スタートアップを起業する時に知財がとても重要な理由3選


近年、スタートアップ企業を起業する人が増えてきていますが、
スタートアップとベンチャーの起業は大きくことなります。
スタートアップとは、イノベーションにフォーカスし、短期間で急成長を目指す企業であり、まさに「スタート&アップ」が目的です。
一方で、ベンチャー企業とは、既存のビジネスモデルを活用して収益性を高めることを目指し、着実な成長を目指す企業だと言われています。

目次

スタートアップの起業で重要な点
5つの要素

スタートアップを起業する上で、重要な点として、
アニス・ウッザマンの著書「スタートアップ・バイブル|シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた」に5つの要素が書かれています。

  • チームの作り方
  • プロダクトの作りか
  • 特許で守る利益(※)
  • マーケティングの方法
  • 勝つための資金調達

この中でも、日本のスタートアップでは(※)特許=知財に対する意識がとても薄く、
起業時に無視しがちですが、海外のスタートアップでは当たり前こととして存在します。

それは、私自身がバンコクでスタートアップを起業した時の経験でも感じた点でもあり、
グローバル社会・ネット社会の今、起業する方は重要な点として認識してした方がメリットが多いと考えています。

そんな実体験をもとに、重要な理由を3つにまとめので是非参考にしてみてください。

スタートアップを起業する時に知財がとても重要な理由①
早いもの勝ちだから

知財は「先願主義」と呼ばれており、「早い者勝ち」の原則が適用されます。
全く同じような内容の知財を2番目以降に出願した場合は無効となってしまいます。
なので、特許や商標(知財)を取得したい場合はなるべく早いタイミングで出願することが重要。
出願のタイミングは、スタートアップの起業することが決まり、プロダクトの試作品が完成したタイミングが良いでしょう。
それは、スタートアップがイノベーションにフォーカスする上で「新しいことの」証明として、客観的に国が認めてたことにもなり信頼性獲得にもつながります。

多くのスタートアップは多角的な戦略でなく、一点集中突破型だからこそ、スタート時の特許取得=武器の取得がとても重要な要素だと言えます。

スタートアップを起業する時に知財がとても重要な理由②
イノベーションにフォーカスするから

ピーター・ティールの著書「ゼロ・トゥ・ワン」の中でも知的財産と特許についても書かれています。
特許は独占を築くための重要な要素であり、スタートアップが競合他社と差別化を図る上、そしてより長期的にその利益を維持する助けとなると指摘されています。

この考えは、知財戦略における一般的な観点でもありますが、スタートアップはイノベーションを重視するので、差別化競合性を意識すること=特許を取得することは、資金調達を行う上でも重要な説得材料となります。

スタートアップを起業する時に知財がとても重要な理由③
リスクヘッジ

スタートアップは「Jカーブ」と言われる曲線を描くことで、急成長を目指しますので
その分、スタート時の下降はとてもリスクが高いと言えます。
もちろん、全てのスタートアップが上手くいくわけではありません。
仲間われや資金不足、ローンチしたけどもマーケティングフィットしなかったり・・・。
浮上せずそのまま失敗するケースもありますが、全て失った場合でも最後には知財だけが残ります。

例えば、素晴らしい技術だったけど、マーケティングが上手くいかなかった場合、
特許技術だけをマーケティングが上手い会社に権利を譲渡する。
そういった方法で最終的に資金を回収したりすると、起業時のリスクヘッジにも繋がります。
もちろん、権利範囲や特許内容にもよりますが、権利を申請する時にある程度意識していれば、
知的財産のマネタイズも十分に可能なことだと考えれられます。
そう考えると、スタートアップの起業にもチャレンジしやすくなるのではないでしょうか。

スタートアップが簡単に特許を使うおすすめ方法

とは言っても、なかなかスタートアップが特許を取得するのは、コストや時間的な問題から後回しにしがちだと思います。実際、特許を取らないとビジネスをスタート出来ないわけではないので、今すぐの課題ではなく優先順位は下がりがち。

そんな方に、おすすめな方法が「大手企業が開放している特許を使う」です。
大手企業としてはオープンイノベーションの促進や、CSRなど様々な目的で特許技術を開放してシナジーを生み出そうとしています。
中には交渉次第で一定期間無償でライセンス提供してもらえるものもあります。特許庁が公開している、「開放特許データベース」で検索すればピッタリな特許があるかもしれないです。

開放特許データベース」は専門知識がないとかなり分かりにくいと思いますので、そんな時は「IPマーケット」がおすすめです。 まだまだ情報量は少ないですが、Panasonicを初め大手企業の活用可能な特許が、四コマ漫画などの解説で一般の人にも分かりやすく翻訳化されています。

特許取得までのスピードやコストを大幅にカットでるこの方法、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

私自身、いくつかの特許をスタート時に取得し、プロダクトを開発した実績があります。
上記に書かれていることは全て重要な点だと体感しています。
日本は訴訟リスクが低く、日本国内だけでスタートアップを起業する場合、
特許取得は軽視され後回しにされがちですが、最近ではどんなビジネスでもインバウンドや海外をある程度意識せざる得ない状況だと思います。そうなると、訴訟リスクも増え、今後日本でも重要な点として知財が最も重要視されるトレンドになると考えています。もちろん訴訟リスクだけではなく、無形資産の価値が上がってくる時代においてもトレンドだと考えられますので、今後スタートアップを起業しようと考えている方々はぜひ重要な点として、意識してみてください。


ライター

渡部一成

株式会社白紙とロック代表取締役

高校卒業後、20歳で起業しwebマーケティングや商品開発に関するコンサルティング事業を15年間経営。
さらに、バンコクでスタートアップ企業を設立し、海外でIT関連のプロダクト開発を経験。
その後、大手IT企業に特許を売却し、その資金で株式会社白紙とロックを設立。
創業後も複数の特許を取得。 その他にも、新規事業の立ち上げや、医療法人理事、大学で特別講師として授業を行うなど多角的に活動中。




Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る