未来を変えるロジスティック関連特許


2024年問題は、この4月1日から働き方改革関連法が施行されることで、時間外労働時間の上限規制が適用され運送・物流業界や建設業界、医療業界におこる問題です。 今回はその中でも、生活に密接しているロジスティック(物流)にフォーカスしてみました。

運送物流に関わる人たちの労働時間に上限が設けられることで、「明日届く」が無くなるかもしれません。さらには、コスト高により様々な物の価格が上がることが予想されています。 そうなると、まず思い浮かぶのは自動運転だと思いますが、自動運転以外にも様々な技術で問題解決を可能性があります。

今回の解説の中から、2024年問題を解決する新しいビジネスチャンスが生まれるかも?

CONTENTS LIST

効率的な配送の新基準、ライフラインデータが切り開く未来

日々の暮らしに欠かせない配送サービスは、私たちの生活をより便利にしています。しかし、配送の効率化は依然として大きな課題の一つです。

今回紹介する特許発明は、その課題に対する新たなアプローチを提供します。ライフラインの利用データを活用して、特定の配送先の在宅確率を予測し、配送サービスの効率化を図るシステムについて紹介します。電力、ガス、水道など、日常生活を支える重要なインフラからのデータを分析し、配送計画の最適化を実現します。

このシステムでは、先進の機械学習技術を駆使して、配送先の在宅確率を高精度に予測します。配送業務の品質向上だけでなく、配送情報の管理においても配送先のプライバシーを守る配慮がなされています。再配送の回数を減らし、配送コストの削減にも寄与することで、配送サービスの全体的な品質向上を目指します。

従来、宅配業務の効率向上を可能とするシステムが知られています。例えば、在宅情報を地域別及び時間帯別に集計した情報に基づいて各地域の各時間帯における在宅割合を算定し、算定した在宅割合に基づいて配達順の情報を出力するシステムなどが存在します。

しかし、このようなシステムでは、ある時刻における特定の住居(荷物の配達先)の在宅割合など、個別の利用先の属性を推定することはできません。

発明の目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ある時刻における個別の利用先の属性を推定するための情報処理システムを提供することを目的にしています。

発明の詳細

本発明は、ライフライン使用量の時系列データを基に、特定の利用先(例えば住居やオフィスなど)の属性(特に在宅や不在などの状態)を予測するための情報処理システムに関連しています。

そして、本発明の核心となるのは、上記のライフライン使用量(特に電力使用量)の時系列データを効果的に活用して、利用先の現在または将来の属性を精度高く予測する点にあります。

情報処理システムの主要構成要素

取得部: 対象時刻を含む一定期間(第1期間)のライフライン使用量の時系列データを取得します。このデータは、特定の利用先でのライフライン(電力)の使用状況を示しています。

正規化部: 取得した利用データから、第1期間より短い期間(第2期間)にわたるライフライン使用量の正規化された時系列データ(正規化利用データ)を生成します。この正規化は、ライフライン使用量の集合を基準にして行われ、データのバリエーションを均一化することで、より精度の高い予測を可能にします。

学習部: 正規化された利用データと、対象時刻における利用先の属性(在宅・不在)を学習データセットとして使用し、利用先の正規化利用データが入力された場合にその属性の予測値を出力するように学習モデルを学習させます。

予測部: 生成された正規化利用データを学習済みモデルに入力し、利用先の属性(在宅・不在)の予測値を演算します。

図1は、情報処理システム1の一例を示す概略図です。

情報処理システム1は、複数のスマートメータ10、サーバ20、及び、複数の配送端末30を備えます。

スマートメータは住居に設置され、電力使用量を計測する通信機能付きの電力量計です。これらのデータは、サーバによって収集され、住居の電力履歴と在宅履歴に基づいて学習が行われます。この学習には、住居が配達物を受け取ることが可能な在宅状態か、人が存在しないか受け取ることが不可能な不在状態かを示す情報が含まれます。サーバはこれらの情報と学習結果を基に、配送端末に配送順や予測結果などの出力情報を送信します。配送端末はこの情報を表示し、配送者は指示に従って配送を行い、結果を入力します。このシステムにより、電力情報から配送先の在・不在を予測し、人がいると予測される時間に効率的に荷物を届けることが可能になります。

本発明で用いられるサーバは、通信部、記憶部、処理部を含む構成で、ネットワークを介した各種通信、プログラムや処理結果の保存、入力情報に基づく出力情報の生成を行います(図3)。具体的には、電力履歴と在宅履歴を基に学習データセットを生成し、それに基づいて学習し、学習結果を記憶します。スマートメータからの電力情報や配送荷物の情報を取得し、将来の在・不在を予測、記憶し、配送端末の現在地情報を基に次の配送先を決定して配送端末に送信します。記憶部は、教師データ、学習結果、スマートメータ情報、荷物情報、時刻情報、予測情報、地図情報、配送情報を保存する複数の専用記憶部を含み、各種情報の処理と保存を担当します。

このサーバの記憶部は、教師データ、学習結果、スマートメータ情報、荷物情報、時刻情報、予測情報、地図情報、配送情報を含む複数の専用部分で構成されます。これらはそれぞれ、電力履歴と在宅履歴、学習したモデル、スマートメータの設置情報と電力履歴、配送荷物の詳細、現在時刻、予測した在・不在結果、配送先案内に必要な情報、配送順序や配送結果などの配送関連情報を記憶します。これにより、サーバは電力使用量と住居の在・不在状態を学習、予測し、効率的な配送計画を立てるための情報を管理します。

次に、記憶部が記憶する教師データ、設置情報、スマートメータが取得した電力情報、荷物情報、予測結果、配送情報の一例について、説明していきます。

図4では、電力と在宅履歴を特定の測定期間に対応付けた教師データの例を示しており、特定の1分間の期間において、電力消費量が0.6であり、その時の在宅状態が不在であることを示しています。

図5は、スマートメータのIDとその設置場所を対応付けた設置情報の例を説明しており、ID「M0001」のスマートメータが東京都文京区に設置されていることを示しています。

図6では、スマートメータによって取得された電力情報の例を示し、特定のスマートメータ(ID「M0001」)が一定期間(2018/12/01の10:00:00から10:00:01)に0.05の電力を測定したことを示しています。

図7は、荷物ID、配送先住所、宛名を関連付けた荷物情報の例を示しており、荷物ID「12345」が東京都文京区本郷の「本郷太郎」宛に配送されることを示しています。

図8に示された予測結果の例では、特定の配送先の在宅確率が予測時刻(2018/12/01の10:00から10:05)に100%であることが示されています。

図9は、配送情報の例を示しており、配送順序、荷物ID、配送先住所、宛名、配送予定時刻、実際の配送時刻、配送結果を対応付けた情報で、特に「配送順」1の荷物は配送が完了し、「配送順」4の荷物は未完了であること、および「配送順」5の荷物がまだ配送されていないことを示しています。

サーバの処理部について

図3に戻り、サーバの処理部について見ていきます。

処理部23は、情報取得、学習、時刻取得、予測、配送先決定、出力処理の各部分を含み、サーバの中心的な機能を担っています。

情報取得部231はスマートメータからの電力情報や配送端末からの配送結果を取得し、それらを記憶部に保存します。また、教師データを用いて学習データセットを生成し、所定の期間ごとの電力履歴の統計値や在宅履歴の代表値を算出します。

学習部232は提供された学習データセットを用いて学習を行い、電力履歴の統計値を独立変数、在宅履歴の代表値を従属変数として設定し、学習モデルを構築します。このモデルは将来の時刻における在宅確率を予測するために使用されます。

時刻取得部233は現在時刻を取得し、この情報を時刻情報記憶部に保存します。

予測部234は学習結果と取得した電力情報を用いて、配送先の将来の在宅確率を予測し、予測結果を記憶します。

配送先決定部235は予測結果、荷物情報、地図情報、配送端末の位置情報に基づいて次の配送先を決定します。これには、移動距離、所要時間、在宅確率を考慮した距離(OWD)を算出し、OWDが最小となる配送先を次の配送先として選択します。

出力処理部236は次の配送先情報を配送端末に送信し、配送情報の更新がある場合にはそれを通知します。また、配送が完了した場合や配送を行わない決定が下された場合には、配送終了情報を配送端末に送信します。

サーバの処理部は、電力情報と在宅履歴から学習データセットを生成し、学習済みモデルを用いて将来の在宅確率を予測、これに基づいて効率的な配送計画を立案することで、配送効率を最大化する役割を果たしています。

