PlayStationコントローラによるユーザー認証システムが特許出願公開

プレイステーションコントローラ特許

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント社(SIE社)は、米国特許商標庁(USPTO)にゲームコントローラによるユーザー認証技術の特許出願を行い、2020年8月20日に当該出願が公開された(公開番号:US2020/0261803A1)。
 PlayStationをはじめとしたゲームコンソールは、インターネットにつながることがすでに一般的になっており、所有者の異なるゲーム機でプレイする際にも、自分のアカウントでログインすることが当たり前のことになってきている(例えば、友人宅のPlayStationで自分のアカウントを使う場合などだ)。これにより、たとえゲーム機の所有者が異なっていても、ユーザーは自分の使用しているコンテンツ(キャラクターなど)を使うことができるため、多くの場合、ログインIDやパスワードを設定して、友人宅で自分のアカウントにログインするといった作業を行うことになる。

他人のゲーム機でログインする際の問題点

しかしながら、他人のゲーム機に自分のアカウントでログインする場合、どうしても他のユーザーにパスワード等を見られてしまうおそれが生じる(たとえ友人であっても抵抗感を感じる人は多いはずだ)。また、ログアウトした後であっても、そのゲーム機の所有者が、ユーザーのプロファイルにアクセスできてしまうという潜在的可能性は否定できない。
一方、友人宅でゲームを行う場合には、異なるユーザーが単一のコントローラを共用することとなるが、ここで上記問題を回避しようとすれば、いちいち別のアカウントでログインしなおすといったことはせず、同一のアカウントで遊ぶこととなろう。
しかし、そのようにするとゲームの成績はログインしている単一のユーザーのアカウント(一般的にはゲーム機の所有者のアカウント)に紐付けられてしまうことになる。
そこで、SIE社は、コントローラを把持しているユーザーの識別をパスワード等によらず行うことができる技術を開発し、上記問題を解決することとしたのである。

機械学習によるユーザー識別技術

 コントローラにはジャイロセンサ、加速度計、磁力計、感圧スイッチ及び親指用スティックが含まれている。これらの操作の1つまたはそれ以上のセンサの相互作用をユーザー特性として検出し、ユーザーを個別に識別する。ジャイロセンサはコントローラの角速度を検出し、加速度センサはコントローラの加速度を検出し、磁力計はコントローラの動きに応じて変化する磁束密度を検出するものだ。
一般的に、ユーザーはコントローラを使用する際に、人それぞれのクセがあり、コントローラを持つ角度や位置、ボタンを押す強さやプレイ中にコントローラが動く速度が異なる。例えば、ユーザーの腕の長さや身長によってコントローラの垂直位置やプレイ中の移動速度が異なるという。コントローラは所定の時間ごとに(例えば2~60秒ごとに)センサからのユーザー特性を読み込み、各ユーザーのユーザープロファイルデータと照合することで、現在コントローラを把持しているユーザーを特定できるという。
 ユーザープロファイルとの照合を周期的に行い、コントローラを把持しているユーザーが異なると判定した場合には、現在のアカウントからの切り替えを選択できる。これにより、コントローラを手にするユーザーが変わった場合においても、いちいちログアウトして新たなログインID、パスワードを入力するなどの煩雑な操作をすることなく、ユーザーアカウントの切り替えをスムーズに行うことができるようになる。
 なお、ユーザーが切り替わったことを伝えるためには、画面上に表示を出したり、音を出すなど、ディスプレイ側からの通知を行うこともできるが、PlayStationのデュアルショック4(登録商標)コントローラのような力覚信号を与えるためのモータを備えるコントローラの場合であれば、コントローラを振動させることによってユーザーにアカウントの切り替えを通知することもできる。
 ユーザープロファイルは、事前に用意しておく必要があり、ロジスティック回帰法による機械学習により認識モデルが構成され、このデータはサーバに保管される。ゲーム機はコントローラから得られるユーザー識別情報に基づいてサーバから適宜ユーザープロファイルをダウンロードし、コントローラを把持するユーザーを特定するのである。

特許出願はされたが、まだ公開されただけ

 USPTOによる出願公開は前述のとおり2020年8月20日にされている。この発明が出願されたのは、SIEの技術メンバーがいるロンドンにて2019年2月19日に英国知的財産庁(UKIPO)に出願されたのが最初である。一般的に、特許出願を行うと、出願日から1年6月後に出願公開されるが、特別な早期審査制度等を利用していない限り、各国での特許審査はこれからだと考えられる。よって、無事に特許権となるか、また、実際の製品に搭載されるかは、まだはっきりとはわからないのが現状だ。
この技術が実装されれば、友人宅で一緒に遊ぶときはもちろん、小さな子供等が遊ぶ際にも、ユーザーを簡単に特定することができることから、有害情報を遮断するための適切なフィルターをかけたりするといった、ユーザー保護の観点からも、大いに役立つものと考えられる。