直接つながる、スマートに契約する

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直接つながる、スマートに契約する

今回紹介する特許発明は、不動産契約システムに関するものです。従来の不動産市場では、仲介業者を介した取引が一般的であり、そのプロセスは時間がかかり、コストも高く、透明性に欠ける場合がありました。しかし、本発明により、ブロックチェーン技術を活用して契約の不変性と透明性を保証し、スマートコントラクトを用いて契約プロセスを自動化することで、仲介業者なしに直接的かつ効率的な賃貸借契約が可能になります。

このシステムは、賃貸市場における効率性、透明性、信頼性を大幅に向上させることを目指しています。

従来の不動産取引では、不動産仲介業者を介して行われることが多く、物件情報の検索や閲覧はインターネット上の不動産検索サイトを通じて行われていました。これらのサイトは多数の物件情報を提供するものの、物件情報が最新の状態に更新されていない場合や誤入力されている場合があり、ユーザーが望む物件を探すことが難しいという課題がありました。また、仲介手数料が成約した業者にのみ支払われるため、おとり広告などの問題も生じていました。

発明の目的

本発明は、不動産契約支援システム及び不動産契約支援プログラムに関するもので、特に不動産仲介業者を介在させずに賃貸不動産物件の賃貸借契約を支援するシステムとプログラムを提供しようとするものです。

発明の詳細

本発明の不動産契約支援システムは、賃貸不動産物件の物件情報を掲載し、賃貸借契約を支援するためのシステムです。このシステムは、以下の主要な機能を備えています:

物件情報登録手段:賃貸不動産物件の所有者や管理者が物件情報を登録できる機能。
物件情報検索手段:ユーザーが希望する条件を入力して賃貸不動産物件を検索できる機能。
ユーザー登録手段:ユーザーがユーザー情報を入力して登録できる機能。
トークン発行手段:ユーザー登録をしたユーザーに対して、賃貸借契約を締結する権利を有するユーザー情報を付与したトークンを発行する機能。

【図1】

このシステムにより、不動産仲介業者を介在させることなく、ユーザーが直接物件情報を検索し、賃貸借契約を締結することが可能になります。また、契約情報をブロックチェーンに記録することで、契約履歴の信頼性を高め、自動的に契約手続きを行うことができるようになります。

本発明は、不動産取引の透明性を高め、ユーザーが自身に適した賃貸不動産物件を見つけやすくすることを目的としています。これにより、不動産の所有者や管理者は物件情報を安心して登録でき、ユーザーは簡単に希望する物件を探し出すことができるようになります。

上述の各手段をそれぞれ詳細に説明していきます。

1.物件情報登録手段の詳細
物件情報登録手段は、物件の所有者や管理者がシステムに物件情報を登録するためのインターフェースを提供します。この手段は、物件の基本情報(例:住所、賃料、間取り、設備の詳細)に加えて、物件の写真やビデオツアーなどのメディアコンテンツもサポートすることが可能です。登録プロセスは、物件情報の正確性を保証するために、検証ステップを含むことができます。これにより、ユーザーが閲覧する物件情報の信頼性が向上します。

2.物件情報検索手段の詳細
物件情報検索手段は、ユーザーが自分のニーズに合った物件を効率的に見つけることができるように設計されています。ユーザーは、地域、賃料の範囲、間取り、設備の種類など、複数の検索条件を指定することができます。検索結果は、ユーザーの指定した条件に最も適合する物件から順に表示され、各物件には詳細ページへのリンクが提供されます。この検索手段は、高度なフィルタリングとソート機能を備えており、ユーザーが求める物件を迅速に特定できるようにします。

3.ユーザー登録手段とトークン発行手段の詳細
ユーザー登録手段を通じて、ユーザーはシステムに自分の情報を登録し、賃貸借契約の締結に必要な資格を得ることができます。登録プロセスでは、ユーザーの身元情報(例:名前、連絡先情報)のほか、賃貸物件に関する希望条件も収集されます。登録が完了すると、トークン発行手段がアクティブ化され、ユーザーに対して一意のデジタルトークンが発行されます。このトークンは、ユーザーが賃貸借契約を締結する際に、その権利と身元を証明するために使用されます。

4.ブロックチェーンとスマートコントラクトの応用
契約情報の記録にブロックチェーン技術を利用することで、システムは契約の透明性と不変性を保証します。各契約はブロックチェーン上に永続的に記録され、参加者による後からの改ざんが不可能になります。スマートコントラクトは、契約条件が満たされた時点で自動的に契約を実行するプログラムです。例えば、ユーザーが賃料の支払いを完了すると、スマートコントラクトが自動的に物件の鍵をユーザーに提供するデジタルキーの解放を行うなどの操作が可能です。

