ウシの受胎率が年々低下する問題で、牛の卵巣刺激により妊娠率を向上!宮城大学など特許申請


食産業学群の小林仁教授,森本素子教授らのグループが研究開発を進めてきた「ウシの妊孕性向上のための卵巣刺激器具」について、公立大学法人宮城大学は特許申請を行ったことを22年5月11日大学のホームページで公表した。

この研究は,日本中央競馬会畜産振興事業(2019年度~2021年度)に採択され,国際医療福祉大学,東京大学,秋田県立大学といった生殖医療および医工学の研究者と協働し,宮城大学が事業実施主体となって進めてきた研究の成果。

正常な細胞を培養した場合,細胞増殖が進んで細胞が密になり,細胞接触が増えると細胞増殖を停止することが知られており、これは「Hippoシグナル」という,細胞の過度な増殖を抑制し,器官のサイズを適正に保つための伝達回路が関係している。成熟した卵巣は通常Hippoシグナルが制御して一定に保たれているが,小断片化することでこのHippoシグナルが抑制され,休眠していた卵胞が活性化すると考えられている。

微細な針を出して牛の卵巣を切開する器具

小林教授らは,卵巣の一部組織を小断片化する代わりに,生体内の卵巣を複数箇所小さく切開することで断片化に近い状態を作り出し,生体内で卵巣のHippoシグナルを切断できるのではないかと考えた。

そこで,ウシ卵胞表面に近い皮質部分にのみ複数の針で穿刺刺激を与え,Hippoシグナルを切断することで卵胞数の増加を誘導する卵巣刺激器具を開発。検証を繰り返した結果,安全性や効率の向上を図ることができ,これらのデバイスについて特許申請を行うに至った。※特許出願中,出願番号(特願2021-202217)

「卵胞活性化による妊孕性向上プロジェクト」では,2022年度からの畜産振興事業にも採択され、ウシを対象に物理的な刺激による活性化だけでなく,液性因子による卵胞活性化の方法についても検討していく予定だ。

今後は卵巣穿刺器具の活用の範囲を広げ,卵巣機能が低下した卵巣の賦活法としの活用も検討していくことで,産業動物だけでなく生殖補助医療の分野でも妊孕性向上に貢献していきたいと考えているとしている。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.myu.ac.jp/academics/news/folder003/5602/
https://kahoku.news/articles/20220520khn000048.html


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