自動運転の実用化で世界の先端を走るWaymo(ウェイモ)の自動運転特許—当初はGoogleとして出願


自動運転の実用化で世界の先頭を走る米グーグル系Waymo(ウェイモ)。今日の自動運転開発競争の火付け役として、追随する他社を寄せ付けぬ研究開発力を誇る。こうした研究開発力を示す1つの指標に、特許技術が挙げられる。この記事では、日本国内で同社が出願した特許技術の一部をモビリティ業界テック系ニューメディア自動運転LABが22年2月8日紹介している。。

なお、特許情報は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運用する「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を参照した。カッコ内は出願日・出願番号を表す。

自動運転車両カメラのセンサクランプ設計(2019年12月20日/特願2021-532302)

イメージングシステムは、ビデオカメラやスマートフォン、ウェブカメラ、デジタル一眼レフなどによって電子動画を取得するよう構成可能だが、多くの場合、各デバイスが独自の熱膨張係数(CTE)を有するため、イメージングシステムのコンポーネントの位置がずれたり、互いに不適切な間隔になったりする可能性がある。

イメージングシステムのコンポーネントが最初は望ましい形で配置されていても、その配置はデストレッシングやデボウイング、他の材料緩和挙動を引き起こす場合がある温度サイクルのため、時間の経過とともに変化するケースがあるという。しかし、一部の用途では温度サイクルの影響に関係なく、配置を固定したままにすることが望ましく、こうした際に有用な設計方法に関する技術のようだ。

遮蔽を伴う道路利用者反応モデリングに従って自律車両を動作させること(2019年12月3日/特願2021-532040)

自動運転車を動作させる手法で、車両の環境内の遮蔽された車線セグメントを使用し、車両の環境内の道路利用者の挙動を予測する技術だ。

交差点における右左折などの際、自動運転車は車両操縦のタイミングを判定するために周囲の物体の挙動を予測することが求められるが、物体が走行するだろう車線セグメントや、物体が通過すると予測される車線セグメントを遮蔽するかどうかを検出することで、複雑なマルチボディ問題を解決する必要がなく経路再計算などのプロセスを簡素化することができ、自動運転システムが予測や反応をより迅速に行うことができるとする技術のようだ。

車両の内部状態の判別と応答(2019年2月19日/特願2020-541977)

自動運転車が移動や輸送サービスを提供する過程で、車内の状態を自動判別する技術だ。

ドライバーレスの自動運転車においては、車内の画像を人間のオペレータに直接送って確認してもよいが遠隔オペレータとのやり取りに待ち時間が発生し、乗員がシートベルトを外して車両周辺を移動する場合など、特定の状況では問題となるケースがあるという。また、車両が通信可能エリアにない場合や車両のコンピューティングデバイスと接続できないエリアにある場合、このプロセスが無効になることもあるという。

こうした課題に対し、車両内の所定の場所で1つ以上の可視マーカを識別するための画像処理や、識別した1つ以上の可視マーカに基づいて車両の内部状態を判別すること、判別した内部状態を使用して応答アクションを特定すること、応答アクションを実行するために車両を制御すること――といった工程を踏むことで効果的に応答することが可能になるとしている。

まとめ―自動車メーカーの高い壁、テクノロジー企業が超える日は?
Waymoは海外において、乗客をピックアップする場所を正確に特定する技術や、衝突した際に車両の部材を軟化させ衝撃を和らげる技術など、さまざまな特許を取得しているようだ。

なお、特許庁が2021年2月に発表した特許出願技術動向調査によると、2014~2018 年の間に日米欧独中韓で出願された自動運転関連技術は計5万3,394件で、1位トヨタ、2位フォード、3位デンソー――とトップ10は大手自動車メーカーやサプライヤーが占めている。グーグル・ウェイモは10位圏外だ。

自動運転における車両制御関連技術などはまだまだ既存メーカーが強さを発揮しているようだが、将来新参のテクノロジー企業がランクインを果たす可能性も十分考えられる。業界のイノベーションに期待したい。


【オリジナル記事・引用元・参照】
ttps://jidounten-lab.com/u_33830


Latest Posts 新着記事

ロボットタクシーの現状|自動運転と特許

「ロボットタクシー」の実用化が世界各地で進んでいます。本コラムでは、その現状とメリット・問題点を簡潔にまとめ、特にロボットタクシーを支える特許に焦点を当てて、日本における実用化の可能性を考察してみます。 世界で進むロボットタクシーの実用化 ロボットタクシーの導入は、主に米国と中国で先行しています。 米国 Google系のWaymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシ...