サーバの動作について

図11は、サーバ20の学習段階の動作をフローチャートで示しています。教師データを読み出し、学習データセットを作成し、最後に学習を行って学習結果を記憶します。

図12では、予測段階のサーバ20の動作をフローチャートで表しており、荷物情報の取得、配送先の電力履歴の取得、そして学習結果を用いて配送先の将来の在・不在を予測し、予測結果を記憶する手順が示されています。

図13は、次の配送先の決定段階におけるサーバ20の動作をフローチャートで示しています。配送情報の取得、未配送先の配送情報と地図情報の取得、未配送先のOWD計算、そして最もOWDが小さい未配送先を次の配送先として決定し、配送情報に記憶する手順を示しています。

図14は、情報処理システム1の配送処理の動作をフロー図で説明しており、最初の配送先の決定、配送情報の送信、配送情報の表示、配送実施、配送結果の入力と送信、次の配送先の情報要求と受信、そして配送終了情報の送信と表示までの一連の配送処理手順を示しています。

図15は、配送荷物と配送端末の表示例を示しています。配送荷物(図15(A))には荷物IDのみ記載し、配送先の情報は含めないことでプライバシーを保護しています。配送端末の表示画面D10(図15(B))では、地図画像、配送先のアイコン、配送情報、移動経路などを含み、新しい配送先情報を提示します。表示は配送端末の現在位置と直前及び新しい配送先を中心に構成され、不在の配送先情報は表示しないことでプライバシーを守ります。

表示画面D20(図15(C))は配送結果の入力画面で、配送員が配送完了または未完了の結果を入力します。この表示方式により、配送先の情報を限定的に表示し、配送員による配送先のプライバシーへの配慮を可能にしています。

本発明の効果を検証するためのシミュレーションでは、本実施形態に基づく配送順決定方法(OWDを用いた方法)と他の2つのベンチマーク手法による配送処理の効率性を比較しました。

1つ目のベンチマークは最短配送経路に基づく方法で、予測情報を使用しません。2つ目のベンチマークは平均在宅確率に基づいて配送先を決定する方法で、リアルタイムの電力履歴を利用しません。一方、OWDを用いた方法では、リアルタイムの電力履歴に基づき在宅予測を行い、配送順を決定します。

シミュレーションは、100件の住居を持つ仮想マップ上で行われ、各住居は異なる電力履歴と在宅履歴を有しています。このシミュレーションでは、OWDのパラメータCを0.6、将来の存在確率の閾値hを0.9と設定しました。

結果として、OWDを用いた方法は他の2つのベンチマーク手法と比較して、1回目の配送サイクルでの配送完了率が高く(98%)、全配送サイクルにおける未完了の割合が最も低かった(2.2%)。また、全配送サイクルの経路の合計は、OWDを用いた方法の方が6%減少しました。

これらの結果から、OWDを用いた方法は再配送が少なく、効率的に荷物を届けることができることが示されました。この方法は、配送先の電力情報と学習結果を基に配送先の在宅確率を予測し、効率的な配送順を決定することで、配送効率の向上とプライバシーの保護を両立させることが可能です。

実施例の結果

本発明の実施例では、ライフラインの利用状況を分析し、特定の期間内でのライフライン使用量の正規化データを基に機械学習を用いた予測モデルの学習と評価を行っています。具体的には、正規化利用データに係る第2期間の長さ(予測に利用する期間)、第1期間の長さ(学習に利用する期間)、および時系列の周期(データを取得する時間間隔)を変化させて、それぞれの設定における予測精度(AUC)、学習時間、および予測時間の影響を観測しました。

実験結果として、以下の点が明らかになりました:

第2期間の長さが12時間以上36時間以下の範囲で予測精度が高くなり、特に24時間の設定で最も高い予測精度を示しました。これは、人間の概日リズムが24時間周期であることが影響していると考えられます。

第1期間の長さに関しては、8日以上16日以下の範囲で予測精度が高くなり、14日が最も効果的であることが示されました。これは、すべての曜日に関するデータが含まれることと、季節変動の影響を抑制することが理由として挙げられます。

時系列の周期は、1分以上30分以下の範囲で予測精度が高くなり、15分が最適であることが判明しました。これは、適度なデータの細かさが予測精度を向上させるためと考えられます。

本実施例における機械学習モデルの実験と評価は、LightGBMを用いて実施されました。シミュレーション結果は、様々な設定下での予測精度の違いを示し、特定の条件下で予測モデルの性能を最大化するための洞察を提供しています。

その他の応用について

本発明の明細書中には、さまざまな実施形態についての拡張性と適応性が説明されています。発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、その範囲内で多岐にわたる設計変更が可能であるとされています。

主なポイントは以下の通りです

ライフラインの使用量に基づく予測:電力以外にも、ガス、水道、通信データ量などのライフラインの使用量を用いて、在・不在を判定することが可能であることが示されています。これらの情報を活用することで、同様の効果を得ることが可能です。

予測の対象の拡張:在・不在の判定だけでなく、居住者の世帯属性、健康状態、商品の購買指数などの他の属性の予測にも応用できることが説明されています。

配送先の決定方法:配送先を複数同時に決定する方法以外にも、1度に1つの配送先を決定する方法も可能であり、配送結果の送信時に次の配送情報を要求する方法も考えられます。

表示方法の柔軟性:表示部に表示させる配送先の数についても、配送者が現場で選択することが可能であり、表示内容のカスタマイズが可能であることが示されています。

不在時の配送完了の考慮:宅配ボックスの利用や、オフィスなど別の受取場所の存在など、不在時でも配送を完了できる状況を考慮に入れることができる。

配送結果の反映:配送できなかった荷物について、配送端末に連絡先情報を表示し、配送者が直接連絡を取れるようにする方法も提案されています。

再予測の可能性:配送開始前だけでなく、所定の時間間隔ごとに在宅確率の再予測を行い、配送順を更新することも可能です。

外部情報の利用:気象情報や災害情報、カレンダー情報など、外部からの情報を取り入れて、予測の精度を向上させることも検討されています。

これらの拡張性と適応性は、発明が実用的なシナリオにおいて多様な形で応用できることを示しています。ライフラインの使用量を活用した予測モデルは、在・不在の判定に留まらず、より広範な応用が期待されます。

この発明は、ライフラインの使用量データを基に配送先の在不在予測や居住者の生活パターンを分析し、これをもとにした効率的な配送計画を立案するシステムに関連しています。特に、電力、ガス、水道などの利用量データを活用し、配送先の在宅確率をリアルタイムに予測することが核となっています。これにより、配送効率の向上、再配送の削減、及び配送コストの削減を目指します。

この発明のポイントをまとめると、以下のような点が挙げられます。

ライフライン利用データの活用:電力使用量などのライフライン利用データを利用して、配送先の在宅確率を予測します。これは、特定のライフラインの消費パターンが居住者の在宅状態と関連があることを利用したものです。

機械学習モデルの適用:ライフライン利用データを基にした機械学習モデルを用いて、在宅確率の予測精度を高めます。このモデルは、ライフスタイルの周期性(例:概日リズム)や季節性の影響を考慮しています。

予測に基づく配送計画の最適化:予測された在宅確率を基に、配送順序を決定し、効率的な配送ルートを計画します。これにより、不在での配送失敗を減らし、配送効率を向上させます。

多様なライフラインとデータ周期の柔軟な取り扱い:電力以外にもガスや水道利用量を含む様々なライフラインのデータを使用し、また、データ収集の周期を変化させることで最適な予測精度を求める柔軟性を持っています。

プライバシーの考慮:実際の住所や宛名などの詳細な情報を直接配送荷物に記載せず、配送端末で管理することで、プライバシー保護を図ります。

この特許発明の効果を踏まえると、以下のような未来予想が可能です。

配送業界の効率化:このシステムの広範な採用により、配送業界全体の効率が大幅に向上し、環境負荷の低減、配送コストの削減、顧客満足度の向上が期待されます。

スマートシティの実現:都市全体でのライフライン利用データの分析と活用が進むことで、より賢く、生活者中心のサービス提供が可能になるスマートシティの実現に貢献します。

ライフスタイルの個別化対応:配送以外にも、ライフライン利用データを用いた居住者のライフスタイルや健康状態の分析により、個々の生活者に合わせたサービス提供が展開される可能性があります。これにより、より快適で健康的な生活支援が可能になるでしょう。

発明の名称

情報処理システム、学習済みモデル、情報処理方法、及びプログラム

出願番号

特願2020-7464

公開番号

特開2021-114231

特許番号

特許第6908742号

出願日

2020年1月21日

公開日

2021年8月5日

登録日

2021年7月5日

審査請求日

2020年3月23日

出願人

株式会社JDSC

発明者

大杉 慎平
国際特許分類

G06Q 10/08
G06Q 10/04

経過情報

拒絶理由が通知されることなく、一発特許査定。
本権利は抹消されていない 存続期間満了日(2040/01/21) 


