AR技術を活用した新しいスポーツのカタチ


AR技術を活用した新しいスポーツのカタチ

「テクノスポーツで世界に夢と希望を与える」というビジョンを掲げ、日本発のARスポーツ「HADO(ハドー)」を展開する株式会社meleap(メリープ)。

AR(拡張現実)技術とITを融合させ、ゲームとスポーツの要素を両方併せ持ったまったく新しいジャンルのコンテンツを創出した。
今でこそARを駆使した様々なサービスやエンターテインメントが身近な存在となったが、いちはやくその可能性に着目し、早い段階で開発に挑んだことで、ARスポーツの先駆けとして注目されるように。

今回は同社代表の福田浩士氏に、そのアイデアの源と今後の展望を伺った。

PROFILE

福田 浩士

HIROSHI FUKUDA

株式会社meleap CEO

東京大学大学院卒業後、株式会社リクルートに就職。2014年に株式会社meleap apを設立。独自のAR技術を活用しARスポーツ「HADO」を作りだす。

2016年からはAR・VR初の大会『HADO WORLD CUP』も開催。サッカーを超えるスポーツ市場の創造を目指す。

誰もが夢見た魔法のような世界を現実に

頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着し、まるでアニメのヒーローが繰り出す必殺技や魔法のように光り輝やく“エナジーボール”を放つ対戦型ARスポーツ「HADO」。

2016年の発足以来、言語や文化の壁を飛び越え、現在36カ国以上の国々でアリーナを展開。
運動能力や体格、年齢や性別などにとらわれず誰もが簡単にプレイできるとあって、競技人口も着実に増加中。
そんな世界中から熱い視線が注がれる「HADO」を生み出したのが、株式会社meleapの福田浩士代表だ。

「きっと誰もが小さい頃に“魔法を使ってみたい” と思ったことがあるのではないでしょうか。AR技術を駆使すれば、実際に魔法のような体験ができるのでは、と思いついたことがきっかけです」。
子どもの頃に抱いた願望を叶えてみたい。
そんな想いからmeleapを立ち上げ、「HADO」の開発をスタートさせた。

創業前、福田氏には「HADO」以外にARカードゲームやARペットなどARを切り口とし様々なたアイデアがあったという。

「会社設立にあたり、いろいろな人たちと自分が持つ様々なアイデアを共有するなかで、一番反応が良かったというのが“HADO”のアイデアだったんです。“かめはめ波が実際に出せたら楽しいよね”と一言いうだけでイメージを理解してくれる。きっと誰しもがやってみたいことでもあるし、これは非常に共感を呼びやすいアイデアだなと思い、会社の主軸を“HADO”に絞ることにしました」。

会社を立ち上げた2014年頃はまだ、AR技術の黎明期。かねてよりAR・VR技術は大手企業が研究開発を進めてはいた分野ではあるが、詳しい技術者や研究者はほとんどいなかったという。
「当時はまだまだ世の中に知見が少なくて。でも逆に言えば誰もがいちからスタートできる環境でもありました。数年後にはきっとARが身近な未来がやって来ているとは思っていたので、そのタイミングにアイデアを落とし込めていたら、きっと世間の反応も良いはず。
今こそ進めるべきタイミングだと考え、創業メンバーにエンジニアを迎え、僕自身も様々な技術調査をしながら、共に開発を進めていきました」と福田氏。

そうして、いちはやくAR技術の可能性に着目し、開発が進むこととなったが、「ARスポーツ」という新しいジャンルの確立には約2年の歳月がかかった。

AR技術ゼロの開発スタートから、特許取得へ。

「2014年頃は確立したARデバイスがまだなくて。なので、開発を進める上でまず悩んだのは、ハードウエアを作るか、作らないのか、ということでした。個人的にはハードウエア開発に興味があったのですが、開発費用や期間なども莫大となり、リスクが大きく成功することは難しい、と周囲にも止められて」。

その結果、スマートグラスやスマートウォッチなど様々なデバイスを検証し、スマートフォンを採用することに。

「2014年から2016年までの期間は、スマートフォンの技術が非常に急速に進化した時期でもありました。CPUやカメラの精度、ARに関連するシステムのレベルも大きく飛躍したこともあり、自分たちは既存の開発技術を利用してサービスの開発に専念することにしました」。

そうして、腕にアームセンサーとしてスマートフォンを装着し、頭部に体の動きや位置を検出するヘッドマウンドティスプレイを装着する現在のスタイルへ。

ヘッドマウントディスプレイを装着する人の動きに合わせて、現実世界の映像情報に仮想世界の映像情報をリアルタイムで融合させる独自の技術を開発し、臨場感のある表現を可能とした。

