20件近くの特許でコーヒーのおいしさをデジタル化するスマートデバイス~中国ベンチャーが開発


コーヒーやビール、茶系飲料に関するデータ分析ソリューションを開発するテック企業「流数科技(DiFluid)」が、コンパクトでスマートなコーヒー濃度測定器を開発したと23年1月16日36KrJapanが次のように伝えている。

5000~1万元(約10~20万円)で販売されている一般的なコーヒー濃度計とは異なり、同社の製品にはコーヒー濃度計とデジタルスケールがあって、連携するアプリ上でコーヒーの味を「可視化」できるうえで、価格もわずか1599元(約3万2000円)だと創業者の彭倜氏が説明している。

流数科技は2021年3月に広東省深圳で設立された。同年末に初代の屈折計を中国と海外で発売、好評を得て、「高瓴資本(Hillhouse Capital)」からエンジェルラウンドで資金を調達した。22年11月に発表したコーヒー濃度計の新製品「R2 Extract」は、予約販売の受付開始から12時間で500件近くの注文があった。

同社は創業当初、コーヒー愛好家に狙いを定めた。彭氏によると、同社の製品を購入した海外ユーザーの多くはコーヒーを好むプログラマーやITエンジニアで、特にコーヒーのデータを研究するのが好きで実験をするようにコーヒーを楽しむという。

コーヒーの味は「デジタル」で正確に測ることができ、米国や欧州のスペシャリティコーヒー協会に定められており、美味しいコーヒーの世界規定「Golden Cup Standard」に基づくと、総溶解固形分(TDS)は1.15~1.35%、抽出率は18~22%のコーヒーが美味しい“ゴールドカップ”とされる。

美味しい一杯を淹れるには、抽出率は重量の変化を測ればわかるが、TDSについてはより専門的なコーヒー濃度計が必要になる。機器には極めて高い精度が求められ、あらゆる部分を正確に設計するためコストが高くなる。

同社の製品は技術とコストのバランスが取れていることが特長だ。技術面では、高額な屈折計の代わりにロボットビジョンを採用し、具体的には、R2 Extractにコーヒーを滴下し、二次元CMOSイメージセンサーで液面を撮影、機械学習アルゴリズムによって全反射の境界面を分析することで機器の不安定さや局部的な不純物の干渉といった問題を解決。さらにプリズム表面にごく薄い層を重ねるという工夫により、製造工程とコストを従来の方法に比べ大幅に削減しつつ、計測の正確性と信頼性を高めている。

同社は海外と中国国内で20近くの特許を申請している。初代の製品に比べ、ユーザーからの大量のフィードバックを反映させアップグレードしたR2 Extractにはナノレベルの疎水性膜が付けられ、表面を清潔に保つことができるようになっている。また、デュアル温度センサーを追加し、温度変化による影響を抑えてリアルタイムで液面と温度の変化を捉え、最終的に温度が安定したときの結果を予測する。

製造面では、創業当初から材料、製造、製品の質に厳しく、高い基準の管理システムを採用し、MES(製造実行システム)を取り入れ、全ての部品と製品をトレースできるようにしている。

今後、美味しいコーヒーをより手軽に味わうことができるようにするため、豆の焙煎、挽き具合、淹れ方まで全てをデジタル化して、コーヒーのデジタル化チェーンを構築する計画だ。また同社のアプリ「DiFluid Café」にはコーヒーをテーマとするコミュニティを設けている。このアプリはユーザーのコーヒーのデータを自動的に保存し、コーヒー愛好家がコーヒーについて交流する場として材料や各自のブレンドなどの情報を共有するとしている。

【オリジナル記事・引用元・参照】
https://36kr.jp/215412/


Latest Posts 新着記事

「aiwa pen」誕生!端末を選ばない次世代タッチペン登場

株式会社アイワ(aiwa)は、ワコム株式会社が開発した先進的なAES(Active Electrostatic)方式の特許技術を搭載した新製品「aiwa pen(アイワペン)」を、2025年7月3日より全国の家電量販店およびオンラインショップにて販売開始したと発表しました。マルチプロトコル対応によって、Windows・Android・Chromebookなど様々な端末での利用を可能にし、使う端末を...

完全養殖ウナギ、商用化へ前進 水研機構とヤンマーが量産技術を特許化

絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの持続的な利用に向けた大きな一歩となる「完全養殖」技術の量産化が、いよいよ現実味を帯びてきた。国の研究機関である水産研究・教育機構(以下、水研機構)と、産業機械メーカーのヤンマーホールディングス(以下、ヤンマー)が共同で開発を進めてきたウナギの完全養殖技術について、両者が関連する特許を取得したことが明らかになった。 これにより、これまで不可能とされていたウナギ...

ミライズ英会話、AI活用の語学教材生成技術で特許取得 EdTech革新が加速

英会話スクール「ミライズ英会話」(運営:株式会社ミライズ、東京都渋谷区)は、AIを活用した「完全パーソナライズ語学教材自動生成技術」に関する特許を、2025年5月に日本国内で正式に取得したと発表した。この技術は、学習者一人ひとりの語学レベルや目的、学習傾向に応じて最適な学習教材をリアルタイムで生成・更新するという、従来にない革新的な仕組みである。 本技術の特許取得により、語学教育における個別最適化...

トランスGG、創薬支援で前進 エクソンヒト化マウスの特許が成立

株式会社トランスジェニック(以下、トランスGG)は、2025年6月、日本国内において「エクソンヒト化マウス」に関する特許が正式に成立したと発表した。本特許は、ヒト疾患の分子機構解析や創薬における薬効評価、毒性試験など、幅広い分野で活用が期待される次世代モデル動物に関するものであり、今後の創薬研究において大きなインパクトを与えるものとなる。 ■ エクソンヒト化マウスとは エクソンヒト化マウスは、マウ...

紙も繊維も“東レの特許にぶつかる”──業界を動かす知財の力とは?

繊維、紙、パルプ業界は、古くから日本の基幹産業の一つとして発展してきました。近年では、環境配慮型の製品開発や高機能素材の開発が加速し、技術競争の主戦場となっています。そんな中、特許という形で技術を押さえることの重要性がかつてないほど高まっており、「特許牽制力」すなわち他社の出願・権利化を妨げる力が、企業競争力の鍵を握る要素として注目されています。 2024年の業界分析において、特許牽制力で群を抜く...

万博で出会う、未来のヒント──“知財”がひらく可能性

2025年に開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、世界中から最先端の技術、文化、アイデアが集まる祭典です。その中で、ひときわ注目を集めているのが「知的財産(知財)」をテーマにした展示や体験型イベント。普段は馴染みが薄いと感じがちな“知財”の世界を、子どもから大人まで誰もが楽しく学べる機会が広がっています。 知財とは?難しくない、でもとても大事なこと 「知的財産...

ロボットタクシーの現状|自動運転と特許

「ロボットタクシー」の実用化が世界各地で進んでいます。本コラムでは、その現状とメリット・問題点を簡潔にまとめ、特にロボットタクシーを支える特許に焦点を当てて、日本における実用化の可能性を考察してみます。 世界で進むロボットタクシーの実用化 ロボットタクシーの導入は、主に米国と中国で先行しています。 米国 Google系のWaymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシ...

6月に出願公開されたAppleの新技術〜顔料/染料レスのカラーマーキング 〜

はじめに 今回のコラムは、2025年6月19日に出願公開された、Appleの特許出願、「Electronic device with a colored marking(カラーマーキングを備えた電子デバイス)」について紹介します。   発明の名称:Electronic device with a colored marking 出願人名:Apple Inc.  公開日:2025年6月19...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る