輸送計画の効率化を極める組み合わせ技術

物流業界において、輸送計画の最適化は長年にわたる課題でした。特に、輸送ルートの選定やスケジュールの調整には、時間とコストが大きくかかり、効率的な輸送組み合わせを見つけることは困難でした。また、総走行距離の削減や運賃の最小化といった要望に応えるためのシステマティックな手法が不足しているという問題もありました。

今回紹介する特許は、複数の輸送ルートを効率的に組み合わせ、最適な輸送計画を迅速に導き出すことができるシステムで、既に実用化されています。この先進的な技術がどのようなものか、詳説していきます。

従来から、車両の積載率を考慮して物品の輸送計画を生成する提案がありました。物品の輸送を複数組み合わせることで効率的な物品の輸送が可能となり、異なる荷主間での共同輸送を行うことで輸送コストを削減できるとされています。しかし、輸送の組み合わせを総当たりで条件合致を判断する方法では、計算量が膨大になり、迅速な組み合わせの提示が困難であることが課題とされていました。

発明の目的

本発明の輸送組み合わせ列挙システムは、複数の輸送から予め設定された条件を満たす輸送の組み合わせを列挙することを目的としています。システムは、輸送情報を取得するための手段、取得した情報に基づいて組み合わせの候補となる輸送に関する上界又は下界を算出する手段、算出された上界又は下界に基づいて不適切な組み合わせを除外する手段、そして除外された候補以外から条件を満たす組み合わせを列挙する手段を含んでいます。

輸送の組み合わせは、出発地から到着地までの移動を輸送毎に重複せずに行うものであり、設定された条件には組み合わせに含まれる異なる輸送間の移動を含む総移動距離及びその総移動距離に対する輸送のみの移動距離の割合、即ち実移動率に関する条件が含まれます。算出手段は、新たな移動距離を算出し、これに基づいて候補をソートします。その後、ソートされた順番に基づき、組み合わせの候補から除外するか否かを判断します。

発明の詳細

ここからは、本発明の輸送組み合わせ列挙システム(システム10)の機能について説明していきます。システムは、逐次輸送や混載輸送の組み合わせを効率的に算出することができるように設計されています。具体的には、システムは輸送情報を取得し、条件に応じて輸送の組み合わせをソートし、組み合わせの候補を算出します。その後、特定の条件に基づいて、候補の中から不適切な組み合わせを除外し、条件を満たす組み合わせを列挙します。

処理の流れは、まず輸送情報の取得から始まり、ソート、算出、除外、列挙のステップを経て、条件を満たす輸送組み合わせを特定します。このプロセスは、特定の条件(例えば、総走行距離の上限や片道短縮率の目標など)を満たす輸送組み合わせを効率的に算出することを可能にします。

また、システムは輸送の組み合わせに関するさまざまな条件を考慮できるように設計されており、これには運賃条件や混載不可能な輸送の考慮も含まれます。この柔軟性により、ユーザーは特定のニーズに合わせてシステムを利用することができます。

本発明の輸送組み合わせ列挙システムは、特に大量の輸送情報を扱う場合に、総当たり法に比べて大幅な処理速度の向上を実現します。例えば、三角輸送の探索で4,000倍、混載輸送の探索で1,500倍の速度向上が報告されています。この高速化により、複数のマッチング依頼に対して迅速に応答することが可能になります。

このシステムは、輸送組み合わせ列挙プログラムによって実装され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されます。プログラムは、取得モジュール、算出モジュール、除外モジュール、列挙モジュールから構成され、システムの各部と同様の機能をコンピュータ上で実行します。

このように、本発明の輸送組み合わせ列挙システムとプログラムは、輸送計画の効率化、コスト削減、環境負荷の軽減に貢献するための強力なツールとなります。

では、システムの内容について、簡単にではありますが、掘り下げていきます。

システムの構成要素と機能

【図1】輸送組み合わせ列挙システム

取得部は、輸送に関する情報を取得する機能を担います。この部分では、輸送の出発地、目的地、輸送コスト、輸送時間などのデータが収集されます。取得したデータは、後続の処理の基礎となります。

算出部では、取得した輸送オプションを条件に基づいて分析し、ソートします。例えば、総走行距離の最小化や最適な輸送ルートの特定など、特定の目的に沿った輸送組み合わせの候補を算出します。さらに、輸送組み合わせの上界または下界を計算し、後の処理での選択肢を絞り込むための基準を提供します。

除外部では、算出部で得られた結果を基に、特定の条件を満たさない輸送組み合わせの候補を除外します。このプロセスにより、処理の効率化を図り、最終的な候補リストを精緻化します。除外の基準としては、総走行距離の上限超過、片道短縮率の目標未達、互いに混載できない輸送の組み合わせなどが考慮されます。

列挙部では、除外されずに残った輸送組み合わせの候補から、条件を満たす組み合わせを特定し、列挙します。このプロセスでは、実車率の最大化や運賃の最適化など、特定の目標に基づいた輸送組み合わせが選択されます。

処理の流れ

【図11】輸送組み合わせ列挙システム10が行う動作方法

1. 輸送情報の取得 (S01、取得ステップ)
・情報収集: 輸送に関連する全てのデータ、例えば出発地、目的地、輸送コスト、時間、輸送容量、特別な輸送条件などが集められます。 ・データ標準化: 取得した情報は、後続の処理で扱いやすいように標準化されます。これには、地理的位置情報の正規化や、輸送コストの単位統一などが含まれます。

2. 条件に基づくソートと算出 (S02、算出ステップ)
・ソート処理: 輸送オプションは、総走行距離の最小化、コスト効率、時間効率など、特定の目標に基づいてソートされます。これにより、最適な組み合わせの探索が容易になります。 ・上界・下界の算出: 特定の輸送組み合わせにおける総走行距離の上限や下限、片道短縮率の範囲などが計算されます。これは、不適切な組み合わせを早期に排除するための基準となります。

3. 不適切な組み合わせの除外 (S04、除外ステップ)
・条件不一致の検出: 算出された上界・下界を基に、設定された条件(総走行距離の上限超過、片道短縮率の目標未達など)を満たさない組み合わせが特定されます。 ・除外処理: 条件に合致しない輸送組み合わせは、候補リストから削除されます。これにより、処理対象となる組み合わせの数が減少し、効率的な探索が可能になります。

4. 輸送組み合わせの特定と列挙 (S06、列挙ステップ)
・条件満足の判断: 除外されずに残った輸送組み合わせから、全ての設定条件を満たすものが選択されます。 ・組み合わせの列挙: 条件を満たす輸送組み合わせは、最終的なリストとして列挙されます。このリストは、最適な輸送計画の立案に直接使用されます。

繰り返し処理
・複数の候補検討: S02からS06までの処理は、輸送r1、r2、r3の各候補について繰り返されます。これにより、可能な組み合わせの全範囲が探索されます。 ・条件の動的調整: 処理の進行に伴い、条件(例えば総走行距離の上限)の調整が行われる場合があります。これにより、より多くの有効な組み合わせが発見される可能性があります。

本発明の明細書には様々な輸送態様に応じて輸送の組み合わせの列挙システムが開示されていますが、今回は逐次輸送について簡単にみていきます。

【図2】逐次輸送の例

逐次輸送は、輸送組み合わせ列挙システムにおいて、複数の輸送を時間的に連続して組み合わせる方法といえます。この方法は、特定の輸送r1、r2、r3を効率的に組み合わせることに焦点を当てており、それぞれの輸送が特定の順序で実行されることを前提としています。

<逐次輸送の特徴>

連続性: 逐次輸送は、一連の輸送が順序を追って実行されることを特徴とします。各輸送は、前の輸送が完了した後に次々と開始されます。

依存関係: 輸送間の時間的および空間的な依存関係が重要です。後続の輸送は、前の輸送の終了地点を起点とするため、輸送ルートの計画において連鎖的な影響を考慮する必要があります。

<技術的処理>

輸送情報の取得: 逐次輸送を計画する際には、各輸送の出発地、目的地、所要時間、輸送能力などの基本情報が収集されます。

組み合わせの候補のソート: 輸送組み合わせの効率化を図るため、可能な輸送組み合わせが特定の基準(例えば総走行距離の最小化)に基づいてソートされます。

条件に基づく除外: 特定の条件(総走行距離の上限、時間制約など)を満たさない輸送組み合わせは、早期に除外されます。これにより、最終的な選択肢が絞り込まれます。

<効率化と最適化>

輸送計画の最適化: 逐次輸送では、総走行距離の最小化、時間効率の最大化、コスト削減などを目的とした最適化が行われます。

動的な条件調整: 輸送計画の過程で新たな情報が得られた場合、条件の調整が行われることがあります。このように複数の輸送オプション間で最適な組み合わせを迅速に特定することにより、輸送計画の効率化を実現します。特に、総走行距離の最小化や時間効率の最大化を目指す場合、逐次輸送の計画は複雑になりがちですが、このシステムにより、条件を満たす輸送の組み合わせを効率的に算出できます。また、条件に基づくソートと除外処理により、計算量を削減し、高速な結果提供を実現しています。

