動で害虫防除と着果促進を生み出す―。東北特殊鋼と東北大学が共同開発した磁歪(わい)材料を用いた磁歪振動装置が、農業分野で活躍が期待されていることを、日刊工業新聞のニュースイッチが22年3月6日伝えている。。
宮城県内のトマト栽培施設での実証試験などを踏まえ、産学官による研究グループが同装置を使った害虫の防除技術の特許を2021年12月に取得した。東北特殊鋼は23年度をめどに製品化を計画している。
特許取得は「振動農業技術コンソーシアム」(代表=電気通信大学)による共同研究としての成果。電通大、森林総合研究所、東北特殊鋼、宮城県農業・園芸総合研究所など7者が共同で、振動による防除技術を確立した。研究グループは振動発生装置を設けたトマト栽培施設で、振動が寄生する害虫の密度を低減することなどを確認した。
磁歪振動装置には東北特殊鋼と東北大が共同開発した振動発電機能を持つ磁歪材料を用いた。磁場の変化により異なった伸縮をする鋼板を組み合わせた磁歪クラッド材で装置を製作した。東北特殊鋼は、新分野開拓の一環として磁歪振動装置での農業分野への参入を視野に入れている。
実験は宮城県農業・園芸総合研究所(宮城県名取市)のトマト栽培施設で害虫となるオンシツコナジラミに対する振動の防除効果を調査した。化学農薬に依存しない害虫防除技術の開発が求められる中、研究グループは昆虫が振動を感じて行動する習性に着目していた。同研究所の関根崇行上席主任研究員は「総合的病害虫管理(IPM)の実践につながる」と話す。
実験では上部パイプに振動装置を設置。このパイプにワイヤを垂らしてトマト植物体に振動が伝わる仕組みを構築した。装置の駆動にはハウス内に設けている電源を使った。特に効果があったのが周波数300ヘルツの振動。ある条件で与えると、葉面に寄生するオンシツコナジラミの幼虫の密度が振動なしに比べ半減する結果を得た。一方、30ヘルツの振動試験では、着果促進の効果も確認できた。
振動による防除効果で、害虫同士の接触機会が減り、結果としてハウス内の害虫が減ることにつながる。現時点では草丈や茎の太さについては振動の影響はないという。同研究所の大江高穂技師は「詳細なメカニズムや最適化への検証は継続して取り組んでいる」とし、トマト以外の農作物への応用も見込んでいる。
振動による害虫防止技術は、既存の粘着板や防虫ネットと組み合わせることで、環境保全とともに省力化への期待も高まる。今後東北特殊鋼では、磁歪振動装置の改良を進めつつ「農業分野の開拓に取り組んでいきたい」(高機能材料事業部)としている。
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://newswitch.jp/p/31150
https://kahoku.news/articles/20220313khn000012.html
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
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