発明主婦 特許16件、東京都足立区のこばやしさとこさんヒントは日常の「不便」の中に


「こんなのあったら、いいな」を形にした発明品を次々に生み出す主婦がいる。足立区のこばやしさとこさん(54)。ゴキブリ退治をきっかけに発明にハマり、これまでに取得した特許は16 件。数々のアイデアを生み出すこつは「普通に生活すること。その中で見えた不便を逃さないことが大事」だという。そんな発明主婦こばやしさんを東京新聞は22年1月17日に紹介している。

袋に入ったバラバラのパスタから一人前百グラムを素早く正確に取り出したい。そんな思いから生まれたパスタメジャー「スパッとゲット一人前」。目玉クリップのような見た目だが、挟む部分の径が、ちょうど一人前をつかみ取れる大きさになっている。目分量でパスタを作りすぎてしまった経験から生まれたこの発明は、2008年に都内の企業が商品化。19年までに累計7万個が売れたこばやしさんの代表作だ。

発明に目覚めたのは、25 年ほど前。当時、はいはいができるようになった長男が家中を動き回っていた。そんな中、ゴキブリが出現! 床でも壁でも何でも触ってしまう長男を思うと、殺虫剤を使う気にはなれなかった。

死骸にも触れたくなかったので掃除機で吸い込んでみたが、ごみパックを取り出す瞬間は恐怖だった。「掃除機のパイプの入り口で捕獲できないかな」。もともと工作好きだったこともあり、自ら道具を作ろうと思い立った。

完成したのが、トイレットペーパーの芯の片方の先端に排水溝用ネットを二重に取り付けた「捕獲器」だった。ネットが付いていない方を掃除機の先端にはめて使う。吸い込んだゴキブリはネットに捕獲され、芯ごと捨てられる優れもので、こばやし家では必需品となり、友人からも好評だった。

テレビ番組で個人でも特許を取れることを知ったこばやしさんは1999年に発明学会に入会。同年には、捕獲器の特許を出願。だが、当時は取得に数万円の費用がかかり、断念した。

特許は取得できなかったが、発明のおもしろさに魅入られた。オムライスに上手にケチャップで絵が描ける口金、バーベキューの時に紙コップが風で倒れるのを防ぐ、穴の開いたかまぼこ形コースターなど次々とアイデアを形にしていった。

初特許は2008年。粗塩を細かく均一にふることができる計量スプーン「フリーシオ」だった。焼き鳥に粗塩をうまくふりかけられなかった経験がきっかけで開発はスタート。台所のコンロでアクリル板を熱して成形するなど試行錯誤を繰り返し、小さな穴をいくつも開けた板を、計量スプーンに取り付けた。

主婦など非課税者は特許取得にかかる費用が大幅に安くなる制度変更も追い風になり、これまで十六件の特許を取得。フリーシオや犬のふんをキャッチする「わんぽろキャッチ」など数々の発明を自ら商品化し、ネットで販売している。

アイデアを具現化するまでは試行錯誤の連続。特許取得のため書類も書かなければならない。企業が乗り出さなければ商品化の製造コストは自己負担。「手間もお金もかかるし、全然もうかっていない」と笑う。それでも発明はやめられない。「世界で自分が最初に考えたアイデアだという証明の特許は魅力的。さらに使ってくれた人に『すごく便利』と言ってもらうことが何よりうれしいから」と語る。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=154631&pid=568411


Latest Posts 新着記事

トランスGG、創薬支援で前進 エクソンヒト化マウスの特許が成立

株式会社トランスジェニック(以下、トランスGG)は、2025年6月、日本国内において「エクソンヒト化マウス」に関する特許が正式に成立したと発表した。本特許は、ヒト疾患の分子機構解析や創薬における薬効評価、毒性試験など、幅広い分野で活用が期待される次世代モデル動物に関するものであり、今後の創薬研究において大きなインパクトを与えるものとなる。 ■ エクソンヒト化マウスとは エクソンヒト化マウスは、マウ...

紙も繊維も“東レの特許にぶつかる”──業界を動かす知財の力とは?

繊維、紙、パルプ業界は、古くから日本の基幹産業の一つとして発展してきました。近年では、環境配慮型の製品開発や高機能素材の開発が加速し、技術競争の主戦場となっています。そんな中、特許という形で技術を押さえることの重要性がかつてないほど高まっており、「特許牽制力」すなわち他社の出願・権利化を妨げる力が、企業競争力の鍵を握る要素として注目されています。 2024年の業界分析において、特許牽制力で群を抜く...

万博で出会う、未来のヒント──“知財”がひらく可能性

2025年に開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、世界中から最先端の技術、文化、アイデアが集まる祭典です。その中で、ひときわ注目を集めているのが「知的財産(知財)」をテーマにした展示や体験型イベント。普段は馴染みが薄いと感じがちな“知財”の世界を、子どもから大人まで誰もが楽しく学べる機会が広がっています。 知財とは?難しくない、でもとても大事なこと 「知的財産...

ロボットタクシーの現状|自動運転と特許

「ロボットタクシー」の実用化が世界各地で進んでいます。本コラムでは、その現状とメリット・問題点を簡潔にまとめ、特にロボットタクシーを支える特許に焦点を当てて、日本における実用化の可能性を考察してみます。 世界で進むロボットタクシーの実用化 ロボットタクシーの導入は、主に米国と中国で先行しています。 米国 Google系のWaymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシ...

6月に出願公開されたAppleの新技術〜顔料/染料レスのカラーマーキング 〜

はじめに 今回のコラムは、2025年6月19日に出願公開された、Appleの特許出願、「Electronic device with a colored marking(カラーマーキングを備えた電子デバイス)」について紹介します。   発明の名称:Electronic device with a colored marking 出願人名:Apple Inc.  公開日:2025年6月19...

東レ特許訴訟で217億円勝訴 用途特許が生んだ知財判例の転機

2025年5月27日、知的財産高等裁判所は、東レの経口そう痒症改善薬「レミッチOD錠」(一般名:ナルフラフィン塩酸塩)をめぐる特許権侵害訴訟で、後発医薬品メーカーである沢井製薬および扶桑薬品工業に合計約217億6,000万円の損害賠償支払いを命じる判決を下しました 。東レ側は用途特許に関して権利を主張し、一審・東京地裁での棄却判決を不服として控訴。知財高裁は、後発品の製造販売が特許侵害に当たるとの...

Pixel 7が“闇スマホ”に!? 特許訴訟で日本販売ストップの衝撃

2025年6月、日本のスマートフォン市場を揺るがす衝撃的なニュースが駆け巡った。Googleの主力スマートフォン「Pixel 7」が、特許侵害を理由に日本国内で販売差し止めとなったのだ。この決定は、日本の特許庁および裁判所による正式な判断に基づくものであり、Googleにとっては大きな痛手であると同時に、日本のユーザーにとっても深刻な影響を及ぼしている。 中でもSNSを中心に広がったのが、「今使っ...

KB国民銀行が仕掛ける“銀行コイン”の衝撃 韓国金融に何が起きているのか

韓国の大手金融機関がデジタル通貨領域への進出を本格化している。2025年6月、韓国の四大商業銀行の一角を占めるKB国民銀行が、ステーブルコインに関連する複数の商標を出願したことが確認された。これにより、韓国国内における民間主導のデジタル通貨開発競争が新たな局面を迎えつつある。カカオバンクやハナ銀行といった他の主要金融機関もすでに関連動向を見せており、業界全体がブロックチェーンとWeb3技術への対応...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る