昨今注目され、今後も更なる市場の拡大が見込まれている NFT、特許から見る権利化のポイントとは

スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人は、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントを21年9月7日、ASCIISTARTUPで伝えている。

昨今、NFTを利用したサービスが注目を集めているが、NFT(非代替性トークン:Non-Fungible Token)とは、広義には、偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータを指し、狭義には、所有者が明確化された画像や動画などのデジタルコンテンツを指す。

具体的には、ブロックチェーン上に、デジタルコンテンツの取引の履歴を記憶させ、これにより、その所有者が明確になり、これまで容易に複写や転用が可能であったテキスト、画像、および動画といったデジタルコンテンツに資産的価値を持たせることを可能としている。

NFTを用いたサービスは急速に市場が拡大しており、その対象は、ゲーム、デジタルアート、仮想空間等と多岐に渡り、NFT元年とも呼ばれ、グローバルでは広く世間に浸透した2021年には、市場規模が15億ドルに届くとも予測されていた。

NFTでは、ブロックチェーン上に実装されたプロトコルであるスマートコントラクトに、Dapps(自律分散型アプリケーション)に入力された取引情報に基づいた処理を実行させることで、デジタルコンテンツと所有者情報とを紐づけたトークンを発行し、ブロックチェーン上にトークンの所有者の情報を記録してゆく。これにより、トークンに紐づいた所有者が、当該デジタルコンテンツの所有者として記録される。

ユーザーは、自身が所有するデジタルコンテンツの所有権を、自由に他のユーザーに移転(転売)でき、所有権の移転に伴い、トークンと紐づいた所有者情報が、新たな所有者情報に書き換えられる。

これまでは、下記図2のように、デジタルコンテンツが外部サーバー上で管理されていることが一般的だった。一方、サーバーを管理する事業者の管理サービスの停止に伴い、デジタルコンテンツがなくなると、所有権を証明する情報(トークン)のみが残り、所有権が空権化する事態が懸念されるため、デジタルコンテンツのデータをブロックチェーンの内部に組み込むといったデータ構造も検討されているようだ。

NFTのイメージ

では、実際にNFTを利用したサービスにおいて、そこでの特許を取得するうえでの留意事項として、今回、NFTを利用する特許情報について調査を行なった。その結果、NFTに関する特許としては、遅くとも2017年ごろから出願されていることが確認された。

NFTが注目を浴びたのが今年(2021年)であることを考えると、割と早くから出願されていることを確認。また、出願人としては、比較的規模が小さく、実際にブロックチェーンを用いたサービスを展開している事業者からの出願が多く確認された。

いずれの出願も、審査請求期間の3年の経過をまたずに、出願から早い段階で審査請求されていることが共有していた。このため、何れの出願も、明確な権利化の意思のもとで出願されていることが確認できた。

次に、直近の出願状況として、特許情報は、1年半の未公開期間を経て公開されるため、正確な件数等の情報は確認できなかったが、確認できる範囲において件数は増加している傾向があり、今後も益々増加していくものと考えられる。
取得可能な権利としては、「ブロックチェーンによる所有権の管理」という基本的な処理だけでは権利化は難しいと考えられ、実際に、過去に公開された論文の存在を理由として、拒絶理由を受けている出願が確認されたためだ。

一方、どのようなデータの入力をトリガーにして、どのようなデジタルコンテンツの所有権を管理するのか、といった内容では、管理するデジタルコンテンツの性質に即した様々な権利が取得されていることが確認された。

これらはいずれも、出願時に権利化を狙った内容に対して、極端に狭くならない範囲で権利が取得できていると考えられ、このため、例えばゲームの機能に即した処理のように、コンテンツの性質に特化した独自の処理を盛り込めば、権利化できる可能性が高くなるものと認められる。

また、過去の出願の審査経過を確認すると、当初の権利範囲ではブロックチェーンとしての処理を定義していないものの、審査の過程で、従来技術との差異を主張するため、もしくは審査官からの請求項の記載が不明確という指摘に応答するために、ブロックチェーンとしての処理を明確にすることで、権利化されている出願が複数確認された。

このため、権利範囲を広くするためにブロックチェーンを請求項で定義しない場合であっても、スマートコントラクトやブロックチェーン側の構成、および処理について、明細書中に詳細に記載しておくことが、審査段階での備えになると考えられる。

いずれにしても、現時点では出願件数が限られており、比較的広い範囲で権利化できる可能性があるという印象を受けたため、事業化を視野にいれている場合には、出来るだけ早い段階で権利化の準備をすることが重要であると考えられる。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://ascii.jp/elem/000/004/067/4067636/

* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。

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