【図3】逐次輸送の例

図3(a)に示すように、算出部12は、取得部11から入力した輸送情報に基づいて、輸送r1の到着地t1から、輸送r2としての組み合わせの候補である別の輸送の出発地までの距離e1を算出します。この距離e1は、組み合わせの候補である別の輸送を新たに組み合わせに含めた場合の当該候補の出発地までの新たな移動距離です。算出部12は、上記の算出を、組み合わせの候補である全ての別の輸送について行います。ここでは、算出部12のアルゴリズムは以下のようなものになります。

1 . C ← φ
2 . for b2 in 拠点リスト:
3 .  枝刈り1
4 .  for r2 in b2 出発の輸送リスト:
5 .   枝刈り2
6 .   for b3 in 拠点リスト:
7 .    枝刈り3
8 .    for r3 in b3 出発の輸送リスト:
9 .     枝刈り4
1 0 .   if L≦実車率 and 総走行距離≦T
1 1 .    C ← C ∪ { ( r1 , r2 , r3 ) }
1 2 . Cを出力

算出部12は、算出した移動距離e1が短い順に、組み合わせの候補である別の輸送をソートします。即ち、算出部12は、出発地が輸送r1の到着地t1に近い順に別の輸送をソートします。また、出発地及び到着地(拠点)の少なくとも何れかが、複数の輸送間で共通する場合には、出発地及び到着地の少なくとも何れかに当該複数の輸送を対応付けて、出発地及び到着地の少なくとも何れか毎(拠点毎)に移動距離を算出してもよいでしょう。

続いて、ソートされた順番かつ別の輸送の出発地(拠点)b2毎に以下の処理が行われます(アルゴリズムの2~11のfor文での繰り返しに相当)。

まず、以下のように枝刈り(枝刈り1)が行われます(アルゴリズムの3に相当)。算出部12は、輸送r1の移動距離d1と、算出した距離e1との和d1+e1を総走行距離の下界として算出します。続いて、除外部13は、算出部12によって算出された総走行距離の下界と、総走行距離の上限Tとを比較して、以下の式を満たすか否かを判断します。

1+e1>T

上記の式を満たしていると判断した場合、除外部13は、別の輸送を図2に示す輸送r2として含めた組み合わせは、条件を満たさないものとして列挙する組み合わせの候補から除外(枝刈り)します。

また、算出部12は、算出した距離e1と総走行距離の上限Tとから、以下の値を実車率の上界として算出します。

続いて、除外部13は、算出部12によって算出された実車率の上界と、実車率の目標Lとを比較して、以下の式を満たすか否かを判断します。

上記の実車率の上界は、e1に関して単調減少です。

上記の式を満たしていると判断した場合、除外部13は、別の輸送を図2に示す輸送r2として含めた組み合わせは、条件を満たさないものとして列挙する組み合わせの候補から除外(枝刈り)します。

また、算出部12は、別の輸送の出発地から輸送r1の出発地b1までの距離(図3(a)に示す距離x)を算出します。算出部12は、輸送r1の移動距離d1と、算出した距離e1と、算出した距離xとの和d1+e1+xを総走行距離の下界として算出します。続いて、除外部13は、算出部12によって算出された総走行距離の下界と、総走行距離の上限Tとを比較して、以下の式を満たすか否かを判断します。

1+e1+x>T

上記の式を満たしていると判断した場合、除外部13は、別の輸送を図2に示す輸送r2として含めた組み合わせは、条件を満たさないものとして列挙する組み合わせの候補から除外(枝刈り)します。

続いて、ソートされた順番かつ別の輸送毎に以下の処理が行われます(アルゴリズムの4~11のfor文での繰り返しに相当)。まず、以下のように枝刈り(枝刈り2)が行われます(アルゴリズムの5に相当)。

図3(b)に示すように、算出部12は、算出した距離e1と輸送の移動距離d1,d2とから、以下の値を実車率の上界として算出します。当該実車率の上界の算出は、ある地点からの別の地点へ向かう移動距離と、別の地点からある地点へ向かう逆方向の移動距離とが同一である(距離が対称である)ことを前提とするものです(以下に示すd3の上界の式でこの距離の対称性が必要となります)。

続いて、除外部13は、算出部12によって算出された実車率の上界と、実車率の目標Lとを比較して、以下の式を満たすか否かを判断します。

上記の実車率の上界は、d2に関して単調増加となります。

上記の値が実車率の上界であることは以下のように示されます。

また、上記のd3,e2,e3に関しての単調性は以下のように示されます。

上記の式を満たしていると判断した場合、除外部13は、別の輸送を図2に示す輸送r2として含めた組み合わせは、条件を満たさないものとして列挙する組み合わせの候補から除外(枝刈り)します。

また、算出部12は、別の輸送の到着地から輸送r1の出発地b1までの距離(図3(b)に示す距離x)を算出します。算出部12は、輸送r1の移動距離d1と、算出した距離e1と、別の輸送の移動距離d2と、算出した距離xとの和d1+e1+d2+xを総走行距離の下界として算出する。続いて、除外部13は、算出部12によって算出された総走行距離の下界と、総走行距離の上限Tとを比較して、以下の式を満たすか否かを判断します。

1+e1+d2+x>T

上記の式を満たしていると判断した場合、除外部13は、別の輸送を図2に示す輸送r2として含めた組み合わせは、条件を満たさないものとして列挙する組み合わせの候補から除外(枝刈り)します。

上記の枝刈りによって除外されなかった別の輸送を輸送r2として、続いて、輸送r1と輸送r2との組み合わせに対して、続いて、輸送r3についての枝刈りが行われます。続いての枝刈りは、輸送r1と輸送r2との組み合わせ毎に行われます。

上記の繰り返しが全て終了したら、列挙部14は、列挙する輸送の組み合わせの集合Cに含まれる全ての輸送r1,r2,r3の組み合わせを示す情報を、条件を満たす全ての輸送の組み合わせとして列挙(全列挙)します(アルゴリズムの12に相当)。例えば、列挙部14は、荷主の端末に、荷主の輸送r1に組み合わせ可能な輸送として、輸送r2,r3の情報を送信します。以上が、逐次輸送の組み合わせを算出する場合の輸送組み合わせ列挙システム10の機能となります。

特徴

効率性: 総当たり法に比べて、条件を満たす輸送組み合わせを効率的に算出することができます。特に、三角輸送や混載輸送の探索において顕著な処理速度の向上が報告されています。

柔軟性: 運賃や混載不可能な輸送を考慮するなど、複数の条件を設定し、それに基づく組み合わせの算出が可能です。

スケーラビリティ: 複数のマッチング依頼や複数ユーザからの相次ぐマッチング依頼に迅速に応答できます。

実装

このシステムは、輸送組み合わせ列挙プログラムによって実装され、取得モジュール、算出モジュール、除外モジュール、列挙モジュールを含むプログラムがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されます。これにより、上述した機能がコンピュータ上で実行されます。

応用

この発明は、輸送業界における効率的な輸送計画の作成、コスト削減、環境負荷の軽減に貢献する可能性があります。また、実車率の最大化や片道短縮率の最適化など、輸送効率の向上を図ることが可能です。

この特許発明の主なポイントは、次の3点に集約されます。

輸送情報の詳細な取得と分析
出発地と到着地を含む輸送情報を利用し、効率的な組み合わせを算出します。

条件に基づく組み合わせの最適化
総移動距離及び実移動率を考慮した条件に基づき、最適な輸送組み合わせを特定します。

計算効率の向上
上界又は下界の算出により、不要な組み合わせを迅速に除外し、計算効率を大幅に向上させます。

本発明により、輸送計画の作成と最適化がより迅速かつ正確に行われるようになります。これにより、物流コストの削減、輸送効率の向上、環境への負荷低減が実現可能となり、物流業界全体のサステナビリティへの貢献が期待されます。また、異なる荷主間での共同輸送の促進により、業界内の協力体制強化にも寄与することが予想されます。

