特許出願するかの判断基準など、 起業家が知るべき知財戦略について

特許庁ベンチャー支援班は、近畿経済産業局が取り組む「U30関西起業家コミュニティ」とともに、知財セミナーイベント「起業家が知るべき、サービスリリース前にやっておきたい知財とPR」を2021年7月8日にオンラインで実施した。

このセミナーイベントには、特許庁総務部企画調査課ベンチャー支援班の今井悠太氏、経済産業省 近畿経済産業局 産業部 創業・経営支援課の久本氏、iCraft法律事務所 弁護士・弁理士の内田誠氏などが参加し、特許庁や経済産業省が提供するスタートアップ向け支援施策や、スタートアップ知財戦略の考え方などを紹介。なお、イベントの司会進行は、角川アスキー総合研究所 ASCII STARTUPのガチ鈴木が担当した。

今回のイベントの一部であるが、スタートアップの知財戦略のポイントについて、iCraft法律事務所 弁護士・弁理士の内田誠氏が、知財戦略の意識の持ち方や考え方について次のように語っている。

iCraft法律事務所 弁護士・弁理士の内田誠氏

まず、特許権の取得について「スタートアップの中には、特許権を取得することが目標となっていて、特許権を取得する目的が失われているケースをよく目にする」と指摘。

特許権とは本来、製品やサービスの模倣などを防ぐために特許権を取得して事業を守るためのものである。ただ、特許権を取得したこと自体をアピールしたいというスタートアップも存在しているそうで、内田氏はそういったスタートアップとのヒアリングを通して特許権取得についての本来の目的を見つめ直すようにアドバイスしているそうだ。

また、スタートアップは知財についての知識が乏しく、そもそも何が発明なのかも分かっていない場合があるとし、「スタートアップでは、じっくり時間をかけてヒアリングを行なうとともに、競合他社のビジネスを踏まえて特許発明の権利範囲(クレーム)を検討する必要がある」と説明。

「無理な特許出願は行なわない」ことも非常に重要だ。自社のサービスや製品が権利範囲外になっているにもかかわらず特許権を取得しようとするのは無駄にコストをかけるだけであるとともに、ベンチャーキャピタルなどの投資家は権利範囲外の特許権をどれだけ取得していても「この特許権では意味がない」と報告書をあげる場合もあるとのことで、無理な特許権を取得すべきではないと内田氏は述べた。

そして、特許権はその権利範囲が広ければ広いほど他社のサービスや製品を排除しやすくなる。そのため、特許出願をする場合には、権利範囲がなるべく広くなるように発明の構成を最小にするように意識しているそうだ。

例えば、そのサービスや製品を実現する上でどうしても避けられない技術的な部分に絞って出願すれば、第三者が模倣をしたときに特許権侵害を指摘しやすくなるため、そのように出願するのがポイントだという。

合わせて、設計変更などで簡単に回避できないような発明の構成にすることも重要だという。設計変更が簡単にできるようになっていると、特許権侵害を簡単に回避でき、その特許権を取得した意味がなくなってしまうため、この点も非常に重要となる。

ところで、スタートアップでは同じような分野の競合が複数存在することが多い。そこで、市場を席巻するには競合が進むであろう事業の将来の方向性を見極めて、あらかじめその事業に関する特許権を取っておくというのもビジネス判断としてありうるという。

同様に、将来、自社のサービスや製品が実装する可能性のある構成があれば、まだ実装していないとしても特許出願が可能なので、それらをあらかじめ特許出願して権利化しておけば、将来のサービスや製品を守れることに繋がる。

こういったことを踏まえつつ、内田氏がスタートアップ企業の発明の発掘を行なう場合には、そのスタートアップ企業の人と一緒に会議を行なってクレーム案や明細書の内容を検討するようにしているという。

これは、「将来は(知財戦略について)スタートアップが自走できなければならない」(内田氏)と考えてのことで、知財に関する手続きや作業など内田氏が実際に行なっている内容をスタートアップの人に見てもらったり一緒に行なうことで学ぶ機会を与え、OJTをしているそうだ。


【オリジナル記事・引用元・参照】
https://ascii.jp/elem/000/004/065/4065873/

* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。

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