5.システムのセキュリティとユーザビリティ
セキュリティは、ユーザー情報の保護、トランザクションの安全性、契約データの不変性を確保するために、最先端の暗号技術を使用して強化されています。ユーザビリティに関しては、直感的なインターフェース設計と、ステップバイステップのガイダンスを提供することで、技術に精通していないユーザーでも容易にシステムを利用できるようになっています。

<本発明の不動産契約支援プログラムを使用したサービスの流れ>
1.部屋(賃貸不動産物件)を貸したい大家さん(賃貸不動産物件の所有者)などが、所有者端末又は管理者端末からマーケットプレイス(不動産契約支援システム)に物件情報を掲載します。
2.部屋を借りたいユーザが物件を探し、ユーザ端末からマーケットプレイスにユーザ登録することにより、トークンが発行されます。ユーザと大家さんとの間でユーザ端末と所有者端末又は管理者端末を介して賃貸借契約が締結されると、例えば、暗号通貨による支払いと契約情報がブロックチェーンに記録されます。
3.ブロックチェーンに記録された情報が、予め設定された所定の条件を満たすと、マーケットプレイスは、行政機関への手続(住民票の移転など)や新居での生活に必要な電気、ガス、水道などの契約手続も自動的に処理を行い、ユーザがこれまで個別に行っていた手続が自動化されます。退去のときも同様に、ユーザが、マーケットプレイスで新居を探すことにより、退去の手続も行われます。ユーザは、ユーザ個人に発行されたトークンで情報管理されていることから、新居の賃貸借契約を締結することにより、現在住んでいる部屋の退去手続(行政機関などの手続も含む)が自動的に完了されます。

本発明が対象としている賃貸不動産物件は住居用不動産だけでなく、駐車場などの場合も考えられます。例えば、ユーザが自動車(新車又は中古車)を購入する際には車庫証明が必要となります。自動車販売業者は、マーケットプレイスを経由することにより、ユーザが契約する駐車場に対する車庫証明の電子申請だけでなく、申請手数料の決済もスマートコントラクトで完了することができます。

【図2】

この発明のポイントは、不動産仲介業者を介在させずに賃貸不動産物件の賃貸借契約を支援するシステム及びプログラムを提供することです。この発明は、以下の核心的な要素によって特徴づけられます。

直接契約の促進: 不動産仲介業者を必要としない直接的な賃貸借契約プロセスを実現し、物件所有者と借主間の直接的なやり取りを可能にします。これにより、仲介手数料の削減や、契約プロセスの透明性の向上が期待されます。

ブロックチェーン技術の活用: 契約情報をブロックチェーンに記録することで、契約の不変性と透明性を保証します。これにより、契約の信頼性が高まり、参加者間の信頼を構築する基盤が提供されます。

スマートコントラクトによる自動化: 契約条件が満たされた際に自動的に契約を実行するスマートコントラクトを利用することで、契約プロセスの自動化と効率化を実現します。これにより、手続きの迅速化とヒューマンエラーの削減が可能になります。

ユーザー中心の設計: 物件情報の検索から契約締結までのプロセスを、ユーザーが直感的に操作できるように設計しています。これにより、不動産取引のアクセシビリティが向上し、より多くのユーザーがシステムを利用できるようになります。

本発明は、不動産取引のデジタル化と自動化を通じて、賃貸市場における効率性、透明性、信頼性を大幅に向上させることが可能です。ブロックチェーンとスマートコントラクトの技術を駆使することで、従来の不動産取引プロセスに存在した問題点を解決し、新しい不動産取引の形態を提案しています。

この特許発明により提供される不動産契約支援システムは、賃貸不動産市場における新たなパラダイムを提案しています。デジタル技術とブロックチェーンの応用により、不動産取引の透明性、効率性、セキュリティが大幅に向上し、ユーザーにとってより良い取引体験を提供することが期待されます。

発明の名称

不動産契約支援システム及び不動産契約支援プログラム

出願番号

特願2022-149465

特許番号

特許第7214286号

出願日

2022年9月20日

公開日

2023年1月30日

登録日

2023年1月20日

審査請求日

2022年9月20日

出願人

株式会社RESA

発明者

芝 哲也
国際特許分類

G06Q 50/16

経過情報

早期審査対象出願 



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