マイクロソフト、新たなMRデバイス特許で企業ニーズに対応


マイクロソフトが今年4月末から5月にかけて出願した2つの特許が公開され、MR (Mixed Reality) デバイス「HoloLens」の進化に期待が寄せられています。これらの特許は、それぞれ「センサーとディスプレイを脱着可能にするもの」と「仮想入力デバイスを仮想オブジェクトに固定するもの」とされ、これらはマイクロソフトのMRデバイスが企業の多様なニーズに応える形で進化を遂げているとの解釈が広がっています。

モジュラー設計で柔軟性を

1つ目の特許は、「モジュラー型ヘッドマウントデバイス」と題され、ディスプレイやプロセッサー、バッテリーなどを着脱可能にし、オフィス、工場、建設現場、医療現場など幅広い用途に対応する設計が明らかにされました。このモジュラー設計は、特定の用途に特化したデバイスを複数持つ代わりに、一つのデバイスで様々なシチュエーションに対応できるとして、コスト削減と利便性の向上が期待されます。

ユーザーの快適性を追求

2つ目の特許「複合現実の入力のための知的キーボード取付」では、仮想のキーボードなどの入力デバイスを、仮想のデスクに固定できる技術が提案されています。これにより、MRデバイスを装着しているユーザーが動いても、仮想の入力デバイスは安定した位置に固定され、効率的でストレスフリーな操作が可能になります。

厳しい経営環境下でも革新を

2023年初頭に大規模なレイオフを実施し、MR関連のプロジェクトも縮小しているマイクロソフトですが、XR分野への継続的な投資姿勢を明確にしています。特に、米国陸軍向けの「Integrated Visual Augmentation System (IVAS)」プロジェクトに向けた新型デバイスの開発は、重要な指針となるとされています。

未来のビジョンを拓く

さらに、マイクロソフトは、XRとメタバース関連ソフトウェアへの注力を続けています。4月には、バーチャルオフィスサービス「Microsoft Mesh」を業務連絡ツール「Teams」と統合し、5月には半導体大手のNVIDIAと生成AI分野で提携を発表、一部の法人ユーザーには、Microsoftのクラウドサービス「Azure」からNVIDIAの3Dデザインツール「Omniverse」を利用可能にしています。

これらの動きから、マイクロソフトがMR技術を企業の実務に密接に結びつけ、次世代のコミュニケーションツールとしての位置づけを強化していく方針がうかがえます。厳しい経営状況下での新技術開発はリスクを伴いますが、この先のデジタル変革の主役としての地位を確立するために、積極的な投資と革新が続けられると期待されています。


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