この特許により提供されるシステムは、共同輸送マッチングシステムTranOpt(トランオプト)として既に実用化されています。

発明の名称

輸送組み合わせ列挙システム、輸送組み合わせ列挙方法及び輸送組み合わせ列挙プログラム

出願番号

2021-171440

公開番号

2023-61515

特許番号

7373169

出願日

2021年10月20日

公開日

2023年5月2日

登録日

2023年11月2日

審査請求日

2022年9月27日

出願人

国立大学法人群馬大学、日本パレットレンタル株式会社

発明者

吉良知文 他
国際特許分類

G06Q 10/0834(2023.01)
G06Q 50/30 (2012.01)

経過情報

拒絶理由を通知されることなく、特許査定(いわゆる一発特許)


安全と信頼を実現するテレオペレーションシステム

自動運転技術は、運輸業界における最も刺激的な進化の一つとして広く認識されています。しかし、この技術が普及するにつれ、自動運転車両が直面する課題や状況の複雑さも明らかになってきました。特に、予期せぬ障害物の出現や通信の中断など、自動運転システムだけでは対応が難しい状況が存在します。

このような課題に対処するために、本発明ではテレオペレーションシステムが提案されています。このシステムは、遠隔地からの人間の介入を可能にし、自動運転車両が直面する様々な状況に柔軟かつ迅速に対応できるように設計されています。今回紹介する特許が、自動運転車両の安全性、信頼性、および運用効率の向上にどのように貢献するかを紹介していきます。

従来の自動運転車両の開発に関するさまざまなアプローチは、主に消費者が購入するための自動運転車両を生産することを目的として、従来の車両(例えば、手動で運転される自動車車両)を自動化することに重点を置いています。

一方、多くの自動車会社とその関連企業は、ドライバーなしで運用できる車両を所有できるように、従来の自動車および制御メカニズム(例えば、ステアリングなど)を変更しています。

従来の自動運転車両は、特定の条件下で安全に重要な運転機能を実行しますが、車両コントローラーが乗員の安全を危険にさらす可能性のある特定の問題を解決できない場合、ドライバーが制御(例えば、ステアリングなど)を引き継ぐ必要があります。

このような前提に基づくと、自動運転車の大多数は、特定の席または場所が車両内に必ず用意されて、そこに免許を持つドライバーを収容するように設計されるべきであるという固定観念が生まれます。

このことから自動運転車両は最適な設計がされているとは必ずしも言えず、車両設計をさらに簡素化し、リソースを節約する機会(例えば、自動運転車両の製造コストを削減する)を逃しているといえます。

また、従来型の自動運転車両設計思想には他にも欠点があります。従来の考え方によれば、ライドシェアなどによって車両を共有している場合には、ドライバーは車両を特定の場所でピックアップおよび降車する必要があるため、便利な交通サービスを提供するのに適しているとはいえません。このような場所を都市環境で新たに用意することは現実問題として困難であり、共有車両を駐車するために比較的高価な不動産(つまり、駐車場)を準備する必要があります。

現在の交通サービスを提供するために使用される従来型車両は、ドライバーが離席するとそこから移動できなくなります。

このような背景から、ライドシェアアプローチは、交通サービスの需要に対して必ずしも適しているとは言えません。

発明の目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自動運転車両の軌道を遠隔操作で修正するシステムと方法を提案しています。背景技術と課題から導かれる主要な問題点は、自動運転車両が特定の状況や問題を自律的に解決できない場合があること、および従来の自動運転車両の設計が最適化されていないことにあります。これらの課題に対して、この発明では以下の技術的解決策を提案しています:

遠隔操作による軌道修正
自動運転車両が自律的に解決できない特定の問題や状況が生じた場合に、遠隔操作者が車両の軌道を修正できるシステムを提供します。このシステムは、遠隔操作メッセージを通じて自動運転車両からイベントに関連するデータを受信し、対応する行動方針を特定、ランク付け、およびシミュレートすることで、最適な解決策を選択し、それを自動運転車両に送信します。

複数のセンサーとデータの統合
自動運転車両は、環境を感知するために複数のセンサー(例えば、カメラ、レーダー、ライダー)を使用し、これらのセンサーからのデータを統合してリアルタイムで環境を認識します。このデータは、遠隔操作者が情報を視覚化し、軌道修正の決定を下すのに役立ちます。

遠隔操作者の介入による安全性の向上
特定の問題や状況を自動運転システムが解決できない場合に、人間の遠隔操作者が介入して軌道を修正することで、自動運転車両の安全性を向上させます。これにより、自動運転車両が直面する可能性のある限定的な状況や不確実性に柔軟に対応できます。

自律走行車両フリートの効率的な管理
自律走行車両フリートを効率的に管理し、遠隔操作を含む各種サービスを提供するためのプラットフォームを実装します。これにより、自動運転車両の運用とメンテナンスが容易になり、サービスの信頼性と利用可能性が向上します。

通信およびデータ処理の最適化
自動運転車両と遠隔操作プラットフォーム間の通信を最適化し、遠隔操作のためのデータを効率的に処理および伝送する方法を提供します。これには、イベントに関連する情報の視覚化、選択された行動方針の受信と送信が含まれます。

この特許発明により、自動運転車両の運用における安全性と効率性が向上し、自動運転技術の実用化と普及に貢献する技術的解決策が提供されます。

発明の詳細

上述のとおり、この発明は、遠隔操作によって自律走行車の軌道を修正するシステムと方法に関するものです。これは、さまざまな環境での自律走行車の安全かつ効率的なナビゲーションを保証する上での技術的背景と、それに関連する課題を対象としています。

遠隔操作による軌道修正

自律走行車両の運転中に発生する特定のイベントや状況に対処するために遠隔操作者が介入するプロセスを中心に展開される技術要素です。この技術には以下の個別技術要素が含まれています。

通信リンク: 自律走行無人車両と遠隔操作プラットフォーム(または遠隔操作者のコンピューティングデバイス)間の信頼性の高い通信リンクを介して、車両から遠隔操作メッセージが送信されます。このリンクは、車両の状態、環境データ、および特定のイベントに関連するデータを含むメッセージの伝送を可能にします。

イベントの検出とデータ分析: 遠隔操作センターは、自律走行無人車両から送信されたメッセージを受信し、その中のデータから車両が直面している特定のイベントを検出します。これには、障害物の存在、交通状況の変化、またはその他の安全に影響を与える可能性のある要因が含まれます。

行動方針の同定とランク付け: イベントに基づいて、一つ以上の行動方針が同定され、それぞれに対してランク付けが行われます。このプロセスには、シミュレーションを含む複数のステップがあり、遠隔操作者が情報をもとに最適な行動方針を選択できるようにします。

視覚化データの生成: イベントに関連する情報と提案された行動方針は、遠隔操作者のディスプレイに視覚化データとして提示されます。これには、行動方針のランクとシミュレーション結果が含まれます。

選択された行動方針の実行: 遠隔操作者が行動方針を選択すると、その選択は自律走行無人車両に送信され、車両は選択された行動方針に従って軌道を修正します。

遠隔操作サービスの実装: 自律走行無人車両が遠隔操作サービスを要求する場合、遠隔操作プラットフォームは適切な行動方針を実行するための指示を提供します。これには、障害物を回避するための軌道修正や、特定の地理的エリアを避けるための計画が含まれます。

これらの遠隔操作による軌道修正は、自律走行無人車両が直面する様々なイベントや状況に対して柔軟かつ効果的に対応できるようにすることを目的としています。

図1は、自動運転車サービスプラットフォームに通信ネットワークで接続された自動運転車両のフリートの実装を示す図です。サービスとして運用される自動運転車両のフリート109(例えば、自動運転車両109aから109e)が、道路ネットワーク110を自己運転し、自動運転車サービスプラットフォーム101との通信リンク192を確立する様子を示しています。

自動運転車両のフリート109がサービスを構成する例では、ユーザー102が一つまたは複数のネットワーク106を介して自動運転車サービスプラットフォーム101に自動運転輸送のリクエスト103を送信します。応答として、自動運転車サービスプラットフォーム101は、自動運転車両109のうちの一つを派遣して、ユーザー102を地理的位置119から地理的位置111まで自動的に輸送します。自動運転車サービスプラットフォーム101は、駅190から地理的位置119まで自動運転車を派遣するか、または既に乗客なしで輸送中の自動運転車109cを、ユーザー102の輸送リクエストに応じて転用することができます。自動運転車サービスプラットフォーム101は、乗客を伴って輸送中の自動運転車109cを、ユーザー102(例えば、乗客として)からのリクエストに応じて転用するようにさらに構成される場合があります。加えて、自動運転車サービスプラットフォーム101は、既存の乗客を降ろした後に、ユーザー102のリクエストに応じて転用するために、乗客を伴って輸送中の自動運転車109cを予約するように構成されてもよいでしょう。

