クラファンやるなら知財を知ろう!【第3回】


前回までは、クラファンを開始することで起こりうるリスクとクラファンを開始する前にやっておきたいことについて解説してきました。

連載コラムの最後となる今回では、より細かくクラファンにおける各ケース別の留意点について解説していきたいと思います。

海外商品を日本国内でクラファンするケース

海外のクラウドファンディングに出品されていた商品について、再度、日本国内のクラウドファンディングを実施するというケースが見受けられます。海外で知的財産の問題がなかったということで安心していると、日本国内でトラブルに巻き込まれる可能性があります。

これはどういうことかというと、特許権・実用新案権・意匠権、商標権などの知的財産は、国ごとにその権利が発生するため、たとえ海外では抵触する知的財産が存在しなかったとしても、日本では抵触する知的財産が存在している可能性があります。そうなるとその商品を日本に輸入し販売した途端、その知的財産権の侵害となる可能性があります。

つまり、海外でのクラファンが問題なかったからといって、日本の知的財産調査を怠るのはよくありません。日本のクラファンを開始する前に、日本での知的財産調査を行うことをお勧めします。具体的な調査項目としては、前回解説しましたとおり、特許・実用新案・意匠・商標などの調査となります。

もし、調査の結果、対応する商品について他人の権利が存続していた場合、日本仕様の商品について設計変更、別ブランドの採用(ロゴマークの変更ブランドネームの変更)を検討する必要があります。

日本商品を海外でクラファンするケース

このようなケースの場合、先ほどの「海外商品を日本国内でクラファンするケース」の逆のことが起こります。つまり、日本国内では抵触する知的財産が存在しなかったとしても、外国では抵触する知的財産が存在する可能性があります。

もし、日本のクラウドファンディングが成功し、次に海外でクラウドファンディングを行うことを考えている方は、海外でのプロジェクト開始前に、あらかじめその国で知的財産調査を行うことをお勧めします。

なお、海外での知的財産の調査は日本と比べ高額になったり、言語的なハードルが高く調査が難航することがあります。その国の専門家に助言をもらうのが確実かもしれません。

サービスをクラファンするケース

クラウドファンディングの形態として商品を対象とするものだけではなく、サービスを対象とするものもありますが、このような場合についても、知的財産について十分注意する必要があります。例えば、そのサービス名についてネーミングをつけている場合、商標権侵害にならないように事前に調査をされることをお勧めします。

今後継続して使用されるのを考えている場合は、商標登録もされることをお勧めします。

クラウドファンディングをしてしまうと、多くの人の目に留まるため、そのようなトラブルになる可能性が高くなります。

クラファン成功後にオリジナル限定品をプレゼントするケース

クラファン成功の暁に支援者に対してオリジナル限定品をプレゼントするというような行為が見受けられます。例えば、支援者に対してオリジナルTシャツ、オリジナルステッカーなどをプレゼントするというような行為です。

特許法等では有償・無償問わず侵害行為となるため、無償であってもこれらのプレゼントが他人の知的財産権に抵触していないかどうか、確認する必要があります。

Tシャツのデザインについては意匠調査、Tシャツにブランドを付けているようであれば商標調査などをすることをお勧めします。現在、簡単にオリジナルのTシャツを作ることができるようになりましたが、その一方で侵害のリスクも高まってきていると思われますので、十分注意する必要があります。

まとめ

これまでクラウドファンディングを行う上で、知っておきたい知的財産の知識について述べてきましたが、「知的財産権を取得すること」と、「他人の知的財産権の侵害にならないようにすること」は、全く別の問題ですので、分けて考えなければなりません。ご自身で出願や調査されることも可能ですが、可能であれば、より専門的なことは弁理士等の知的財産の専門家にご相談されることをお勧めします。

可能であれば、プロジェクト開始前の早い段階からそのような専門家に相談されるか、専門家もプロジェクトチームに入ってもらって一緒にプロジェクト進めてみてもよいかもしれません。


ライター

杉浦 健文

パテ兄

特許事務所経営とスタートアップ企業経営の二刀流。

2018年に自らが権利取得に携わった特許技術を、日本の大手IT企業に数千万円で売却するプロジェクトに関わり、その経験をもとに起業。 株式会社白紙とロックの取締役としては、独自のプロダクト開発とそのコア技術の特許取得までを担当し、その特許は国際申請にて米国でも権利を取得、米国にて先行してローンチを果たす。 その後、複数の日本メディアでも取り上げられる。

弁理士としてはスタートアップから大手企業はもちろん、民間企業だけではなく、主婦や個人発明家、大学、公的機関など『発明者の気持ち、事業家の立場』になり、自らの起業経験を生かした「単なる申請業務だけでない、オリジナル性の高い知財コンサル」まで行っている。

■日本弁理士会所属(2018年特許庁審判実務者研究会メンバー)
■株式会社白紙とロック取締役
■知的財産事務所エボリクス代表
■パテント系Youtuber