「林家木久蔵ラーメン」を製造販売する福岡の食品会社が、木久扇の事務所を相手取り、約4200万円の損害賠償請求訴訟を起こしたことをYAHOOニュースは2021年9月18日伝えている。
訴状によると同社は2005年、事務所と1食5円の対価支払い契約を締結。今年になり商標権の期限切れが判明したため、対価支払いの停止を求めた。ところが事務所から一方的に契約解除を通告され、出荷停止や在庫処分などの損害を受けたという。ということだそうです。
問題となった登録商標は「林家木久蔵」(4867275号)と思われ、権利者は、林家木久扇(当時、林家木久蔵)さんのマネジメント事務所。ラーメンやスープ等の飲食料品類を幅広くカバーしている。2005年5月に登録されているが、2015年の最初の更新料納付手続が行われていため、権利抹消となっている。
出典:特許情報プラットフォーム
商標権は10年(場合によって5年)ごとに更新料を支払っていれば永遠に権利を保持できるが、逆に更新手続を行わなければ権利抹消になってしまう。特許庁から更新日のお知らせのようなものは来ないので、期日の管理は権利者側がしっかり行う必要がある。
個人や小規模企業が代理人を通さないで自分で出願した場合に更新を忘れて権利が抹消されてしまうケースがたまに見られが、今回の商標登録に関しては、大手の法律事務所が代理人になっているので更新を失念したということは考えにくい。
料金を節約するために権利者が更新管理を自分でやることを選択して失念したか、あるいは、更新時(2015年)には木久扇に改名済みだったのでもう不要と勘違いしてしまったのかもしれない。
なお、この登録には登録直後に専用使用権(独占的ライセンス)が設定されており、これは、上記の食品会社との契約に基づくものと思われる。
また、この権利者(マネジメント事務所)は、「林家木久蔵ラーメン」、「林家木久蔵」、「林家木久扇」を今年の6月に出願しているがまだ審査中とのこと。従って、少なくともその時には、旧登録が権利切れになっているのを認識していたと思われる。
他人氏名を含む商標を登録しない商標法の規定(4条1項8号)を気にされる方もいるかもしれないが、林家木久蔵(木久扇)という氏名(本名)の人はいないと思われるので問題ない。「著名な芸名」には該当すると思いますが、それは林家木久蔵(木久扇)さんが承諾書を提出すればよく、これらの出願は正規のマネジメント事務所によるものなので問題にはならないだろう。
裁判の行方については、商品会社との木久扇さんのマネジメント事務所の間の契約書の中身がわからないので断定的なことは言えないが、記事をよく読むと4200万円の損害賠償は、(商標権消滅によるもめ事から発生した)契約解除による在庫処分などに対するものなので商標制度の話の範疇外だ。
ただ、一般的に言えば、専用使用権を設定した商標権の権利を不注意で途中で消滅させてしまったのであれば、権利者は受け取ったライセンス料の少なくとも一部を返還する責を負うことになると思われる。
【オリジナル記事・引用元・参照】
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20210918-00258892
* AIトピックでは、知的財産に関する最新のトピック情報をAIにより要約し、さらに+VISION編集部の編集を経て掲載しています。
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