複数のセンサーとデータの統合

自動運転車両におけるセンサーデータの統合は、正確なローカライゼーション、環境認識、およびナビゲーションの実現に不可欠です。

センサーには、画像キャプチャセンサー、オーディオキャプチャセンサー、レーダーデバイス、ソナーデバイス、およびLidarデバイスなどが含まれます。これらのセンサーは、自動運転車両のコントローラーに接続され、車両の周囲の環境を正確に理解するために使用されます。

センサーデータの統合プロセスには、異なるセンサーモダリティからのデータを融合して統合されたセンサーデータ値を形成することが含まれます。この統合プロセスは、センサーからのデータ(例えば、Lidarデータ、カメラデータ、レーダーデータなど)を融合させ、自動運転車両の位置を決定するために使用されます。例えば、自動運転車両が特定の方向に移動している場合、ローカライザーは地理的位置を特定し、センサーデータを使用して建物の表面などの参照データと比較して地理的位置を決定します。

この統合されたセンサーデータは、自動運転車両が自律的に運転するために必要な正確な環境認識とローカライゼーション情報を提供します。センサーデータの統合により、自動運転車両は、静的オブジェクトや動的オブジェクトを正確に検出、分類、および予測することができ、安全かつ効果的なナビゲーションと衝突回避を実現します。

図3Aは、車両に実装されるセンサーなどのコンポーネントの例を示すものです。センサーには、画像キャプチャセンサー340(例えば、あらゆるタイプの光キャプチャデバイスやカメラ)、音声キャプチャセンサー342、レーダーデバイス348、ソナーデバイス341、およびLidarデバイス346などが含まれます(慣性計測ユニット、または”IMU”、グローバルポジショニングシステム(”GPS”)センサー、ソナーセンサーなど、表示されていない他のセンサータイプやモダリティもあります)。また、取り外し可能なバッテリー343は、交換が容易になるように構成されており、バッテリー343の充電が必要なためのダウンタイムを削減または無視できるようにしています。

多数搭載されているコントローラの中で、特に知覚エンジン366は、Lidarデータ346a、カメラデータ340a、レーダーデータ348aなど、1つ以上のソースからのセンサーデータおよびローカルポーズデータを受信するように構成されています。知覚エンジン366は、歩行者、自転車乗り、犬、他の車両などの外部オブジェクトを検出し、分類することができます。これらの外部オブジェクトの分類に基づいて、外部オブジェクトは動的オブジェクトまたは静的オブジェクトとしてラベル付けされます。

例えば、木として分類された外部オブジェクトは静的オブジェクトとしてラベル付けされ、歩行者として分類された外部オブジェクトは静的オブジェクトとしてラベル付けされます。静的とラベル付けされた外部オブジェクトは、マップデータに記述されているかもしれませんし、そうでないかもしれません。静的としてラベル付けされる可能性が高い外部オブジェクトの例には、交通コーン、道路を横断するセメントバリア、車線閉鎖標識、道路に隣接する新設の郵便受けやゴミ箱などがあります。動的としてラベル付けされる可能性が高い外部オブジェクトの例には、自転車、歩行者、動物、他の車両などがあります。外部オブジェクトが動的としてラベル付けされ、さらにその外部オブジェクトについてのデータが、分類タイプに関連する典型的な活動レベルと速度、および行動パターンを示す場合があります。外部オブジェクトに関するさらなるデータは、外部オブジェクトの追跡によって生成されることがあります。

したがって、分類タイプは、例えば、外部オブジェクトが計画された経路を走行する自動運転車の邪魔をする可能性があるかどうかを予測または判断するために使用されることがあります。例えば、歩行者として分類された外部オブジェクトは、最大速度および平均速度(例:追跡データに基づく)と関連付けられ、歩行者の速度と自動運転車の速度を比較して、衝突が起こりそうかどうかを判断することができます。

遠隔操作者の介入による安全性の向上

本発明で開示されるシステム、デバイス、および方法は、自律走行車両のナビゲーションに影響を与えるための軌道の修正(例えば、遠隔で)を開始するように構成されています。ドライバーレス車両の開発に対するさまざまなアプローチは、主に従来の車両を自動化することに重点を置いています。従来のドライバーレス車両は、一部の条件で安全な運転機能を実行しますが、車両コントローラが乗員の安全を危険にさらす可能性のある特定の問題を解決できない場合、ドライバーが制御を引き継ぐ必要があります。

遠隔操作システムは、自律走行車両が遠隔操作のリクエストを行う場合、自律走行車両サービスプラットフォームが遠隔操作サービスを提供するように構成されています。例えば、図1において、自律走行車両コントローラが、道路122のポイント191でパス124を遮るオブジェクト126を検出し、自律走行車両109dが比較的高い確実性で安全に通過できるパスまたは軌道を自律走行車両コントローラが確認できない場合、自律走行車両コントローラは遠隔操作サービスのリクエストメッセージ105を送信します。その応答として、遠隔操作コンピューティングデバイス104は、遠隔操作者108から障害物126を回避するための行動コースに関する指示を受け取ります。

これにより、自律走行車両は非定常的な運用状態から移行することができ、例えば、遠隔操作者によって指定された操作を実行することによって条件を解決するために案内された軌道を走行することができます。したがって、自律走行車両は運転中に発生する可能性のあるイベントや問題を解決する間、遅延する可能性がある自律走行車両の安全性を高めるために、遠隔操作サービスを呼び出すことができるのです。

図10は、遠隔操作者が経路の操作を行う際の遠隔操作者インターフェースの例を示すものです。遠隔操作者マネージャー1007は、潜在的な障害物や計画者の信頼度が低いエリアに接近する自律走行車両の経路を、遠隔操作者1008が事前に確認できるようにするために必要なデータを受信します。

例を挙げると、自律走行車両が接近している交差点が問題があるとタグ付けされている場合があります。そのような場合、ユーザーインターフェース1010は、走行経路の計画者によって生成された多数の軌道によって予測された経路1012を通過する対応する自律走行車両1030の表現1014を表示します。また、他の車両1011や、計画者に十分な混乱を引き起こす可能性のある歩行者などの動的オブジェクト1013も表示されます。ユーザーインターフェース1010は、遠隔操作者1008に現在の速度1022、速度制限1024、および現在バッテリーにある充電量1026も提示します。ある例において、ユーザーインターフェース1010は、自律走行車両1030から取得したセンサーデータなど、他のデータも表示することがあります。

他のケースとして、計画者1064が検出された未識別オブジェクト1046に関係なく、計画者によって生成された経路1044と一致する多数の軌道を生成したとします。計画者1064はまた、候補となる軌道のサブセット1040を生成するかもしれませんが、この例では、現在の信頼度を考慮して進行することができません。計画者1064が代替経路を決定できない場合、遠隔操作リクエストが送信される可能性があります。この場合、遠隔操作者は、遠隔操作に基づく経路1042と一致する自律走行車両1030の移動を容易にするために、候補となる軌道1040の1つを選択することができます。

自動走行車両フリートの効率的な管理

この発明で開示されるシステムは、自律走行車両サービスプラットフォーム、通信レイヤー、および自律走行車両コントローラーを含む統合されたアーキテクチャを通じて、車両フリートの監視、制御、および運用を実現します。主要な機能として、自律走行車両のリアルタイムの監視、イベント発生時の適切な対応策の決定、および車両間の通信を通じた情報の共有が挙げられます。また、自律走行車両の位置決め、経路計画、障害物回避などのための高度な認識エンジンと計画エンジンを備えています。

図16は、自律走行車両フリート最適化マネージャーを実装する自律走行車両フリートマネージャーの例を示す図です。1600は、道路網1650内を移動する自律走行車両1630のフリートを管理するように構成された自律走行車両フリートマネージャー1603を示しています。

自律走行車両フリートマネージャー1603は、遠隔操作者コンピューティングデバイス1604を介して遠隔操作者1608に接続され、また、フリート管理データリポジトリ1646にも接続されています。自律走行車両フリートマネージャー1603は、ポリシーデータ1602および環境データ1606、その他のデータを受信するように構成されています。さらにフリート最適化マネージャー1620が輸送リクエストプロセッサー1631を含むことが示されており、それはさらにフリートデータ抽出器1632および自律走行車両ディスパッチ最適化計算機1634を含んでいます。

輸送リクエストプロセッサー1631は、自律走行車両サービスを要求しているユーザー1688などからの輸送リクエストを処理するように構成されています。

フリートデータ抽出器1632は、フリート内の自律走行車両に関連するデータを抽出するように構成されています。各自律走行車両に関連するデータはリポジトリ1646に格納されます。例えば、各車両のデータには、メンテナンスの問題、予定されたサービスコール、日々の使用状況、バッテリーの充電および放電率、その他のリアルタイムで更新される可能性のあるデータが含まれ、これらのデータはダウンタイムを最小限に抑えるために自律走行車両のフリートを最適化する目的で使用されます。自律走行車両ディスパッチ最適化計算機1634は、抽出されたデータを分析し、フリートの最適化された使用を計算するように構成されており、次にディスパッチされる車両が、例えばステーション1652から、自律走行車両サービスのための最小の旅行時間およびコストを集計できるようにします。

