バイデン大統領は知的財産権を守れるのか・・・WTOで暗躍する中国の影


オバマ元大統領とトランプ前大統領は違いが強調されることが多い。しかし、両者の共通点として明確に挙げられる点もある。それは知的財産権を守るということだ。アメリカの知的財産権収入は増加しており、ライセンスフィーによる莫大な収入を守ることは彼らの国益となっている。

知財はイノベーションの要

オバマ元大統領とトランプ前大統領は違いが強調されることが多い。しかし、両者の共通点として明確に挙げられる点もある。それは知的財産権を守るということだ。アメリカの知的財産権収入は増加しており、ライセンスフィーによる莫大な収入を守ることは彼らの国益となっている。

オバマ元大統領はTPP加盟を通じて成長著しいアジア太平洋地域における知財保護を徹底させることを望み、トランプ前大統領は中国に対して知財を巡る不公正な慣行を是正するように強く求めた。

バイデン大統領政権でも同様に新たに発足したIPEFでは知財保護も重要なテーマの1つとなっていくだろう。IPEFの特徴としては中国に次ぐ人口・経済大国であるインドを含めた形で知財保護が議論されることが注目に値するとニュースサイトSAKISIRUは22年6月14日伝えている。

知的財産権はイノベーションを促進する要となるものだ。現代社会では生産設備の有無による優位性は限定的であり、先進国企業は莫大なリソースを注ぎ込む研究開発がもたらす恩恵は大きい。そして、その研究開発費用を回収するための仕組みが知的財産権によるライセンスフィーである。したがって、知財保護がなければ人類の産業発展を望むことは困難となる。しかし、途上国にとっては先進国の知的財産権は“手が届く場所にあっても自由に食べられない”リンゴだ。

実は日本も戦後復興の際に知財管理が甘かったアメリカの技術を利用することで経済成長を実現した経緯がある。その後、アメリカは対日政策の反省を受けて知財管理を強化し、中国など後発の国は知財窃盗に手を染めざるを得ない状況となった。知財を獲得することはその国の経済的成功に直結する問題だ。

現在、WTOで議論されているTRIPS協定(≒知財保護)の免除の議論は、先進国の知的財産権保護を無力化していくためのアリの一穴となる可能性がある。

知財管理にヒビ入れ狙う中国

インドと南アフリカが提案した新型コロナに対するワクチン及び治療薬に対する知財の一時的放棄は極めて重要な問題だ。NGOや途上国などは人道上の問題を主張し、先進国の製薬企業に対して知的財産権を事実上放棄するように求めている。

しかし、本来は知的財産権保護を実現するためのWTOで知財の放棄を求めることは筋違いも甚だしいと言えるだろう。当然であるが、このような動きの背後には知的財産権の管理体制にヒビを入れたい中国が存在している。

中国は国際機関における影響力を確実に強めており、西側の国際秩序を形成する知的財産権保護の枠組み自体を弱める動機を持っている。WTOのような国際機関が知的財産権保護ではなく、その放棄を求める場となることは極めて由々しき事態だ。

したがって、日本政府は先進国の一員として、センチメンタリズムに流されることなく、アメリカの知財保護の取り組みに協力するべきだ。その方針は自国の利益になるだけではなく、結果としてイノベーションを守ることで世界全体の利益を促進することに繋がることになる。

知的財産権管理を緩め、研究開発費にリソースを割く企業がなくなれば、人類全体の社会問題を解決しようとする動機が社会の構成員から失われることになる。

我々は現代社会におけるリンゴは、野生のリンゴではなく、手間暇かけて開発された特別なリンゴであることを認識しなくてはならない。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://sakisiru.jp/29463


Latest Posts 新着記事

「猛暑対策は『我慢』から『設計』へ――特許取得の冷却シリーズが示す新常識」

  もはや日本の夏は“季節”ではなくリスクになった 日本の夏は、すでに「少し暑い季節」ではない。 屋外で働く人にとっては体力を奪う労働環境であり、通勤する人にとっては日々の消耗そのものだ。子どもや高齢者、さらにペットにとっては、体調不良どころか命に関わるリスクに直結することも珍しくない。 そう考えると、猛暑対策グッズの進化は、単なる季節商品の話では済まされない。 いま求められているのは、「暑いから...

