泥棒ドローンから荷物を守れ!

ネットショッピングは、すでに一般的な買い物手段として広く浸透したことに、誰しも疑いを持たないところです。そして、今後のネットショッピングのありかたとして、ネット注文後に商品を好きな場所まで、ドローンが配達してくれるという未来は、想像に難くありません。今後のドローン技術の進歩によって、近い将来に現実のものとなるでしょう。

ところで、ドローンはあくまでも人間が操る「飛行ロボット」ですから、ドローン技術が進歩すれば、残念ながら当然の結果として、悪意ある第三者による、ドローンの悪用が考えられます。

今回紹介する発明は、ドローンを悪用した「泥棒ドローン」の対策手段に関する特許となります。IBMが米国で特許を取得しているもので、特許番号:US10475306B1、登録日は2019年11月12日です。

玄関先に配達された荷物を、ドローンを使って盗む行為は、いわば匿名の泥棒行為といえます。泥棒からすれば自ら現場に出向かずに済むという点で、「安全」な手段といえます。よって、このような「泥棒ドローン」を使用した窃盗行為の対策を、予め講じておく必要があるわけですね。

発明の内容としては、ごく簡単にいえば、配達された荷物にGPSと高度センサを付けておき、これを注文者が荷物を受け取るまで、追跡サーバで常に監視するというシステムです。泥棒ドローンが荷物を一定の高さまで持ち上げた途端、警報を発して位置を特定します。このような防犯システムを用意してはじめて、安全なネットショッピングが楽しめるといえるでしょう。

それでは具体的な技術解説を見ていきましょう。

ドローンは、ユーザーが遠隔で一定のタスクを実行するために利用可能になっていて、近年のドローンの人気及び利用しやすさは非常に向上しています。

一方で、住宅や所定の場所にオンラインショッピング及びそれに付随する商品パッケージを届けることは、いまや当たり前の物流状態と言ってよいほど、我々の生活において浸透しています。

しかし、商品等のパッケージの配送は、その商品が配達された途端、窃盗及び悪意ある行動のターゲットになってしまいます。個人で運用可能なドローンの使用機会増加と、オンラインショッピングの利用増加が合わさるということは、悪意ある第三者の操作するドローンが、玄関先に置いてある商品に不正な意図をもって接触できる機会が増大することを意味します。

そこで本発明では、発送された商品パッケージなどについて、当該パッケージの高度位置の追跡を選択的にON/OFFするように構成して、逐次データベースを参照するシステム及び方法を開示し、安全性を高めることとしました。

いくつかの実施形態の1つの例では、追跡されるべきオブジェクト(商品等)は、当該オブジェクトの高度データを検出するように構成されたIoT装置が設けられています。

状態追跡用設定に基づいて、商品等は「泥棒ドローン」によって持ち上げられたときに、自己の高度データを継続的にサーバに送信します。サーバは高度データを追跡し、予め設定された基準の高度を超えたところで警報を発します。つまり、単に購入者が商品を持ち上げた程度では問題ありませんが、明らかにドローン等によって持ち去られていると判断できる場合に、警報を発するということですね。

このようにして、本発明は「泥棒ドローン」による匿名の盗難を防止することができるのです。

  • コンピュータで実行される方法であって、
  • 追跡サーバによって、個人財産のオブジェクト(品物)に関するデータを格納しているセキュアなデータベースにアクセスし、
  • 追跡サーバによって、オブジェクトに関するデータから、当該オブジェクトの追跡状態がオンになっていることを確認し、
  • オブジェクトに関連付けられたIoTの高度センサから、追跡サーバが事前定義された基準から高度を求め、
  • 追跡サーバは予め定義された高度の基準を満たすか、オブジェクトの追跡状態がOFFになるまで追跡動作を繰り返し、
  • 追跡サーバは、所定の基準高度に応答して、少なくとも1つの指定されたアラートを生成させ、受信者のコンピュータデバイスに電子メッセージとして送信し、
  • 追跡サーバは、IoTデバイスの位置センサーによってアラートを生成し、
  • 追跡サーバは、定期的にIoT装置の高度センサから新たな高度データを取得し、アラートを生成し、
  • 追跡サーバは、IoT装置の高度センサから新たな高度データを取得して更新し、アラートの受信者に位置データと高度データを送信する。

特許請求の範囲を網羅的に図にすると、以下のようなネットワーク図が例示できます。

セキュアなデータベース50が1つまたは複数のコンピュータ・ネットワーク(LAN、WAN、またはインターネットやセルラーネットワークのような)ネットワーク55に接続され、ネットワークに接続されている販売システム60、運送業者システム65、追跡サーバ70、及びユーザ装置75が設けられます。

販売システム60は、ウェブサイトやモバイルアプリケーションを介して、例えばユーザデバイス75からオンラインショッピングの注文を受け取ることができます。

ユーザデバイス75からの注文を受信したことに応答して、販売システム60が注文に応じた場所・位置に商品を配送するために商品オブジェクト80の出荷を開始します。商品オブジェクト80には搬送場所へ出荷される間、IoT装置85が取付けられます。

このIoT装置は包装の内部に入れても良いですし、何らかの方法で外部に取り付けても良いものです。IoT装置には高度センサ90やGPSセンサ91等が含まれます。高度センサとしては、例えば大気圧の変化を検出するデジタル気圧センサを含むこともできます。

追跡サーバ70は、ネットワーク55を介して、セキュアなデータベース50にアクセスして商品オブジェクト80の状態を常に判定し続けます。商品オブジェクトの追跡状態はON/OFFすることが可能で、無事にユーザーに届いた場合にはOFFにされます。

高度センサによって追跡サーバが発する警報は、少なくとも1つの指定された受信者に送信されます。送信先としては運送業者やユーザの端末、警察その他を含めることができます。

また、警報は繰り返しリアルタイムの高度データに基づいて生成され、GPSセンサとの協同により、商品オブジェクトを追跡するために使用されます。

本発明は、現時点で具現化されているのか不明な特許です。

しかし、ドローンを使った配送システムは着々と実用化されつつありますので、本発明のような防犯対策も、すぐ先の未来を見据えた技術として、先取り的に特許出願されたものと考えられます。

発明の名称

Preventing anonymous theft by drones

特許番号

US10475306B1

登録日

2019.11.12

出願人

International Business Machines Corporation (IBM)

発明者

Michael Bender

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。