「クリスチャン ルブタン」の「レッドソール」二度目の登録商標申請に日本の特許庁は再びNO!


「クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin、以下ルブタン)」が日本の特許庁に、2015年(2019年登録申請却下)に続き商標登録申請していた靴底の赤い色(パントン社の色別ナンバー18-1663TP)が再び6月7日に却下されたとSEVENTIE TWOは22年6月10伝えている。

「ルブタン」は、東京都、大阪府、愛知県に住む女性3149人に対して行った調査結果などを特許庁に示していた。その調査は、靴底の赤い靴を見せてそのブランド名を尋ねるというものだったが、実に43.35%が「ルブタン」と回答したという。どういう3149人なのかは分からないが、驚くべき高率である。
これなら商標登録を認めるべきではないかとも思うが、日本の特許庁の判断は「広く認識されるに至っているとは認められない」というもの。また「排他独占的な使用を認めることは、商品の美感を向上させるために自由に使用が認められていた色彩(赤色)について、使用を不当に制限する結果にもなるから、公益上の観点から支障がある」としている。「靴底の赤が商品の美感を向上させる」とはとても思えないが、どうなのだろう。

「ルブタン」によると、このレッドソールは、オーストラリアやカナダ、フランス、EU、ロシア、シンガポール、英国、米国などを含む50カ国で商標登録されているという。日本で「色彩のみからなる商標」が認められていないわけではない。セブンイレブン、チキンラーメンなどの例があるが、いずれも複数の色で構成されているのが特徴でルブタンのように単色ではない。

これに先立って、「ルブタン」が日本の靴メーカーのエイゾーコレクション社に対して「レッドソール」との酷似から不正競争に該当するとして約4200万円の損害賠償と7点の商品の販売および展示の禁止を求めて東京地裁に提訴していた裁判で、東京地裁が「ルブタン」の訴えを3月にすべて棄却したことも、今回の特許庁の判断に影響していたのではないだろうか。

海外でもこの「レッドソール」をめぐる訴訟はある。2012年に「イヴ・サンローラン(Yves Saint-Laurent)」が「レッドソール」の靴を販売していたことを「ルブタン」は訴えていたが、パリ商業裁判所の一審では「ルブタン」が敗訴したが、二審では上部の部分とのコントラストがある場合はルブタンの主張が認められるが、「イヴ・サンローラン」が販売していた赤いトップに「レッドソール」は商標権の侵害には当たらないと判断。また、2018年に「ルブタン」がオランダのシューズチェーンのヴァン・ヘイレン(VAN HAREN)を訴えた際には欧州司法裁判所が「ルブタン」のレッドソール商標は有効だと判断している。

商標問題に詳しい弁護士は「音楽や美術と違って、ファッションやアパレルの模倣裁判は、その類似性の証明が難しい。ただし、商標登録していれば、その類似性を裁判官に認めさせる可能性は格段に高くなる」とコメントしている。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.seventietwo.com/ja/business/ChristianLouboutin_redsole


Latest Posts 新着記事

トランスGG、創薬支援で前進 エクソンヒト化マウスの特許が成立

株式会社トランスジェニック(以下、トランスGG)は、2025年6月、日本国内において「エクソンヒト化マウス」に関する特許が正式に成立したと発表した。本特許は、ヒト疾患の分子機構解析や創薬における薬効評価、毒性試験など、幅広い分野で活用が期待される次世代モデル動物に関するものであり、今後の創薬研究において大きなインパクトを与えるものとなる。 ■ エクソンヒト化マウスとは エクソンヒト化マウスは、マウ...

紙も繊維も“東レの特許にぶつかる”──業界を動かす知財の力とは?

繊維、紙、パルプ業界は、古くから日本の基幹産業の一つとして発展してきました。近年では、環境配慮型の製品開発や高機能素材の開発が加速し、技術競争の主戦場となっています。そんな中、特許という形で技術を押さえることの重要性がかつてないほど高まっており、「特許牽制力」すなわち他社の出願・権利化を妨げる力が、企業競争力の鍵を握る要素として注目されています。 2024年の業界分析において、特許牽制力で群を抜く...

万博で出会う、未来のヒント──“知財”がひらく可能性

2025年に開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、世界中から最先端の技術、文化、アイデアが集まる祭典です。その中で、ひときわ注目を集めているのが「知的財産(知財)」をテーマにした展示や体験型イベント。普段は馴染みが薄いと感じがちな“知財”の世界を、子どもから大人まで誰もが楽しく学べる機会が広がっています。 知財とは?難しくない、でもとても大事なこと 「知的財産...

ロボットタクシーの現状|自動運転と特許

「ロボットタクシー」の実用化が世界各地で進んでいます。本コラムでは、その現状とメリット・問題点を簡潔にまとめ、特にロボットタクシーを支える特許に焦点を当てて、日本における実用化の可能性を考察してみます。 世界で進むロボットタクシーの実用化 ロボットタクシーの導入は、主に米国と中国で先行しています。 米国 Google系のWaymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシ...

6月に出願公開されたAppleの新技術〜顔料/染料レスのカラーマーキング 〜

はじめに 今回のコラムは、2025年6月19日に出願公開された、Appleの特許出願、「Electronic device with a colored marking(カラーマーキングを備えた電子デバイス)」について紹介します。   発明の名称:Electronic device with a colored marking 出願人名:Apple Inc.  公開日:2025年6月19...

東レ特許訴訟で217億円勝訴 用途特許が生んだ知財判例の転機

2025年5月27日、知的財産高等裁判所は、東レの経口そう痒症改善薬「レミッチOD錠」(一般名:ナルフラフィン塩酸塩)をめぐる特許権侵害訴訟で、後発医薬品メーカーである沢井製薬および扶桑薬品工業に合計約217億6,000万円の損害賠償支払いを命じる判決を下しました 。東レ側は用途特許に関して権利を主張し、一審・東京地裁での棄却判決を不服として控訴。知財高裁は、後発品の製造販売が特許侵害に当たるとの...

Pixel 7が“闇スマホ”に!? 特許訴訟で日本販売ストップの衝撃

2025年6月、日本のスマートフォン市場を揺るがす衝撃的なニュースが駆け巡った。Googleの主力スマートフォン「Pixel 7」が、特許侵害を理由に日本国内で販売差し止めとなったのだ。この決定は、日本の特許庁および裁判所による正式な判断に基づくものであり、Googleにとっては大きな痛手であると同時に、日本のユーザーにとっても深刻な影響を及ぼしている。 中でもSNSを中心に広がったのが、「今使っ...

KB国民銀行が仕掛ける“銀行コイン”の衝撃 韓国金融に何が起きているのか

韓国の大手金融機関がデジタル通貨領域への進出を本格化している。2025年6月、韓国の四大商業銀行の一角を占めるKB国民銀行が、ステーブルコインに関連する複数の商標を出願したことが確認された。これにより、韓国国内における民間主導のデジタル通貨開発競争が新たな局面を迎えつつある。カカオバンクやハナ銀行といった他の主要金融機関もすでに関連動向を見せており、業界全体がブロックチェーンとWeb3技術への対応...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る