ユーザーテストを繰り返し、完成形が見えてきた段階で特許申請を開始。
「もともとハードウエアを作ってみたかったこともあり、知財商材に特許が必要という考えがもともとあって。なので、自然と取得できるものは取っておこうと思っていました」と福田氏。

特許の取得は資金調達の上でも役立ったという。
「資金調達をする際には必ず“競合が出てきたらどうしますか?”と質問があるので、特許を持っていることで競合に有利だと投資家に対してアピールにもなります。また、他に同じようなサービスやコンテンツが出てきた時の交渉材料にもなるので、取得したことでメリットは大きいです」。
実際、海外での権利侵害が発見されたことが何回かあったという。

「中には“HADO”の名前や僕達が所有する画像も堂々と使われたことも。明らかに侵害されているとわかる時は、訴えを起こしやすいのですが、技術的なところまで踏み込むと議論が必要になるのですが、なるべく裁判まで行かないように交渉するなどして解決してきました」と振り返る。
様々な交渉材料に活用しているが、特許技術の使用料などで具体的な売り上げを取る方針は今のところはないという。

「基本的には弊社の“HADO”というコンテンツをそのまま販売することに専念したい。新しい特許を積極的に取りに行く、というよりも今のところは技術のアップデートに注力して行きたいです」。

「AR +スポーツ」という斬新な展開で、幅広いユーザーの獲得へ

今では、ARスポーツとして定着しつつある「HADO」だが、最初に「HADO」を世の中に発表したのはテーマパークのゲームアトラクションというかたちだったいう。

「システムが完成してユーザーの反応を見るために、テーマパークのアトラクションとして登場させましたが、このスタイルで果たして良いのか、と考えました。
単純なルールで誰もが気軽に体験できる“HADO”の個性を生かし、より多くの人に楽しんでもらえる提案のあり方を模索しました」。

例えば、男女の出会いの場や企業の研修などに活用できるコミュニケーションツールに、高齢者のレクリエーションやリハビリに、といろんな展開が想定できる。

また、家で楽しむ家庭用ゲームにするのか、店舗を訪れて楽しむ来店型ゲームにするのか、などターゲットや提供のあり方によってはプレゼンテーションが全く異なる。

福田氏は、様々なマーケティング調査を通して、遊戯に特化したゲームではなく、新たなスポーツとして提案することにした。

「スポーツであれば、教室やスクール、学校の部活動にも展開できるので事業拡大がしやすい。競技大会で勝ち抜けば世界のトップも夢じゃない、という目標も与えられる。“HADO”をスポーツとして提案することで、大人の方にも“第二の青春”も提案できるのでは、と考えました」。

幅広い層のユーザーを獲得することで、プレイヤーのレベルが向上し、スポーツとして成熟していくほどに、観戦者にとってもより魅力的なコンテンツになるはず、と考えたのだ。

事実、2016年のローンチ以来、見た目のキャッチーさや、目新しい分野でもあったことから “HADO”は世界中から注目を集めた。

しかし、福田氏はそれに満足しなかった。認知度は上げやすが、いかにユーザーを定着させるかがマーケティングの課題となった。
「現在は、利用目的に合わせた様々なプランを提供しています。例えば、商業施設の遊休スペースの有効活用や、専門施設やテーマパークなどに常設コンテンツとしての導入をできるように。また、販促イベントや地域行事などのイベントでの利用、社員研修や懇親会などの企業のチームビルディングに取り入れていただくなど、幅広い活用法を提案しています」。

ファンも応援でゲームに貢献できる、新しい仕組みを。

「今後の事業展開は、シンプルに“HADO”という競技を広めていくことが目標。プレーできる場所もプレーヤー人口も観戦者人口も増やして、プロダクトのブラッシュアップを進めていきたいです。目指すはサッカーを超える世界戦の開催です」と、福田氏は今後の展望を語る。

そして目標を達成する上で、いくつかのイノベーションが必要だという。

「例えば、選手だけが戦うのではなく、視聴者(第三者)もゲームに参加して一緒になって戦う新しい形式を提案しています。

現在、弊社のアプリを通して、観戦者が参加出来る応援システムをスタートさせていて、対戦中の好きなチームの好きなプレーヤーに“応援”を送ることで、ゲーム展開を有利にすることができるしくみを開発しました。こちらの技術は現在特出願中です。斬新なシステムを追加するなどして、いかにプレーヤーと観戦者を魅了していくか、というところがブラッシュアップしたいところです」。

