分厚い判決文、うずたかく積まれた関連書類…。「紙文化」の総本山ともいえる裁判所が、デジタル化の動きを加速させていることをTHE SANKEI NEWSが22年4月12日伝えている。
最高裁は今年に入り、現在ファクスなどでやり取りしている民事裁判の書類を、インターネット上で提出できるシステムを開発。今月下旬から本格運用を始める。3月には、提訴から判決までの手続きをオンライン化する民事訴訟法の改正案が国会に提出された。「全面IT化」はまだ先だが、関係者は「現行法下でもできることから変えていきたい」と意気込む。
ボタン一つで
最高裁が開発したのは「民事裁判書類電子提出システム(mints=ミンツ)」。PDF形式の書面データをアップロードすると裁判所に提出され、相手方にも届く仕組みだ。やりとりした書面一覧を専用サイト上で確認したり、自身のパソコンでダウンロード、印刷したりもできる。
これまでファクスか郵送で裁判所に持参するかしていた、主張を記載した準備書面や証拠の写しなどの書類が対象。ウェブ提出を可能にするため、今年1月に最高裁規則を変更した。ファクス送信が認められていない訴状などについては、引き続き、郵送か直接提出の必要があるという。
当面は原告、被告に代理人弁護士がおり、双方の弁護士が利用を希望する場合に使うことを想定。今月21日から大津、甲府両地裁で本格運用を開始し、今後は東京、大阪両地裁の知的財産権を扱う部署などでも試験運用を始める予定だ。
システムの開発には昨年、最高裁に設置されたデジタル推進室が全面的にかかわった。同推進室の担当者は「直感的に使えるよう、画面上のボタンを少なくした。情報共有がスムーズになり、訴訟当事者や裁判所の全員にメリットがある」と話している。
3年後を目標に
裁判手続きのIT化をめぐっては平成30年、内閣官房が設置した有識者会議が、
現行法下でテレビ会議の活用を進める「フェーズ1」
新法に基づき弁論や争点整理などの運用を改善する「フェーズ2」
法改正や機器環境を整備した上でオンライン申し立てなどを行う「フェーズ3」
の3段階に分けて進めていくべきと提言した。
これを受けて現在、経済界などからの要望が多い民事分野で改革が進む。令和2年に非公開の争点整理にウェブ会議が導入され、新型コロナウイルス禍もあって積極的に活用されてきた。加えて昨年には、離婚や相続などの問題解決をはかる家事調停でもウェブ会議が取り入れられた。
さらに今年3月、令和7年度までに提訴から判決まで、民事裁判手続きの全面オンライン化を目指す民事訴訟法の改正案が、国会に提出された。
原告側が訴状データをオンラインで提出、被告側が閲覧した時点などで送達されたとみなす▽口頭弁論や証人尋問のウェブ会議化▽審理の長期化を避けるため「半年以内に結審、さらに1カ月以内に判決を言い渡す」訴訟手続きの新設-などをうたっており、実現すれば民事裁判をめぐる状況は劇的に変わりそうだ。
一方で、改正案ではいわゆる「デジタル弱者」への配慮から、代理人を選任しない「本人訴訟」についてはオンライン提訴の義務化から除外された。古川禎久法相は「(半年以内の審理終結制度は)当事者の審理期間に対する予測可能性を高める観点から、重要な意義がある。(デジタル弱者などへの)懸念を解消すべく、国会審議の場などでしっかり説明を尽くしていきたい」としている。
刑事には課題も
一方、刑事分野でも今年3月、警察や検察、裁判所、弁護士会などの代表からなる法務省の検討会が、オンラインでの令状請求・発付、証拠書類の電子データ化などを含む捜査・公判手続きのIT化についての報告書をまとめた。
今後、刑事訴訟法などの改正に向けて法相が法制審議会に諮問する見通しだが、「個人情報の扱いや、関係機関を結ぶネットワークのセキュリティー確保が課題となる」(法曹関係者)とみられる。(原川真太郎)
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.sankei.com/article/20220412-57NJQNNVNRJAZOT7PQEXDREG34/photo/H3BKW6DJJRLPNDR74EEPKRDXLM/
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
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