働き方や集客システムが多様化する現代、個人事業主や小さな店舗が独自のPR展開で事業を拡大するケースを見かけることも多い。
また、「顧客をファンにする」というマインドも浸透し始めてきた頃だろう。これらの時流にフィットする、オリジナルで安価な配信・アプリシステムを提供するのが、今回インタビューをさせていただいたLITEVIEW社だ。社名を掲げたサービス「LITEVIEW」のご紹介と共に、仕組みづくりの土台となった創業者の過去の特許事例もあわせて紹介していただく。
新しいものを生み出す発想のルーツをぜひご覧ください。
Lee KUNWOO
韓国の大学を卒業後、Samsung Electronicsのエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、日本での駐在や東京工業大学大学院を経て、日本で起業しビジネスを行う。
現在は、コンテンツを生み出すクリエイターの方たちを応援したいと強く思い、「フルタイムのクリエイターの方たちを増やしていきたい」という想いのもとLITEVIEWを日本発の新しいグローバルサービスにしていくために日々活動を行っている。
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クリエイターの庭、「LITEVIEW」
推し活というワードが市民権を十分に得た今、「ファンコミュニティ」に入っている人は若者はもちろん、世代を超えて少なくないだろう。アーティストや芸人などの芸能人や「お気に入りの店舗・ブランド」でちょっとお安く買い物ができる限定クーポンが配信される会員サイトなど、ファンコミュニティの対象や形態は今や多岐に渡る。
テキスト/画像情報の発信だけではなく、動画配信を用いての双方向かつ情報量の多い発信も注目を浴びているとなれば、今回ご紹介していただく「LITEVIEW」を知らないのはあまりに勿体ない。
LITEVIEWは、「ワンクリックで提供されるOTT(Over The Top)サービス」だ。
OTTとはつまり、通信事業者やプロバイダを介さずに音声や動画コンテンツを発信する、webサイトと自社の配信アプリを繋げられるサービス」である。YouTubeや音楽配信のSpotifyなど、通信社会に今やなくてはならないこれらもOTTサービスの一種であるが、LITEVIEWの魅力はそういった既存のサービスの上に自社コンテンツを載せるのではなく、オンリーワンの自社・自分だけのアプリが安価に作成できるという点だ。
「こういったサービスにおいて、マーケットプレイスタイプのものは多いですが、収益にダイレクトにつながらないケースも目立ちます。コアファンをストックできる自社オリジナルのプラットフォームにはニーズはありますが、その分費用がかかるんです。大体数千万から数億はかかりますね。それを量産型にすることで200分の1に押さえたのが弊社サービスです」と創業者のLee氏。
既存のサービス群を俯瞰し、その傾向を「バックエンド的な動きは同じ」と見る。
「クラウドサーバーがあって、コンテンツをのせて、それに対して会員データベースを置く…みたいな、大きな仕組みは共通しています。再生プレーヤーがあって、ログインがあって、そこにセキュリティ機能があって。それから、コメントなどのコミュニケーション機能があるなど、ユーザーが表から見える部分も大体同じ構造です。もちろんユーザーにとってもそれが共通しているからこその使いやすさはありますが。そういった土台を作って、見た目だけを入れ替えて量産化できるようにしたのがLITEVIEWで、その量産化の部分に技術があります。」
一般的なECサイトであれば、自身のキャンプを作るサービスはすでに複数ある。しかし、その多くがWEBベースでとどまっている。アプリまで提供している先駆者は間違いなく同社だ。
「アプリと連携させるのも、弊社の技術力が評価いただける部分かなと考えます。アプリを持つクリエイターたちは自社にエンジニアを置かなくてもワンクリックで自分たちオリジナルのアプリを作成できて、コアファンに広めることができます。プランは複数ありますが、一番シンプルなものであれば登録と同時にすぐアプリを作成できます。完全にオリジナルだと少しかかりますが、」と日数を訪ねると、なんとそれでも営業日3日というから驚きのスピード感である。
その手軽さから、用途はテレビ番組のファンクラブや、資格取得のためのオンラインサロン、利用は個人クリエイターから企業までと幅広い。
「たとえばテキストだけではなくライブや動画といったリッチコンテンツを作りたいとなったときに、1万人ほどの顧客のためにアプリを1から作ることは、よほど余裕のある企業でないと難しいでしょう。人数・費用対効果を考えると初期費用に数千万もかけるのはかなりのハードルのはずです。そこをLITEVIEWでは、費用を抑えて、トッププレイヤーさんたちと同じものを作れるソリューションを提供できます。」利用傾向としては数千~数万の会員数で運用するBtoBでの提供と、少数のコアファンに対して動く個人クリエイターへの提供、両面で本サービスは活用の可能性をぐんぐんと伸ばしている。
ビジネススキーム自体はすでに存在していたものを、とにかく量産型に設計できたのがこのサービスの技術的・着眼的に重要な要素であるが、そのためのLee氏の発案力・技術力というのは過去のアカデミックな学びの中にある。

大学発ベンチャーの特許技術
LITEVIEW社のスタートは学生ベンチャーとして、大学の博士論文のためのアカデミックな目的のもとに始まった。そのときに開発・特許取得したのが、色の配列で情報を表現する、ロバスト・インデックス・コードに関する技術だ。
「端的に言うと、画像をDVDメディアのように活用しましょう、という技術です。1枚の画像にいろんな情報をインベットする。その際に、情報を劣化しづらい形で画像に保存し、WEB2.0の主流だったデータベースシステムではなく、書き下ろしの画像自体に情報を埋め込んで保持・手元で閲覧できる状態にするというものです。」
サーバーに保存して、センターにアクセスして情報をひっぱってくる形ではなく、画像自体に埋め込むことで、情報の価値を高める技術だ。
前職ではアメリカや中国での特許技術を取り扱っていたLee氏は、当時の特許取得への動きについてこう振り返る。
「大学の特許を取り扱う機関に支援してもらったが、今後しっかり知財を持った方が良いという判断のもとに特許取得に踏み切りました。ただ、論文を出す上では問題ない技術であっても、実用化・商標化するにあたっては壁があります。商標化するためには、画像の劣化という課題と向き合う必要があります。論文ベースでは劣化のリニューアル性がないところを、どういう仕様でどこまで保持するのかを決めるところから、検討が必要になりますから。」

IOT分野における「知財」をこう見る
特許の重要性は誰より実感しているけれど、と前置きしたうえで、さらにLee氏はLITEVIEWサービスでの特許取得についてこう見据える。
「特許があるからといってビジネスモデルを壊さず守れる時代でもありません。知財としての権利を守りつつ、特許が100%自分たちのビジネスモデルを守ってくれるわけではないですから、ビジネス特許を出し(出願)つつ、ビジネスとして勝負はビジネスドリブンで見つけていなければならないという考えです。今後も、何かしらのコアの部分は知財として出したいと考えています。この分野は進歩性・新規性でハードルが高いので、どのように特許として持っていくか、どこが価値とできるかというストーリーテリングを検討しているところです。」
元々知財周辺のリサーチャーだった経歴もある背景から、とりあえず申請してみる、という動きではなく、周到に慎重に自社の技術を見極める様子が印象的だった。
「コンテンツ業界のメディアを定期的に見て、トレンドに遅れないようにがんばっているところですよ」という言葉は謙遜のみならず、生み出した技術を取り巻く環境に広い視野で注目する、発明家の視点それそのものなのだろう。
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