1月に公開されたAppleの特許出願:Vision Proの「気になるあの機能」なんのため?


今回のコラムは、2024年1月11日に公開されたAppleの特許出願のうち、新型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)であるVision Proに搭載される新技術「EyeSight」に関する発明です(出願日:2023年9月25日)。なお、この本出願は、2018年6月15日に出願され「強化された相互作用を促進するためのウェアラブルデバイス」と題された米国特許出願第16/010,373号の継続特許出願であり、2017年6月16日に出願された同タイトルの米国仮特許出願第62/521,184号の優先権を主張しています。

https://patents.google.com/patent/US20240012601A1/
https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/06/introducing-apple-vision-pro/

この特許出願の公開日直前、2024年1月8日(米国時間)に、Appleは同社初のHMDであるApple Vision Proを同年2月2日に米国で発売すると発表しました。なお、価格は3499USドルで、1USドル=143円で換算すると約50万円となります。

Apple Vision Proが最初に発表されたのは、2023年6月5日ですが、発表当初、ユーザーの目をスキャンし、そのデジタルコピーをHMDの外部スクリーンに投影するというEyeSight機能について、一体なんのために搭載された機能なのか、理解が困難だといったレビューがネット上で散見されました。

本コラムでは特許出願の内容から、EyeSight機能がどのような目的で開発されたのかを紐解いてみます。

EyeSightは実世界とのつながりを保つためのもの

まず、このHMDの基本的な構成を確認しておきます。このHMDは、内部ディスプレイと外部ディスプレイの両方を備えたものです。内部ディスプレイには、従来のHMD同様、現実世界のオブジェクトを仮想化された表現(例えば、写真やビデオ)に変換してHMDの画面に表示したり、またはユーザーの視野に仮想オブジェクトを重ねて表示することにより、相互作用を促進することができます(いわゆるAR技術)。これにより、着用者がリアルワールドの環境を引き続き見ることができます。

外部ディスプレイの使用目的

具体的には、このHMDには、着用者自身の画像をキャプチャするために筐体内に配置された着用者向けカメラと、キャプチャされた画像に基づいて第二の画像を表示するために配置された外向きのディスプレイがあります。プロセッサは、キャプチャされた第一の画像を修正して第二の画像を生成するように構成されています。これにより、着用者の目や表情などの特徴をリアルタイムで外部ディスプレイに表示し、着用者と外部の人との間でより自然なコミュニケーションを可能にします。

ユーザーの目を投射するだけではない

さらに、このHMDは、着用者の感情状態などに応じて選択された画像を外向きのディスプレイに表示することができます。これにより、着用者が現実世界の人々との相互作用中に仮想環境に完全に没入している場合でも、コミュニケーションの障壁を低減し、より効果的な相互作用を実現します。

この特許出願は、ウェアラブルデバイスとしてのHMDの分野における、着用者と第三者との相互作用とコミュニケーションの改善に焦点を当てており、着用者と外部の人々との間でより自然で効果的なコミュニケーションを可能にするための革新的な解決策を提供することを目的としているのです。

EyeSight機能を応用してどのような新しい体験ができるのか、ハードの価格は1つのネックではありますが、今後が楽しみな製品の1つです。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

好きなテーマは、#特許 #IT #AIなど新しいもが多めです。




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