急拡大の“密を回避する”混雑解消サービス 事業の要は特許と知財ポートフォリオ構築


株式会社バカンは、施設や場所の混雑情報をリアルタイムで配信・可視化するサービスを提供するスタートアップ。2016年の創業から5年足らずで多くの企業や自治体と連携し、急速に事業を拡大している。これらの連携を下支えしているのが創業初期に取得した特許の存在だと、スタートアップの知財コミュニティサイト「IP BASE」は2021年8月17日伝えている。

センサーや画像認識を活用してあらゆる場所の混雑状況を可視化する機能をベースに、空いている施設やお店を探している個人、回転率を上げたいお店、密を避けたい施設など、使う人の目的に合わせて、スマートフォンやタブレット、あるいは街のデジタルサイネージに最適な形で表示することでさまざまなサービスへと展開できるのが同社の強みだ。

これまでは、民間の百貨店や飲食店、オフィス、駅、空港に対して混雑や空室状況の可視化サービスを提供していたが、コロナ禍では密を避けるため、市役所の窓口、コロナワクチンの予約代行施設、公園など公共施設への導入も進んでいるそうだ。

目下、特に需要が高まっているのが、避難所の空き状況の可視化だ。水害や地震などの災害発生時には、避難所への一極集中が起きてキャパシティーを超えてしまうと、住民・職員双方に大きなストレスになり、受け入れが遅れると体力が失われ、また密になれば感染リスクも高くなってしまう。さらに、空き情報を可視化すれば、最寄りの空いている避難所を探して、自助努力による分散避難が可能になる。

特に災害関連では、2020年の8月から支援を開始し、現在160以上の自治体、1万施設以上に提供。避難所への導入については、人口カバー率10%まで急速に普及している。

「大企業との連携を考えたときに、わかりやすく自社の強みがあったほうが組みやすくなります。また、お互いの知財の境界線をはっきりさせておかないと、あとで揉めかねないな、と特許化を考えるようになりました。自分たちで対策をするのは当たり前ですし、制度として権利が国に担保されるのなら活用しない手はありません」(バカン代表:河野氏)

さらに、「最初に出願したのはデジタルサイネージに表示する仕組みに関連する特許です。リアルタイムの空き情報をトリガーにディスプレーの表示を自動的に切り替える弊社独自のシステム『VDO』(Vacant-driven Display Optimization)を中心に、その周辺特許を固めていきました」狙い通り、特許を取得していたおかげで大手企業との連携交渉はスムーズに進められたそうだ。

「早期審査を利用して早く権利化できたので、より安心感を持ってもらえました。特許という裏付けがあるので、大手企業などに対しては自社の技術やサービスの何が優れているのかを明確に伝えられます」(バカン代表:河野氏)

 現在は、初期の特許を補強する形でVDOに関する周辺特許の強化を進め、一部についてはPCT出願を利用して、シンガポールやオーストラリアなど海外への備えも行っている。また、ユーザー体験を上げるための表示方法などオペレーション部分についても特許化を模索しているとのこと。

【オリジナル記事、引用元、参照】
https://ipbase.go.jp/learn/ceo/page23.php
https://ascii.jp/elem/000/004/066/4066113/


Latest Posts 新着記事

GE薬促進の陰で失われる特許の信頼性―PhRMAが警告する日本の制度的リスク

2025年4月、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が日本政府に提出した意見書が、医薬業界および知財実務者の間で波紋を呼んでいる。矛先が向けられたのは、ジェネリック医薬品(GE薬)に関する特許抵触の有無を判断する「専門委員制度」だ。PhRMAはこの制度の有用性に疑問を呈し、「構造的な問題がある」と批判した。 一見すれば、専門家による中立的判断制度は知財紛争の合理的解決に寄与するようにも思える。だが、...

