「Re就活」「リシュ活」、表記は異なる呼び方の似た商標権侵害―大阪高裁で和解


リシューカツとリシュカツ―。表記は異なるが呼び方の似た就職活動サービスの商標権をめぐる訴訟が大阪高裁(山田陽三裁判長)であり、混同の可能性を認めた一審大阪地裁判決を退ける形で10月に和解していたことが13日、分かったことをJIJI.COMは21年11月13日伝えている。

第二新卒向けサイト「Re就活」を運営する東証1部上場の就職情報会社「学情」と、学生の履修履歴を採用に活用するサイト「リシュ活」を運営する一般社団法人履修履歴活用コンソーシアムが争った。

学情側は2018年、「求人を出す企業が混同する」として、商標使用の差し止めと1億円の損害賠償を求め提訴した。

社団法人側は「業務が異なり誤認は生じない」と主張。「リシュ活」は19年に商標登録され、特許庁は学情側の異議申し立てを退けていた。

今年1月の大阪地裁判決は、検索エンジンが不正確な表記に対応しており、「求職者は外観よりも呼称をより強く記憶してサービス利用に至ることが多い」と判断。学生は混同しやすいとし、商標使用差し止めと44万円の賠償を命じた。
一方、大阪高裁では特許庁の判断を尊重する形で協議が進展。和解条項で学情側は、商標権侵害がないことを認め、社団法人側はインターネット上の住所であるドメイン名の使用を取り下げた。

社団法人の釘崎清秀代表理事は「全く別物だという学生や企業の人事から見た印象と司法判断はこんなに違うのかと驚いたが、実質的には『逆転勝訴』だ」と歓迎。学情の担当者は「今後も適切な権利確保に努めたい」としている。

元特許審査官の植村貴昭弁理士は「『Re』の視覚的な印象は強力だ。音は似ていても無視できないほど大きな差異があれば類似とはならない」と指摘。社団法人側から「ただ乗り」する動きがなかったことも有利に働いたと評価した。

<参考>特許庁の判断 (特許庁決定 1370272から本件商標と引用商標の類否)

本件商標と引用商標は、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、本件商標は、「リシュ」の片仮名と「活」の漢字との組合せよりなるのに対し、引用商標は、「Re」の欧文字と「就活」の漢字との組合せよりなるものであるから、外観上、明確に区別できる。

また、称呼についてみるに、引用商標は、「就活」の文字の語頭に「Re」の欧文字を付した構成からなるところ、語頭に「re」を有する親しまれた英単語である「reaction(リアクション)」、「reform(リフォーム)」、「reset(リセット)」、「regain(リゲイン)」が、「re」の直後の音節にアクセントを置いて発音されること、及び、「就活」の文字は「シューカツ」と一気に称呼される親しまれた略語であることに照らすと、その全体から生ずる「リシューカツ」の称呼は、第1音節の「リ」の音を明瞭に発音した上で、第2音節の「シュー」の音にアクセントを置いて「シューカツ」と一気に称呼されるものといえる。

さらに、当該「シュー」の音は、長音を伴うために、より強調して聴取されるものである。
これに対し、本件商標から生じる「リシュカツ」の称呼は、短く平坦に称呼されるものである。

してみれば、これらの差異が、5音又は4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいい難く、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはなく、十分に聴別し得るものである。

加えて、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標は、「再度の就職活動」程の観念を生じるものであるから、両者は、観念において紛れるおそれはない。

そうすると、本件商標と引用商標は、語尾の「活」の文字が共通するものの、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであるから、各商標から生じる外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021111300200&g=soc


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