このシステムは、自律走行車両が遭遇する可能性のあるさまざまなシナリオや条件に対応するために、詳細なセンサーデータと環境データを利用します。また、遠隔操作者が介入し、車両の経路計画に影響を与えることができるインタフェースも提供します。これにより、車両が独自に解決できない複雑な状況や、安全性を確保するための特別な操作が必要な場合に、人間の判断が組み込まれます。

効率的なフリート管理には、車両の状態監視、メンテナンスニーズの予測、最適な経路の選択、およびエネルギー利用の最適化が含まれます。このシステムは、自律走行車両が提供するサービスの信頼性と効率を高めることを目的としており、車両の稼働時間を最大化し、運用コストを最小限に抑えるための戦略的な意思決定をサポートします。

全体として、この特許は、自律走行車両フリートの運用を改善するための包括的なソリューションを提供し、将来の交通システムにおけるこれらの車両の統合と利用のための基盤を構築しています。

図18は、自律走行車両通信リンクマネージャーを実装する自律走行車両フリートマネージャーを示す図です。道路網1850内を移動する自律走行車両1830のフリートを管理するように構成された自律走行車両フリートマネージャー1803を示しており、この道路網は「通信低下地域」1880として特定された地域で通信アウトが発生しています。自律走行車両フリートマネージャー1803は、遠隔操作者コンピューティングデバイス1804を介して遠隔操作者1808に接続されています。自律走行車両フリートマネージャー1803は、ポリシーデータ1802および環境データ1806、その他のデータを受信するように構成されています。さらに自律走行車両通信リンクマネージャー1820が環境イベント検出器1831、ポリシー適応決定器1832、および輸送リクエストプロセッサー1834を含むことが示されています。環境イベント検出器1831は、自律走行車両サービスが実施される環境内の変化を指定する環境データ1806を受信するように構成されています。

例えば、環境データ1806は、地域1880の通信サービスが低下しており、これが自律走行車両サービスに影響を与える可能性があることを指定します。ポリシー適応決定器1832は、そのようなイベント(例えば、通信の喪失中)に輸送リクエストを受信する際に適用するパラメーターを指定します。輸送リクエストプロセッサー1834は、通信が低下した状況を考慮して輸送リクエストを処理するように構成されています。この例では、ユーザー1888が自律走行車両サービスを要求しています。さらに、輸送リクエストプロセッサー1834には、通信が悪いために生じる問題を避けるために自律走行車両がディスパッチされる方法を変更するための適応されたポリシーを適用するロジックが含まれています。

通信イベント検出器1840には、ポリシーダウンロードマネージャー1842および通信設定(”COMM-configured”)AVディスパッチャー1844が含まれています。ポリシーダウンロードマネージャー1842は、通信低下地域1880を考慮して自律走行車両1830に更新されたポリシーを提供するように構成されており、更新されたポリシーは、自律走行車両がその地域に入った場合に地域1880を迅速に抜け出すためのルートを指定するかもしれません。例えば、自律走行車両1864は、地域1880に入る直前に更新されたポリシーを受信するかもしれません。通信の喪失時、自律走行車両1864は更新されたポリシーを実装し、地域1880から迅速に抜け出すためのルート1866を選択します。COMM-configured AVディスパッチャー1844は、地域1880全体でピアツーピアネットワークを確立するためのリレーとして構成された自律走行車両を駐車するためのポイント1865を特定するように構成されます。したがって、COMM-configured AVディスパッチャー1844は、ピアツーピアアドホックネットワークで通信タワーとして機能する目的で、乗客なしで自律走行車両1862を場所1865に駐車するようにディスパッチするように構成されています。

通信およびデータ処理の最適化

本発明の主な目的は、遠隔操作を通じて、自律走行車両がナビゲーションする際の軌跡を修正することです。このプロセスには、様々なセンサーや通信手段を使用して、自律走行車両の状況を正確に把握し、必要に応じて軌跡を調整することが含まれます。遠隔操作者は、車両の現在の状態や環境データを基に、最適な経路や行動を選択して、車両が安全に目的地に到達できるよう支援します。

このシステムは、自律走行車両が直面する可能性のある様々な状況に対応するための柔軟性と、緊急時や計画外のイベントが発生した際に迅速に対応する能力を提供します。例えば、予期せぬ障害物が検出された場合や、特定の道路状況での自律走行システムの信頼性が低下した場合など、遠隔操作者が介入して車両の軌跡を修正することができます。

図32は、自律走行車両アプリケーションを示す図です。自律走行車両サービスプラットフォーム3201によって、ユーザー3202を自律走行車両3230を介して輸送する手配をする、自律サービスアプリケーション3240が構成されたモバイルコンピューティングデバイス3203を示しています。

輸送コントローラー3242は、ユーザー3202がユーザーの位置から目的地までの輸送を手配できるよう、自律走行車両および/または自律走行車両フリートに関連する操作を受け取り、スケジュールし、選択し、または実行するように構成されています。例えば、ユーザー3202はアプリケーションを開いて車両3230を要求することができます。アプリケーションは地図を表示し、ユーザー3202は目的地を示すためにピンをドロップすることができます。または、アプリケーションは近くの指定されたピックアップ場所のリストを表示するか、ユーザーがアドレスまたは名前で目的地を入力するためのテキストエントリーフィールドを提供してもよいでしょう。

自律走行車両アプリケーション3240には、ユーザー識別コントローラー3246も含まれており、これはユーザー3202が自律走行車両3230に近い地理的領域または近傍にいることを検出するように構成されています。場合によっては、ユーザー3202は自律走行車両3230が使用のために近づいているときにそれを容易に認識または識別できないかもしれません(例えば、都市環境で一般的なトラック、車、タクシー、およびその他の障害物のため)。一つの例では、自律走行車両3230は、ユーザー3202の自律走行車両3230に対する相対的な位置を決定するために使用されるRF信号および信号強度の相対的な方向を使用して、ユーザー3202の空間的位置を通信および/または決定するために無線通信リンク3262(例えば、WiFiまたはBluetooth®、BLEを含む、などのラジオ周波数(「RF」)信号を介して)を確立することができます。さらには、自律走行車両3230は、例えば、GPSデータなどを使用してユーザー3202のおおよその地理的位置を検出することができます。モバイルコンピューティングデバイス3203のGPSレシーバー(図示されていない)は、GPSデータを自律走行車両サービスアプリケーション3240に提供するように構成されるかもしれません。したがって、ユーザー識別コントローラー3246はリンク3260を介してGPSデータを自律走行車両サービスプラットフォーム3201に提供することができ、その後、それはその位置を自律走行車両3230にリンク3261を介して提供することができます。その後、自律走行車両3230は、ユーザーのGPSデータを車両のGPS由来の位置と比較することによって、ユーザー3202の相対的な距離および/または方向を決定することができます。

図37は、遠隔操作サービスのコマンドを容易にするユーザーインターフェースを実装する遠隔操作者マネージャーの例を示す図です。ネットワーク3706を介して自律走行車両3730と通信的に接続され、遠隔操作者との対話を容易にするユーザーインターフェース3701を実装するように構成された遠隔操作者マネージャー3707を示しています。

イベントロケーション3703が、1台以上の自律走行車両が軌跡を決定する際に複雑さのレベルを経験する可能性がある地理的位置またはその地域を示しています。複雑さのレベルは、値(例えば、数値、確率値、またはその他の適切な値)または値の範囲として表現され、軌跡の決定の精度が遠隔操作サービスで支援されるかどうかを指定することができます。ここでは、イベントロケーション3703は、道路網3710(例えば、参照または地図データ、地形データ、交通データなどに基づく)と関連付けられているとしてユーザーインターフェース3701に描かれ、イベントロケーション3703が、イベントロケーション3703によって影響を受ける可能性のある相対的に多くのルートや軌跡を通る道路セグメントのサブセットの交差点または近傍に位置していると示されています。

さらに、イベントロケーション3703は、交通事故や、自律走行車両3730における軌跡生成とルート計画が特定の複雑さや難しさのレベルを持つ可能性があることを示す(例えば、アラートデータに基づく)兆候など、イベントが発生する確率がある場所、または発生している場所かもしれません(例えば、特定の時間帯には、明るい日光が適切なセンサー操作を妨げるかもしれません)。遠隔操作者マネージャー3707は、自律走行車両がイベントロケーション3703をナビゲートするのを支援する遠隔操作サービスを提供することができます。

