韓国においても、AIを発明者と記載した特許出願は認められないと出願の無効処分 


韓国特許庁は「自然人でない人工知能(AI)を発明者とした特許出願は許されない」という理由で人工知能(AI)が発明したと主張する特許出願に対して無効処分(※)(2022.9.28)にしたことをJETROが22年10月4日韓国特許庁の発表から次のように伝えている。※出願無効処分になれば、当該出願は最初からなかったものとみなされる。

今回の出願は人工知能の発明、国際特許出願(2021.5.17.韓国国内出願)で、米国の人工知能開発者スティーブン・テイラーが、「DABUS(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)」という名前の人工知能を発明者として、韓国を含めて16か国に国際特許出願した。出願人は、この発明に関する知識がなく、自分が開発した「DABUS」が一般的な知識を学習した後に食品容器などのそれぞれ異なる2つの発明を自ら創作したと主張している。

韓国特許庁は2022年2月、当該特許出願について「人工知能(AI)を発明者としたものを自然人に修正せよ」との補正要求書を通知したが、出願人がそれに応じなかったため、最終的に出願無効処分とした。韓国の特許法および関連判例は、自然人のみを発明者として認めており、このような原則は、米国、英国、ドイツなどをはじめとする多くの国が特許法で規定している。

国際的には、主要特許庁が同じ結論を出しており、米国・英国の裁判所もこの結論を支持した。ただし、昨年7月、豪州の連邦1審裁判所で人工知能を発明者として認めたが、今年4月、連邦2審裁判所では全会一致で1審裁判所の判断が間違ったとした。今年3月、ドイツの連邦特許裁判所では、自然人のみを発明者として認める一方、その氏名を記載する際に人工知能に関する情報を併記することも許されるとの判決があった。

一方、21年12月、韓国特許庁は、米国・欧州・中国等計7つの特許庁が参加した国際会議(コンファレンス)を開催した。参加国は、まだ人間の介入なしに人工知能が単独で発明する技術水準には達しておらず、法制度の改善時に国家間の不一致は人工知能産業の発展に障害要因となり得るため、国際的調和が必須だということで意見が一致した。

特許庁長は「現在の人工知能の発展のスピードを見る限り、いつかは人工知能を発明者として認めなければならない時が来るかもしれない。それに備えて韓国特許庁は、人工知能の発明をめぐる争点について学界・産業界および海外特許庁と継続して議論している」とし、「これからも韓国特許庁は、人工知能の発明に対する議論を主導することで、近づく第四次産業革命時代の知的財産制度を先導できるように努力する」と述べている。

ちなみに日本の特許庁(JPO)は、「AIを発明者と認めない」との方針をホームページで公開しており、その内容によると、「発明者は自然人に限られる」としている。また、米国特許商標庁(USPTO)も同様に「発明者は自然人(individual)」という定義が米国特許法100条(f)にあるため、「AIは発明者に該当しない」という判断をしている。欧州特許庁(EPO)も同様にAIを発明者と認めていない。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2022/221004.html#:~:text=%E3%80%8C%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E3%81%AF%E7%99%BA%E6%98%8E%E8%80%85,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
https://s.japanese.joins.com/JArticle/296178


Latest Posts 新着記事

アップルはなぜ負けた? 医療特許の壁に直面したApple Watch

米国の特許訴訟市場が久々に世界の注目を集めている。発端は、Apple Watchシリーズに搭載されてきた「血中酸素濃度測定(SpO₂)機能」をめぐる特許訴訟で、米国ITC(International Trade Commission)がアップルに対し“侵害あり”の判断を下したことだ。米国では特許侵害が認められると、対象製品の輸入禁止措置という強力な制裁が発動される可能性がある。今回の判断は、App...

デフリンピック開催に寄せて:「聞こえ」を支えるテクノロジー、人工内耳の「中核特許」

2025年11月、日本では初めてのデフリンピックが開催されています。これは、手話をはじめとする、ろう者の文化(デフ・カルチャー)が持つ独自の力強さに光が当たる、歴史的なイベントです。 https://deaflympics2025-games.jp/   デフリンピックの開催は、スポーツイベントであると同時に「聞こえ」の多様性について考える絶好の機会でもあります。聴覚障害を持つ人々にとっ...

10月に出願公開されたAppleの新技術〜Vision Proの「ペルソナ」を支える虹彩検出技術〜

はじめに 今回は、Apple Inc.によって出願され、2025年10月2日に公開された特許公開公報 US 2025/0308145 A1に記載されている、「リアルタイム虹彩検出と拡張」(REAL TIME IRIS DETECTION AND AUGMENTATION)の技術内容、そしてこの技術が搭載されている「Apple Vision Pro」のペルソナ(Persona)機能について詳説してい...

工場を持たずにOEMができる──化粧品DXの答え『OEMDX』誕生

2025年10月31日、化粧品OEM/ODM事業を展開する株式会社プルソワン(大阪府大阪市)は、新サービス「OEMDX(オーイーエムディーエックス)」を正式にリリースした。今回発表されたこのサービスは、化粧品OEM事業を“受託型”から“構築型”へと転換させるためのプラットフォームであり、現在「特許出願中(出願番号:特願2025-095796)」であることも明記されている。 これまでの化粧品OEM業...

特許で動くAI──Anthropicが仕掛けた“知財戦争の号砲”

AI開発ベンチャーのAnthropic(アンソロピック)が、200ページ以上(報道では234〜245ページ)にわたる特許出願(または登録)が明らかになった。その出願・登録文書には、少なくとも「8つ以上の発明(distinct inventions)」が含まれていると言われており、単一の用途やアルゴリズムにとどまらない広範な知財戦略が透けて見える。 本コラムでは、この特許出願の概要と意図、そしてAI...

SoC時代の知財戦争──ホンダと吉利が仕掛ける“車載半導体覇権競争”

自動車産業が「電動化」「自動運転」「ソフトウェア定義車(SDV)」へと急速にシフトするなか、車載半導体・システム・チップ(SoC:System­on­Chip)を巡る知財・開発競争が激化している。特に、ホンダが「車載半導体関連特許を8割増加」させているとの情報が注目されており、同時に中国自動車メーカーが特許活動を爆発的に拡大しているとされる。なかでもジーリー(Geely)が“18倍”という成長率を...

試験から設計へ──鳥大が築くコンクリート凍害評価の新パラダイム

はじめに:なぜ“凍害”がコンクリート耐久性の大きな壁なのか コンクリート構造物が寒冷地・凍結融解環境(凍害)にさらされると、ひび割れ・剥離・かさ上がり・耐荷力低下といった劣化が進行しやすい。例えば水が凍って膨張し、内部ひびを広げる作用や、塩分や融雪剤の影響などが知られている。一方、これらの劣化挙動を実験室で迅速に・かつ実サービスに近づけて評価する試験方法の開発は、長寿命化・メンテナンス軽減の観点か...

Perplexityが切り拓く“発明の民主化”──AI駆動の特許検索ツールが変える知財リサーチの常識

2025年10月、AI検索エンジンの革新者として注目を集めるPerplexity(パープレキシティ)が、全ユーザー向けにAI駆動の特許検索ツールを正式リリースした。 「検索の民主化」を掲げて登場した同社が、ついに特許情報という高度専門領域へ本格参入したことになる。 ChatGPTやGoogleなどが自然言語検索を軸に知識アクセスを競う中で、Perplexityは“事実ベースの知識検索”を強みに急成...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る