「RAGだけでは足りない――『chai+』が示すFAQ型AIの新たな価値」

企業向けAIチャットボットは、いま転換点にある 法人向けAIチャットボットの議論は、この1年ほどでかなり変わった。少し前までは、「生成AIで自然な文章が返る」「社内文書を読み込ませれば答えてくれる」といった点が注目された。だが企業現場で本当に問われているのは、流暢さではない。間違えずに答えられるか、そして業務に組み込めるかである。 その意味で、法人向けRAG型AIチャットボット「chai+」が、特...

3月に出願公開されたAppleの新技術〜バイオメカニクスに基づくモーションマッピング〜

はじめに 空間コンピューティング(XR)のUI設計において、最も困難な課題の一つは「ユーザーの物理的な動き」と「仮想空間の操作」の間のギャップを埋めることです。Appleが公開した特許出願「US 2026/0086652 A1」は、人間の解剖学的制約を逆手に取り、数学的に「操作の揺らぎ」を排除する高度なマッピング手法を提案しています。   発明の名称: MOTION MAPPING FO...

「顔認証は“門番の代わり”ではない――KIDSCALL特許取得が示す保育DXの次の競争軸」

保育現場の負担は、想像以上に細かく、重い 保育現場の課題というと、多くの人は人手不足や安全管理、あるいは保育士の処遇改善といった大きなテーマを思い浮かべる。もちろんそれらは重要だ。だが、実際の現場を支配している負担の多くは、もっと細かく、もっと断続的なものでもある。 夕方のお迎え時間を思い浮かべれば分かりやすい。インターホンが鳴る。職員がモニターを確認する。マスク越しの顔や、たまに来る祖父母・親族...

「防錆塗料はここまで進化した――『水性ローバルONE』が変える現場の常識」

防錆の世界で起きているのは、小さな改良ではない 塗料の話は、一般にはあまり派手なニュースとして扱われない。 だが、社会インフラや工場設備、鋼構造物の維持管理に関わる人にとって、塗料の進化はコストや安全性、環境対応、施工現場の働き方を左右する重要なテーマである。とりわけ鉄を守る防錆技術は、橋梁、プラント、設備保全の世界では、見えないが極めて本質的な基盤だ。 今回のローバルの新製品「水性ローバルONE...

「ゲームの自由は、どこまで囲い込めるのか――任天堂特許拒絶が映す知財戦略の難しさ」

それは「敗北」ではなく、まずは黄信号である 任天堂とポケモン社が保有していた、いわゆる「キャラクターを召喚して戦わせる」米国特許について、米国特許商標庁(USPTO)が非最終の拒絶を通知した。対象は米国特許 US12,403,397 B2 で、USPTO長官が2025年11月に職権で再審査を命じた後、2026年3月のオフィスアクションで全26請求項について拒絶理由が示された、という流れである。これ...

建設ロボット競争の裏で進む“見えない主戦場”

建設DXの本丸は、現場実装のその先にある 建設業界では人手不足、安全性向上、生産性改善を背景に、ロボットや自律制御技術への期待が年々高まっている。だが、本当の競争は、ロボットを作った時点では終わらない。むしろその先にあるのは、「その技術をどれだけ速く、深く、知財として押さえられるか」という争いである。 今回紹介されたMyTokkyo.Aiの事例は、まさにその変化を象徴している。対象となったのは、建...

「市場調査は“人が回す仕事”ではなくなるのか――生成AIが変えるマーケティングリサーチの新常識」

マーケティングリサーチの常識が変わり始めている 「市場を知ること」は、あらゆるビジネスの出発点である。 どんな商品が求められているのか。消費者は何に不満を抱え、何に価値を感じているのか。競合はどこにいて、どんな言葉で市場に働きかけているのか。こうした問いに答えるため、企業は長年、アンケート調査、インタビュー、グループインタビュー、ソーシャル分析、競合調査など、さまざまな手法を使ってきた。 だが、そ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る