 流体制御用ニードルバルブ用のニードルが、管状の支持体28の先端部に、予め製作されたゴム材料等の弾性体からなる中空状の円錐体20及び該円錐体20に連設されたゴム材料等の弾性体からなる小径短円筒部32の該小径短円筒部32を嵌設し、小径短円筒部32内から円錐体20の中空部22にわたって硬質樹脂30を充填、固定して構成される。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://keyster.jp/?mode=f6
https://young-machine.com/brand/2022/11/18/386695/


Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る