さらに、今後は遠隔対戦が可能にしていきたいという。
「現在は対戦者同士が同じ場所でプレイするロケーションベースの競技スタイルですが、日本にいるチームとアメリカにいるチームと対戦できるようになれば、より競技に広がりができる。こうしたいくつかのイノベーションを実践していくことが必須だと思っています」。


Latest Posts 新着記事

ジェネリック業界の常識を変えるか――東和薬品が進める供給網再設計

いま東和薬品が見ているのは、価格競争より供給能力の壁だ 東和薬品の吉田逸郎社長は2026年5月14日の決算説明会で、特許満了医薬品の生産能力増強に向けた協業について、「まだ限定出荷もあり、需要に対する供給が追いついていない。生産量をまだ増やしていく必要がある」と述べ、さらなる協業拡大に意欲を示したと報じられている。東和薬品はすでにCDMOのアドラゴスファーマ川越、三和化学研究所との協業を進めている...

スタートアップの社運をかけた反撃――ビーサイズ対MIXIの深層

このニュースが重いのは、単なる特許訴訟ではないからだ ビーサイズがMIXIに対して特許訴訟で反撃した、という話が注目を集めたのは、単にスタートアップが大企業を訴えたからではない。 本当に重いのは、その前段に協業や出資の打診があり、その後に競合製品の参入が起きた、という流れが語られている点にある。 Business Insider Japanによれば、2019年にビーサイズはMIXI側と面談し、出資...

超大型新薬の失効で何が起きるのか――製薬株のジレンマの深層

2026年から始まるのは、単なる減収ではなく「評価の組み替え」だ 製薬株にとって特許切れは昔から避けられない宿命だった。 だが、2026年から2030年にかけての波が特に重いのは、失効するのが単なる主力品ではなく、企業価値を支えてきた超大型薬だからである。Optumは2026年を「大きな特許切れの始まり」と位置づけ、後発品やバイオシミラーの影響が本格化すると整理している。さらに業界分析では、202...

“もっと賢いAI”では足りない――Googleが示した信頼性向上の新ルール

いま問題になっているのは、AIが答えられるかではなく「なぜそれを信じるのか」だ 生成AIの進化で、文章を作ること自体はかなり当たり前になった。 要約もできる。説明もできる。比較も提案もできる。 だが企業でも一般ユーザーでも、最後にいつも残るのは同じ疑問である。 その答えは、なぜ信じていいのかという問いだ。 この点で、Googleが出願している特許はかなり示唆的だ。 Googleの公開特許 JP20...

日本特許取得で見えた、抗体創薬ビジネスの新しい競争軸

今回のニュースは、単なる知財取得の話では終わらない 英Fusion Antibodies plcは2026年5月11日、日本で特許を取得したと発表した。対象は特許出願番号2021-519644で、日本特許第7853096号として正式に登録されたという。特許名称は「Antibody Library and Method(抗体ライブラリおよび方法)」で、同社はこの権利が自社の抗体発見プラットフォームを...

3Dプリント時代の本当の可能性――MIT「Y-zipper」が示した答え

古い特許が突然“新技術”に見える瞬間がある 技術の世界では、新しさは必ずしも「最近考えついたもの」だけを意味しない。 むしろ、本当に面白いのは、昔は実現できなかった発想が、時代を経て突然現実味を帯びる瞬間である。MITが発表した3面ジッパー「Y-zipper」は、まさにその典型だ。MIT Newsによれば、この設計はMITのBill Freeman教授による約40年前の特許発想に着想を得ており、当...

“検索するAI”ではなく“見抜くAI”へ――Aconnect進化の本質

欧州特許対応は、単なる検索対象の追加ではない ストックマークの製造業向けAIエージェント「Aconnect」は、2026年4月30日、特許調査エージェントの調査対象に新たに欧州特許(EPO)を追加したと発表した。これまで対象だったのは日本特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、世界知的所有権機関(WIPO)の公報で、今回の対応によって、欧州企業の特許を含むより広範な先行技術調査やクリアラン...

“銀行を壊さないブロックチェーン”は広がるか――Swift連携特許を読む

今回の特許は、単なるブロックチェーン活用ニュースでは終わらない 株式会社Datachainは2026年5月1日、Swiftと連携したステーブルコインを用いた送金システムに関する特許登録が完了したと発表した。特許名は「ステーブルコインを用いた送金システム」、特許番号は第7850327号、登録日は2026年4月14日で、特許権者は株式会社Progmatと株式会社Datachainであると公表されている...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

大学発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る