ドローンが飛ぶ度に不労所得が生まれる!?

一戸建ての不動産を購入・購入検討したことのある方なら、不動産が土地と建物に大きく分けて考えられることはご存知ですよね。そして、土地を購入したときに得られる土地所有権というのは二次元的なものではなく、その土地の地下や上空にも及ぶものである、ということも、よくいわれることですね。

ただ、土地所有権について定めた民法第207条には、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定められているのみで、厳密に何メートルまで、という規定はありません(法律的にグレーな部分)。

しかし、他人の土地の上空に、物流や空撮等の目的でドローンを飛ばすにあたっては、今後法律的な争いが生じてくることは容易に想像ができます。

今回紹介する発明は、ドローンが使用できる空域を三次元的に特定し、当該空域の権利者(空中権を有している者)と、その空域を利用したい者とのマッチングを図るシステムを提供することを提案したビジネス特許になります(特許番号:特許第6517972号、登録日:2019年4月26日、特許権者:株式会社トルビズオン)。

土地を有する者は、自分の土地上空の任意の空間を指定して、「スカイドメイン」を取得します。このスカイドメインは、任意の3次元空間の固有の位置(アドレス)を示すものです。このスカイドメインをサービス提供者のデータベースに登録しておきます。

一方で、ドローンを飛ばしたい利用者は、使いたい空域のスカイドメインを検索し、使用可能な空域があれば、そのドメイン所有者(土地所有者)に使用料を支払うことで空域を利用することができます。なお、支払われた使用料はスカイドメイン所有者に電子決済で支払われます。

このような仕組みを構築することで、土地所有者とドローン利用者とのマッチングが図られるとともに、不法侵入などのリスクが減らせることになります。また、土地所有者には使用料が支払われることから、これまでになかった新しいビジネスの可能性も示唆されます。

ドローンによる物流が今後本格化するにあたり、例えばドローンが多数往来する地域などでは、土地の価値が上がっていくかもしれませんね。

それでは具体的な技術解説を見ていきましょう。

ドローンをはじめとする無人飛行体は、その用途が拡大し、物流においても広く使われるようになってきています。

また、一般人でも安価に購入可能となってきたことから、空域からの撮影においても、広く活用されるようになっています。

ところで、一般的に、土地所有者は、自己の所有する土地については、その土地の上空の空域についても所定の高さの範囲まではその権利を保有しています。したがって、ドローン等を飛行させる場合には、原則としてその土地所有者等の承諾を得る必要があります。

そこで本発明では、空域登録者と空域利用者とを相互にマッチングさせることで、空域利用を促進するとともに、その飛行の安全性を向上させることとし、そのための空域利用促進システム、空域利用促進方法、これらを実現するためのサーバ装置及びプログラムを提供することとしました。

このようなシステムを利用することで、未登録者による無断での飛行を抑制し、航路の安全性を向上させることも可能となります。

本発明を理解するにあたり、重要なキーワードとして特許請求の範囲の第1段落に記載されている「スカイドメイン」が挙げられます。

スカイドメインとは、任意の3次元空間(緯度、経度、及び標高)に「スカイアドレス(番地)」と「スカイドメイン(名前)」を付与したものであり、このスカイドメインを使用することで、その空間位置をわかりやすく特定し、空域の使用権販売、レンタル、配送場所特定、及び空間特性評価などに活用可能なものとなります。

いわば、いままで自分の土地内の何もなかった空間に、固有のアドレスを付与することができ、その空間に様々な権利(価値)をつけることができるということになります。

【スカイドメイン】

スカイドメインは上図にように記述された住所のようなものですが、インターネットにおけるURLを想像すれば容易に理解できるものです。

空域権利者(つまり土地所有者)は、コンピュータからWebサイト等を通じて各種情報を入力することで、自己の保有する土地の上空の空域についてサービス提供サーバに登録するとともに、その空域を特定するスカイドメインの発行を受けることができます。

サービス提供サーバは、スカイドメインを発行し、空域を特定する緯度、経度、及び標高等と対応付けてデータベースに登録します。

空域の指定の例としては下図に示すように、任意の3次元空間を指定でき、さらに入口と出口を特定する「チューブ」と呼ばれる形態で特定することも可能です。

さらに空域の登録方法として、権利者が地図上に自己の所有地を囲むように任意の点を3点以上プロットすることで、サーバの「アドレス特定部」がプロットされた点の情報に基づいて地形情報を作成し、その地上形状からそのまま所定高(たとえば300m)上空まで立体化し、これを空域としてスカイドメインを対応付けます。空域には環境(気流、雨量、気温、電波、障害物侵入リスクなど)や使用可能時刻などの付加情報を入力することもできます。

一方、空域利用者は、サービス提供サーバにアクセスして、使いたい空域を検索し、利用要望を出すことができます。この利用申込みがされると、空域利用者から空域権利者に対して、所定の利用料が電子決済によって支払われます(サービス提供者の仲介料は差し引かれます)。このようにして、空域権利者と空域利用者とのマッチングが図られるわけです。

利用者側の端末には、例えば以下の図のような画面が表示され、所望の地域について「空を検索」することができます。

この画面から選択を進めていくことで、空域に関わる住所や利用可能時間、料金、おすすめ用途、ライセンスの必要/不要等の情報を得ることができます。

利用者目線での「空域レビュー」も可能です。

本発明は、現時点ではまだ一般運用はされていないビジネス特許です。

しかし、本発明の特許権者であるトルビズオン社は、全国での飛行テストを重ねており、2021年6月時点の情報によると、2026年までに全長約3万キロ、約1万本の「空の道」を作る予定とのことです。

今後ドローンを使用することが一般的になれば、当然既存の法律、権利との折り合いをつけていくことは必須ですし、また、新しい価値を生み出すことでの全く新しいビジネスが生まれてくることは確実です。

今回紹介したようなビジネス特許が具体化すれば、空撮に適した自然豊かな地方での新たなビジネスが生まれることになりますし、ドローン物流で頻繁に上空をドローンが飛行する土地については、その地価が上がるかもしれません。

日本が抱える地方創生といった課題にも、大いに応えられる可能性が感じられます。

発明の名称

空域利用促進システム、空域利用促進方法、サーバ装置、及びプログラム

特許番号

特許第6517972号

登録日

2019.04.26

出願人

株式会社トルビズオン

発明者

増本 衞

国際特許分類

G06Q50/10 (2012.01)

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。