遠隔操作者マネージャーは、遠隔操作者が自律走行車両のナビゲーションを支援し、ガイドするために、ユーザー入力を受け付け、処理するユーザーインターフェースを提供します。ユーザー入力には、ナビゲーションポイントの設定、境界の確立(引き寄せる境界または反発する境界)、および特定の軌跡の選択などが含まれ、これらは自律走行車両がイベントロケーションを迂回するか、適切にナビゲートするのを支援します。

さらに、ユーザーインターフェースを通じて遠隔操作者は、自律走行車両に対して特定のアクション(例えば、特定の道路での左折や右折など)を指示することができ、これらのアクションは自律走行車両が安全かつ効率的に目的地に到達するための軌跡を生成または修正するのに役立ちます。遠隔操作者マネージャーは、これらのユーザー入力を基に、自律走行車両に対する具体的な指示データを生成し、送信します。

図38は、遠隔操作サービスのコマンドを容易にするユーザーインターフェースを備えた遠隔操作者マネージャーの別の例を示しています。この図では、遠隔操作者マネージャー3807が、自律走行車両3830との対話を容易にするユーザーインターフェース3801を実装するように構成されており、自律走行車両の移動方向の先行面からのビュー3810(例えば、3Dビュー)を提示することができます。

遠隔操作者マネージャー3807は、イベントに関連する情報を基に、遠隔操作者に対して行動選択肢3841、メッセージログ3841a、および自律走行車両(”AV”)識別子3881aを提示することができます。例えば、「不動アラート」を示すメッセージ3843aがあり、これは自律走行車両3830が1つ以上のイベント(例えば、信頼度レベルの範囲に関連する)に遭遇し、遠隔操作サービスが呼び出される可能性があることを示します。また、遠隔操作者マネージャー3807が通信の損失を示すメッセージ3843bを表示し、通信が再確立されたことを示すメッセージ3843cや、自律走行車両3830が安全停止回復モードまたはルーチンを実装していることを示すメッセージ3843dを生成することもできます。

さらに、遠隔操作者は、自律走行車両3830がシステムの適切な動作を検証するための自己テストルーチンを開始するユーザー入力3831aや、1つ以上のセンサーや他のコンポーネントに対する自己校正プロセスを実行するユーザー入力3832a、または通信の損失後および安全開始操作前にセンサーデータの再生を行うユーザー入力3833aを選択して実行することができます。

シミュレーター3840は、仮想環境内での仮想自律走行車両3830aとして自律走行車両3830の操作可能性をシミュレートするように構成されています。このシミュレーションを通じて、遠隔操作者マネージャー3807や遠隔操作者とユーザーインターフェース3801の相互作用など、自律走行車両サービスプラットフォームの他の機能の検証とシミュレーションが可能です。

遠隔操作者マネージャー3807は、例えば、センサーデータを境界ボックス3863として描写することで、物理環境の表現の内容を調整するための視覚化データを調整することもできます。これにより、ビュー3810を形成するためにメッセージデータ3819を介して送信されるデータの量を減らすことができます。また、開発者や乗客などのユーザー3802が、コンピューティングデバイス3803(例えば、モバイルコンピューティングデバイス)を介してメッセージデータ3819を生成したり、自律走行車両3830にそのようなデータを生成させたりすることも可能です。

図38では、遠隔操作者マネージャー3807が、遠隔操作サービスのコマンドを実行し、自律走行車両のナビゲーションを支援するためのインターフェースと機能を提供することが強調されています。これにより、遠隔操作者は、自律走行車両が直面する様々なイベントや障害物に対処し、安全かつ効率的に目的地へとナビゲートするための適切な指示やアクションを提供することができます。

図39は、テレオペレーションサービスコマンドを促進するためにユーザーインターフェースを実装するよう設定されたテレオペレーターマネージャーの別の例を示す図です。テレオペレーターマネージャー3907が、ネットワーク3906を介して自動運転車3930と通信的に接続され、テレオペレーターとのやり取りを促進するためにユーザーインターフェース3901を実装するように設定されていることを示しています。例示された例では、テレオペレーターマネージャー3907は、ユーザーインターフェース3901を介して、物理環境の一部として感知された環境の特定の部分に関連する特定のビュー3910(例えば、3Dビュー)を提示するように設定されています。この例において、ビュー3910を表すデータは、テレオペレーションコマンドを提供するためにテレオペレーターに通知されるために、自動運転車から送信されます。

シミュレーター3940は、仮想環境内の仮想自動運転車3930aとして自動運転車3930のセンサーの動作可能性をシミュレートするように構成される場合があります。このようにして、仮想自動運転車3930aはシミュレートされたメッセージデータ3819aを生成することができます。シミュレーター3940はまた、テレオペレーターマネージャー3907の機能、ユーザーインターフェース3901とのテレオペレーターの相互作用、および自動運転車サービスプラットフォームの他の機能をシミュレートするように構成されます。

この特許発明の主なポイントは、自動運転車両の軌道修正のためのテレオペレーションシステムと方法に関連しています。特に、自動運転車が直面する様々なイベントや状況に対処するために、テレオペレーターが介入し、軌道修正やナビゲーションの指示を提供できるようにするシステムを提案しています。このシステムは、自動運転車から送信されるテレオペレーションメッセージを受信し、そのメッセージ内で指定されたイベントに関連するデータを検出し、それに応じた一連の行動を識別することを含みます。これらの行動はシミュレートされ、対応するランクやシミュレーション値が計算され、テレオペレーターのコンピューティングデバイスのディスプレイに可視化データとして提示されます。

テレオペレーターは提示された行動の中から選択し、選択された行動を自動運転車に伝達します。これにより、自動運転車が独立して解決できない問題や困難な状況に対応するための追加的なサポートを提供することにより、自動運転車の安全性と効率を向上させることです。テレオペレーションの介入により、自動運転車はより複雑な環境や予期せぬ障害物、通信障害などの特定の状況での運転を改善できるようになります。

本発明の活用は、自動運転技術の適用範囲と信頼性の拡大に寄与すると予測されます。具体的な予測としては、以下のような側面が考えられるでしょう。

1.複雑な環境下での自動運転の実現
都市部や交通量が多いエリアなど、複雑な環境下でも、テレオペレーションによる介入が可能になることで、自動運転車両の運用範囲が広がります。これにより、現在は人間のドライバーが必要とされるような状況でも自動運転車の利用が可能となるでしょう。

2.緊急時の迅速な対応
自動運転車両が予期せぬ障害物や事故に直面した際、テレオペレーションによる即座の対応が可能となります。これは、事故の回避や、緊急事態における迅速な対処により、安全性の向上に直結します。

3.自動運転車両の運用効率の向上
テレオペレーションによる軌道修正と指示の提供は、自動運転車両のルート選択や運転効率の最適化に役立ちます。これにより、目的地までの所要時間の短縮や、エネルギー消費の削減が期待できます。

4.自動運転サービスの信頼性向上
テレオペレーションシステムの導入により、自動運転車両の運用における信頼性が向上します。特に、人間の監視と介入が可能であることは、一般の利用者や規制当局に対する自動運転技術の信頼性を高める要素となるでしょう。

5.自動運転車両の適用範囲の拡大
自動運転車両の安全性と信頼性が向上することで、物流や公共交通など、新たな分野での自動運転車両の活用が進むことが予測されます。特に、物流業界では、遠隔操作による車両管理が効率的な運送業務の実現に貢献する可能性があります。

発明の名称

Teleoperation system and method for trajectory modification of autonomous vehicles

出願番号

US14/932963

特許番号

US9507346B1

出願日

2015年11月4日

登録日

2016年11月29日

出願人

Zoox Inc.

発明者

Jesse Sol Levinson 他
国際特許分類

B60W30/09
G05D1/0214
B60W30/0956
B60W60/0027
G05D1/0011
G05D1/0044
G05D1/0276
G05D1/0291
G06F3/04842
G06F3/04847
G06F3/1454
G06F3/147
G09G5/14
G09G5/363
H04W4/44
B60W2420/403
B60W2420/408
B60W2554/00
B60W2554/20
B60W2554/4026
B60W2554/4029
B60W2554/4041
B60W2554/80
B60W2556/50
B60W2710/18
B60W2710/20
B60W2710/30
G01S13/865
G01S13/867
G01S13/87
G01S2013/9316
G01S2013/9322
G01S7/4808
G09G2354/00
G09G2360/08
G09G2370/16
G09G2380/10

経過情報

本権利は抹消されていない(満了日:2035/11/4)