ドローンで風力発電設備の点検楽々 福島三技協、労力やコスト大幅減 特許取得で年度内実用化へ


福島県内で農作業や災害対策などさまざまな分野で小型無人機(ドローン)の活用が進む。新たに風力発電設備の点検作業にも利用される見通しとなった。通信関連機器の開発や製造を手がける福島市の福島三技協が試行錯誤を繰り返しながら、ドローンを使った点検作業システムの開発に成功。特許を取得した。詰めの実証実験を急ぎ、年度内の実用化を目指すと福島民報は22年7月18日伝えている。。

風力発電設備は風を受けやすい高所に設置されるため、落雷を受けやすい。落雷を受けた場合、風車の羽根や支柱内に設置してある接地線(ダウンコンダクタ)を通して電気を地中に流す仕組みだ。接地線は電化製品のアースに相当するが、何度か避雷すると断線する。この状態で再び雷被害を受けると設備が損傷してしまう。

福島三技協が特許を取得した風力発電設備の点検イメージは【図】の通り。ドローンを飛ばして羽根に電流を流し、接地線が断線していないかどうかチェックする。設備の点検は現在、高所作業用の重機を風力発電設備近くまで運んだり、専門の高所作業員がロープを使って作業をしたりと時間も手間もかかる。ドローンを使えば労力を減らし、作業時間を短縮できる。点検費用も大幅に削減できるという。

福島三技協は通信アンテナの保守点検などを手がけており、2018(平成30)年ごろに高所作業の効率化などを目的にドローンに着目。開発に乗り出した。

ただ、研究は順風満帆に進まず、試行錯誤の連続だった。例えば、風力発電設備と接するドローンの部品が硬いと互いに衝突し合い、電流を流せない。女性社員の工夫でドローンの接触部分の材料にバーベキューなどで使う網を取り入れた。風力発電設備とスムーズに接触させ、安定して電気を伝えることに成功。技術開発部二課主任の菅野史織さん(39)は「風力発電の一層の振興につながればうれしい。さらに軽量化させるなど改良を重ねたい」と意欲を語った。

特許概要

【公開番号】特開2022-17165(P2022-17165A)
【公開日】令和4年1月25日(2022.1.25)
【発明の名称】飛行体および導通検査方法
【要約】 【課題】本発明の課題は、構造物の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする飛行体を得ることである。
【解決手段】本発明の飛行体100は、飛行体本体110と、構造物の導体に接触させるための導電性部材120と、導電性部材120を飛行体本体100の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構130とを備える。

風力発電設備は電気事業法の保安規制に基づき、安全に運用できるよう定期的な点検などが義務付けられている。2025(令和7)年以降、県内で46基の風力発電設備の稼働を予定している福島復興風力会長の三保谷明さん(68)さんは「メンテナンスの技術革新は発電効率の向上とコストカットが期待できる。今後の開発の行方を注目していきたい」と歓迎した。

県内では南相馬市と浪江町の福島ロボットテストフィールド(ロボテス)などを拠点に、ドローンを活用した新技術の研究、開発が進んでいる。飯舘村に主力工場を置く菊池製作所(本社・東京都)は社内にドローンチームを設立して操縦者を育成している。ドローンを用いて農薬散布や除草などの農作業を請け負う事業者と利用者をマッチングする独自アプリの開発を進めている。

浪江町に生産拠点を整備中の大手コンクリートメーカー会沢高圧コンクリート(本社・北海道苫小牧市)は2024年に町内に格納庫を整備する予定だ。ゲリラ豪雨や津波が発生した際に現場の状況を迅速に把握するドローンを配備する。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.minpo.jp/news/moredetail/2022071898858


Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る