6月に出願公開されたAppleの新技術〜顔料/染料レスのカラーマーキング 〜

はじめに 今回のコラムは、2025年6月19日に出願公開された、Appleの特許出願、「Electronic device with a colored marking(カラーマーキングを備えた電子デバイス)」について紹介します。   発明の名称:Electronic device with a colored marking 出願人名:Apple Inc.  公開日:2025年6月19...

東レ特許訴訟で217億円勝訴 用途特許が生んだ知財判例の転機

2025年5月27日、知的財産高等裁判所は、東レの経口そう痒症改善薬「レミッチOD錠」(一般名:ナルフラフィン塩酸塩)をめぐる特許権侵害訴訟で、後発医薬品メーカーである沢井製薬および扶桑薬品工業に合計約217億6,000万円の損害賠償支払いを命じる判決を下しました 。東レ側は用途特許に関して権利を主張し、一審・東京地裁での棄却判決を不服として控訴。知財高裁は、後発品の製造販売が特許侵害に当たるとの...

Pixel 7が“闇スマホ”に!? 特許訴訟で日本販売ストップの衝撃

2025年6月、日本のスマートフォン市場を揺るがす衝撃的なニュースが駆け巡った。Googleの主力スマートフォン「Pixel 7」が、特許侵害を理由に日本国内で販売差し止めとなったのだ。この決定は、日本の特許庁および裁判所による正式な判断に基づくものであり、Googleにとっては大きな痛手であると同時に、日本のユーザーにとっても深刻な影響を及ぼしている。 中でもSNSを中心に広がったのが、「今使っ...

KB国民銀行が仕掛ける“銀行コイン”の衝撃 韓国金融に何が起きているのか

韓国の大手金融機関がデジタル通貨領域への進出を本格化している。2025年6月、韓国の四大商業銀行の一角を占めるKB国民銀行が、ステーブルコインに関連する複数の商標を出願したことが確認された。これにより、韓国国内における民間主導のデジタル通貨開発競争が新たな局面を迎えつつある。カカオバンクやハナ銀行といった他の主要金融機関もすでに関連動向を見せており、業界全体がブロックチェーンとWeb3技術への対応...

トヨタ、ホンダ、日産におけるインホイールモーター特許の出願状況と技術的優位性

はじめに 近年、自動車業界における電動化の波は急速に進展しており、特にインホイールモーター技術は電気自動車(EV)の駆動方式として注目を集めています。インホイールモーターとは、車輪内に直接モーターを組み込む技術であり、駆動効率の向上や車体設計の自由度拡大など、多くのメリットを持つため、世界中の自動車メーカーが開発競争を繰り広げています。 本稿では、日本の自動車業界を代表するトヨタ、ホンダ、日産の3...

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池:さらなる光電変換効率の向上へ

次世代太陽電池技術の最有力候補として注目されるペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、従来の太陽電池の光電変換効率を大きく上回ることが明らかになってきました。この革新的デバイスの実用化に向け、すでに様々な製造技術が開発されています。今回紹介する米国特許US11251324B2もその一つです。 https://patents.google.com/patent/US11251324B2/ 本コラ...

包装×保存×AI=知財革命──「Tokkyo.AI」で実現する食品技術の特許化最前線

1. はじめに:食品業界が直面する知財化の課題 昨今、食品メーカーを取り巻く環境は、フードロス問題の深刻化や消費者の安全・安心志向の高まりなどにより、新たな包装設計や保存技術の開発が急務となっています。革新的な包装材料やプロセスが次々と生み出される中、知的財産(IP)面での迅速かつ戦略的な対応が差別化の鍵を握ります。 しかし、多くの企業では「開発ドメインと知財部門のコミュニケーション不足」「特許調...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る