特許売買が日経平均の乱高下で注目される


みなさん、特許が売買される市場をご存じでしょうか?

米国では比較的有名な市場として存在しますが、日本においてはまだまだ発展途上で例えば最近β版としてローンチしたIPマーケットなどがあります。

株式市場や不動産市場といった有形資産の取引は、誰もが知るところですが、最近では無形資産の取引が注目を集めています。その中でも、特許をはじめとする知的財産権の売買市場がひそかに注目を浴びています。これまで特許は企業の競争力を支える重要な資産として、企業内部で保有されることが一般的でしたが、近年ではこれを売買する市場が形成され、取引が活発化しています。

特許市場の注目が高まっている背景には、日経平均株価の乱高下があります。ご存じの通り、株式市場ではAIやロボット、自動取引の導入が進んでおり、その影響で株価の上下がますます複雑化しています。かつては、企業の成長性や経営戦略を信頼して投資するのが株式市場の本来の姿でしたが、現在ではそうしたシンプルな投資行動から大きくかけ離れている状況です。AIがもたらす取引のスピードや、複雑なアルゴリズムが市場を動かしているため、投資家にとっては予測が難しい時代となりました。

このような市場の変化を受け、今後は株式取引だけでなく、様々な資産取引がプラットフォーム上で可能になると予測されています。これまでの有形資産に加え、無形資産への投資が増えていくことは間違いありません。しかし、ビットコインや仮想通貨のように、新しいデジタル資産に対して不安を感じる方も多いでしょう。これらの資産は、価値が不安定で、また規制も未整備であるため、投資家にとってはリスクが高いとされています。

一方で、特許や商標といった知的財産は、国が認めた技術やアイディアに対する権利です。これらの権利は、法的に保護されているため、その価値が明確に評価されやすいという特徴があります。技術やアイディアそのものに対して投資を行うことができる点で、特許市場は新たな投資先として非常に魅力的です。これまでは企業や組織に対して投資するのが主流でしたが、今後はその企業が保有する特許や技術に直接投資する時代が来ると言われています。いわば、「箱推し」ではなく、「単推し」の時代が訪れるのです。

たとえば、特定の技術に関心を持つ投資家が、その技術に対する特許権を取得することで、その技術が普及するにつれて利益を得ることができるようになります。これにより、従来の株式投資では考えられなかった新しい投資の形が生まれ、技術革新の促進にもつながるでしょう。

特許市場の成長は、特に中小企業やベンチャー企業にとって大きなチャンスです。大企業が保有する特許を買い取ることで、迅速に技術を自社の製品やサービスに取り入れることが可能となり、競争力を高めることができます。また、自社が開発した特許を市場で売却することで、資金調達や事業拡大の資金を得ることもできます。

特許の売買市場は、今後ますます注目されることでしょう。そして、その動向は株式市場や仮想通貨市場に次ぐ、新しい投資の潮流を形成することが予想されます。企業経営者や投資家にとって、特許市場の動向を注視し、新たな投資機会を見極めることが求められています。未来の市場で生き残るために、無形資産に対する理解を深め、その可能性を追求することが重要です。

特許売買市場の発展は、我々がこれまで考えてきた「資産」の概念を大きく変える可能性があります。企業が保有する知的財産が、これまで以上に価値を持ち、それが取引されることで、新たな経済圏が形成されるでしょう。今後、私たちは、特許市場という新しいフィールドで、どのようにビジネスチャンスを掴んでいくのか、その答えを見出すことが求められています。

この市場の成長とともに、ベンチャー企業やスタートアップは、従来の資金調達手段だけでなく、特許を通じた資金調達や事業展開の手段を活用し、より柔軟かつ迅速に市場でのポジションを確立することができるでしょう。この新たな市場の可能性を見逃さず、積極的に参入していくことで、未来の成功を掴むことができるのです。また個人が株取引の様に、直接的に技術に投資することも可能です。そうなればますます活性化されることになります。

特許売買市場の未来は、私たちがこれからどのように知的財産を活用していくのかにかかっています。その市場の発展が、企業経営者にとってどのようなチャンスをもたらすのか、そしてそれがどのように新しい経済を形作るのか、その未来に期待したいですね。


ライター

渡部一成

株式会社白紙とロック代表取締役

高校卒業後、20歳で起業しwebマーケティングや商品開発に関するコンサルティング事業を15年間経営。
さらに、バンコクでスタートアップ企業を設立し、海外でIT関連のプロダクト開発を経験。
その後、大手IT企業に特許を売却し、その資金で株式会社白紙とロックを設立。
創業後も複数の特許を取得。 その他にも、新規事業の立ち上げや、医療法人理事、大学で特別講師として授業を行うなど多角的に活動中。




Latest Posts 新着記事

GE薬促進の陰で失われる特許の信頼性―PhRMAが警告する日本の制度的リスク

2025年4月、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が日本政府に提出した意見書が、医薬業界および知財実務者の間で波紋を呼んでいる。矛先が向けられたのは、ジェネリック医薬品(GE薬)に関する特許抵触の有無を判断する「専門委員制度」だ。PhRMAはこの制度の有用性に疑問を呈し、「構造的な問題がある」と批判した。 一見すれば、専門家による中立的判断制度は知財紛争の合理的解決に寄与するようにも思える。だが、...