破産からの逆襲―“夢の電池”開発者が挑む、特許逆転劇と再出発

2025年春、かつて“夢の電池”とまで称された次世代蓄電技術を開発していたベンチャー企業が、ついに再建を断念し、破産に至ったというニュースが駆け巡った。だが、そのニュースの“続報”が業界に波紋を呼んでいる。かつて同社を率いた元CEOが、新会社を設立し、破産企業が保有していた中核特許の“取り戻し”に動き出しているのだ。 この物語は、単なる一企業の興亡を超え、日本のスタートアップエコシステムにおける知...

サンダル革命!ワークマン〈アシトレ〉が“履くだけ足トレ”でコンディションまで整うワケ

「サンダルなのに快適」「履いた瞬間にわかる」「この値段でこれは反則級」――こうした驚きと称賛の声が続出しているのが、ワークマンの〈アシトレサンダル〉だ。シンプルな見た目に反して、履き心地・健康効果・歩行補助といった多面的な機能を備える同製品は、単なる夏の室内履き・外出用サンダルという枠を超えて「履くことで整う道具」として注目されつつある。 このコラムでは、アシトレサンダルの具体的な機能や構造だけで...

斬新すぎる中国製“センチュリーMPV”登場!アルファード超えのサイズと特許で快適空間を実現

中国の高級ミニバン市場に、新たな主役が登場した。GM(ゼネラルモーターズ)の中国ブランド「ビュイック(Buick)」が展開するフラッグシップMPV「世紀(センチュリー/CENTURY)」は、その名の通り“100年の誇り”を体現する存在だ。日本の高級ミニバンの代名詞・トヨタ「アルファード」をも超えるボディサイズに、贅沢を極めた2列4人乗りの内装、そして快適性を徹底追求した独自の“特許技術”が組み込ま...

実用のドイツ、感性のフランス──ティグアン vs アルカナ、欧州SUVの進化論

かつてSUVといえば、悪路走破性を第一義に掲げた無骨な4WDが主役だった。しかし今、欧州を中心にSUVの在り方が劇的に変化している。洗練されたデザイン、都市部での快適性、電動化への対応、そしてブランドの哲学を反映した個性の競演。そんな潮流を牽引するのが、フォルクスワーゲン「ティグアン」とルノー「アルカナ」だ。 この2台は単なる競合ではない。それぞれ異なる立ち位置とブランド戦略を背景に、「欧州SUV...

戦略コンサルはもういらない?OpenAI『Deep Research』の衝撃と業界の終焉

OpenAI「Deep Research」のヤバい背景 2025年春、OpenAIがひっそりと発表した新プロジェクト「Deep Research」。このプロジェクトの正体が徐々に明らかになるにつれ、コンサルティング業界に戦慄が走っている。「AIは単なるツールではない」「これは人間の知的職業に対する“本丸攻撃”だ」とする声もある。中でも、戦略コンサル、リサーチアナリスト、政策提言機関など、いわゆる“...

老化研究に新展開——Glicoが発見、ネムノキのセノリティクス作用を特許取得

はじめに:老化研究の新潮流「セノリティクス」 近年、老化そのものを「病態」と捉え、その制御や治療を目指す研究が進んでいる。中でも注目されるのが「セノリティクス(Senolytics)」と呼ばれるアプローチで、老化細胞を選択的に除去することで、慢性炎症の抑制や組織の若返りを促すというものだ。加齢とともに蓄積する老化細胞は、がんや糖尿病、心血管疾患、認知症といった加齢関連疾患の引き金になるとされ、これ...

EXPO2025に見る「知と美」の融合──イタリア館が描く未来の肖像

2025年大阪・関西万博(EXPO2025)が近づくなか、多くの国が自国の強みをテーマにパビリオンを構築している。イタリアといえば、多くの人が思い浮かべるのは、パスタやピザ、ワインといった「食」、アルマーニやプラダ、グッチなどの「ファッション」だろう。しかし、イタリアの真の魅力はそれだけではない。今回の万博では「もうひとつのイタリア」、すなわち高度な技術力と伝統文化、そして未来志向の融合が強く打ち...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

大学発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る