丸井G元役員がエポスカードを巡る特許で古巣を訴訟、異例の職務発明の訴訟のポイントは―

丸井グループの元常務執行役員が、傘下のエポスカード社長在任時に生み出した発明の対価の一部支払いを求めて同社を東京地方裁判所に提訴したとDIAMONDonlinが22年4月1日伝えている。元役員は発明が業績に大きな貢献を果たしたとして、受け取るべき対価は約90億円に上ると主張している。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

クレジットカード業界で勝ち組とされるエポスカードで、元幹部が古巣にいわば“レッドカード”を突き付ける異例の展開となった。

小売業のイメージが強い丸井Gの成長をけん引するのはエポスカードだ。丸井Gの2022年3月期の連結営業利益は365億円となる見込みだが、エポスカードを中心とするフィンテック事業はそれを上回る410億円に達する予定だ。

訴えを起こしたのは、丸井Gの常務執行役員を21年に退任した瀧元俊和氏だ。瀧元氏は04年秋、マルイカード(現エポスカード)発足時、カード・クレジット企画部長に就任。12~16年にはエポスカードの社長を務めた。カード業界では、瀧元氏は最後発のエポスカードを勝ち組に押し上げた立役者として知られる。
訴状などによると、瀧元氏はエポスカードの社長だった13年秋、ポイントサービスに関する新たな仕組みを発明した。

そのサービスは1年後の14年秋から導入された。14年に特許出願したその発明で、エポスカードは数百億円に上る利益の増加が見込めるという。

瀧元氏側は丸井Gには当時、職務発明の対価を支払う規定などが存在せず、報奨金などを受け取っていないと主張する。その上で、受け取るべき発明対価の金額を約90億円とし、今回の訴訟では、その一部である1億円と遅延損害金の支払いを求めている。

一方、丸井Gはダイヤモンド編集部の取材に対し「訴状が届いていないため、回答致しかねます」としている。

職務発明を巡っては、青色発光ダイオードの開発者でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が、勤務先の精密機器メーカー、日亜化学工業を相手取り、約8億4000万円受け取って和解した事例が有名だ。

がん免疫薬「オプジーボ」の特許を巡る訴訟では、小野薬品工業が京都大学の本庶佑特別教授への解決金や京都大学への寄付を合わせ、約280億円を支払うことで昨年和解した。

従来、職務発明を巡る訴訟は、研究開発による製品や薬などが中心だった。だが、今回は「ビジネスモデル特許」と呼ばれる、ビジネスの方法や仕組みに先進性がある発明に与えられる特許が対象となる。知的財産訴訟に詳しい弁護士は、「ビジネスモデル特許を巡る職務発明の対価の訴訟は極めて珍しい」と話す。

丸井Gのようなサービス業では、ビジネスモデル特許が増えてきているにもかかわらず、製造業や製薬会社などと比べ、発明の報奨金に関する規定などを設けていない企業も少なくない。今回の訴訟は、そうした実情に一石を投じることにもなりそうだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://diamond.jp/articles/-/300748

* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。