破産からの逆襲―“夢の電池”開発者が挑む、特許逆転劇と再出発

2025年春、かつて“夢の電池”とまで称された次世代蓄電技術を開発していたベンチャー企業が、ついに再建を断念し、破産に至ったというニュースが駆け巡った。だが、そのニュースの“続報”が業界に波紋を呼んでいる。かつて同社を率いた元CEOが、新会社を設立し、破産企業が保有していた中核特許の“取り戻し”に動き出しているのだ。 この物語は、単なる一企業の興亡を超え、日本のスタートアップエコシステムにおける知...

サンダル革命!ワークマン〈アシトレ〉が“履くだけ足トレ”でコンディションまで整うワケ

「サンダルなのに快適」「履いた瞬間にわかる」「この値段でこれは反則級」――こうした驚きと称賛の声が続出しているのが、ワークマンの〈アシトレサンダル〉だ。シンプルな見た目に反して、履き心地・健康効果・歩行補助といった多面的な機能を備える同製品は、単なる夏の室内履き・外出用サンダルという枠を超えて「履くことで整う道具」として注目されつつある。 このコラムでは、アシトレサンダルの具体的な機能や構造だけで...

斬新すぎる中国製“センチュリーMPV”登場!アルファード超えのサイズと特許で快適空間を実現

中国の高級ミニバン市場に、新たな主役が登場した。GM(ゼネラルモーターズ)の中国ブランド「ビュイック(Buick)」が展開するフラッグシップMPV「世紀(センチュリー/CENTURY)」は、その名の通り“100年の誇り”を体現する存在だ。日本の高級ミニバンの代名詞・トヨタ「アルファード」をも超えるボディサイズに、贅沢を極めた2列4人乗りの内装、そして快適性を徹底追求した独自の“特許技術”が組み込ま...

実用のドイツ、感性のフランス──ティグアン vs アルカナ、欧州SUVの進化論

かつてSUVといえば、悪路走破性を第一義に掲げた無骨な4WDが主役だった。しかし今、欧州を中心にSUVの在り方が劇的に変化している。洗練されたデザイン、都市部での快適性、電動化への対応、そしてブランドの哲学を反映した個性の競演。そんな潮流を牽引するのが、フォルクスワーゲン「ティグアン」とルノー「アルカナ」だ。 この2台は単なる競合ではない。それぞれ異なる立ち位置とブランド戦略を背景に、「欧州SUV...

戦略コンサルはもういらない?OpenAI『Deep Research』の衝撃と業界の終焉

OpenAI「Deep Research」のヤバい背景 2025年春、OpenAIがひっそりと発表した新プロジェクト「Deep Research」。このプロジェクトの正体が徐々に明らかになるにつれ、コンサルティング業界に戦慄が走っている。「AIは単なるツールではない」「これは人間の知的職業に対する“本丸攻撃”だ」とする声もある。中でも、戦略コンサル、リサーチアナリスト、政策提言機関など、いわゆる“...

老化研究に新展開——Glicoが発見、ネムノキのセノリティクス作用を特許取得

はじめに:老化研究の新潮流「セノリティクス」 近年、老化そのものを「病態」と捉え、その制御や治療を目指す研究が進んでいる。中でも注目されるのが「セノリティクス(Senolytics)」と呼ばれるアプローチで、老化細胞を選択的に除去することで、慢性炎症の抑制や組織の若返りを促すというものだ。加齢とともに蓄積する老化細胞は、がんや糖尿病、心血管疾患、認知症といった加齢関連疾患の引き金になるとされ、これ...

EXPO2025に見る「知と美」の融合──イタリア館が描く未来の肖像

2025年大阪・関西万博(EXPO2025)が近づくなか、多くの国が自国の強みをテーマにパビリオンを構築している。イタリアといえば、多くの人が思い浮かべるのは、パスタやピザ、ワインといった「食」、アルマーニやプラダ、グッチなどの「ファッション」だろう。しかし、イタリアの真の魅力はそれだけではない。今回の万博では「もうひとつのイタリア」、すなわち高度な技術力と伝統文化、そして未来志向の融合が強く打ち...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

大学発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る