メルカリハロ チャンスを逃さない、求人情報の自動化ソリューション
「必要な人材を、最速で確保したい企業」と「自分に合った仕事情報を、最適なタイミングで知りたい求職者」——この両者のニーズを同時に満たすのは、これまで難題とされてきました。
メルカリが開発した3つの特許技術(特許第7558618号、第7559282号、第7559283号)は、この課題を解決する新たな方法を提供します。「公開のタイミング管理」、「優先度に基づく情報公開」、「公開/終了の自動化」という3つの機能で、求人情報の柔軟な公開と効率的な管理を実現します。これにより、求職者が最適なタイミングで情報を受け取り、企業は必要な人材をスピーディーに獲得できるようになります。
今回は、これらの特許技術の内容を解説し、“待たせない求人情報”の秘密を深堀りします。
株式会社メルカリによる一連の3つの特許「第7559283号」「第7558618号」「第7559283号」は、求人情報の「公開タイミングの管理」、「求職者のグループ化」、および、「柔軟な条件変更機能」に関するものです。
これらの特許は、求人情報の公開時期や終了時期の自動管理、求職者ごとの優先度付けによる情報公開、及び募集人数が満たされない場合の条件変更提案といった機能を通じて、柔軟かつ効率的な求人情報の提供を実現するものです。
これにより、企業は求職者の特性や行動に応じた戦略的な求人管理が可能となり、求職者に対しても適切なタイミングで最適な情報を提示できる仕組みが提供されます。
これらの特許技術は、メルカリが提供するアプリ「メルカリハロ」に適用されています。
発明の背景
労働市場において、企業は求める人材を効率的に採用するために、求人情報を効果的に公開する必要があります。従来の求人情報の公開方法には、以下のような課題がありました。
1. 求人情報の一律な公開
■従来の求人プラットフォームでは、特定の日時に求人情報をすべての求職者に一斉に公開する方法が一般的でした。これにより、企業の求める人材がタイムリーに情報を得られないという問題が生じていました。
2. 応募者の属性や行動の考慮不足
■求職者は、スキル、経験、希望する勤務時間帯が異なりますが、従来の求人情報はすべての求職者に同一の内容が提示されていました。これにより、企業が必要とする求職者に情報が届かないケースが多発していました。
3. 人材不足時の柔軟な条件変更が困難
■募集人数が満たされない場合、企業は求人条件(賃金、勤務時間、雇用形態など)を変更する必要がありますが、これを手動で行うことは煩雑な作業でした。従来のシステムでは、条件変更が遅れ、必要な人材を確保できないことが課題でした。
4. 求人情報の公開終了管理の手間
■求人情報の公開期間が終了する際、従来の求人プラットフォームでは手動で求人情報を非公開にする必要がありました。企業がこれを忘れると、不要な求人が掲載され続け、ユーザーに混乱を招く可能性がありました。
これらの課題を解決するために、求人情報の管理を自動化し、求職者の属性や行動に応じた情報公開の仕組みが求められました。
課題の整理
(1) 公開時期の管理 (特許第7558618号, 特許第7559283号)
課題
求人情報を特定の求職者グループに対して「いつ公開するか」を制御する機能が必要です。これにより、求職者が最も求人情報を確認しやすいタイミングに情報を提供し、応募率を高めることができます。
従来の問題
■求職者の活動時間(例:日中の就職活動、夜間の副業希望者)を考慮せず、すべての求職者に同時に求人情報が公開されていました。
■特定の時間帯に求職者が求人情報を確認する確率が高いにもかかわらず、すべての情報が一斉に公開されるため、求職者が求人を見逃してしまうことが発生していました。
(2) 優先度の管理 (特許第7559282号)
課題
求職者のスキルや属性に基づいて、企業が望む人材に優先的に求人情報を提供する仕組みが求められます。これにより、企業は求める人材を迅速に確保することが可能になります。
従来の問題
■求人情報はすべての求職者に一斉に公開されるため、企業の求める人材(例:特定のスキルを持つ人)を効果的にターゲティングできませんでした。
■結果的に、求人情報が多数の不適切な応募者によって埋め尽くされ、企業の選考コストが増大するという課題がありました。
(3) 募集条件の柔軟な変更 (特許第7558618号)
課題
求人の応募状況が想定通りに進まない場合、賃金や勤務時間の条件変更を柔軟に行える仕組みが必要です。これにより、求職者の応募を促進し、速やかに募集人数を満たすことが可能になります。
従来の問題
■募集が想定どおり進まない場合、企業は求人条件を手動で変更し、変更後の求人情報を再度公開する必要がありました。
■しかし、企業はこの作業を迅速に実行することが難しく、応募率の低下を招く原因となっていました。
どんな発明?
発明の目的
この発明の目的は、前述した、求人の公開タイミング、求職者の優先度付け、条件変更の自動提案という3つの主要な課題を解決することです。これにより、「メルカリハロ」では、企業が求める人材に対して効果的かつ柔軟に求人情報を提示することが可能となり、求職者の満足度と企業の採用効率を大幅に向上させることが可能となりました。
発明の詳細
(1) 特許第7558618号
【技術概要】
本発明は、ユーザグループごとに求人情報の公開時期を柔軟に制御する技術を提供するものです。企業は特定のタイミングで特定の求職者グループに求人情報を公開できるため、応募率の向上が期待できます。
【技術の特徴】
1. 求人情報の公開タイミングの設定
■ 求職者グループごとに公開する時期を事前に指定可能。
■ 例えば、午前中に活動する求職者グループには午前10時に求人情報を公開し、夜に活動する求職者グループには夜18時に公開するような管理ができます。
2. 募集条件変更の提案
■ 募集人数が満たされない場合、求人条件(給与、勤務時間など)をシステムが自動的に提案し、条件の見直しを行います。
3. 図1:求人情報の公開スケジュールのイメージ図
求職者グループAには締切日の10日前に公開し、求職者グループBには5日前に公開する様子が示されています。これにより、異なる求職者グループに異なるタイミングで情報を提示することが可能です。もちろん、細かい公開時刻を設定することも可能です。
4. 図2:条件変更提案のフロー図
募集人数が満たされない場合、例えば「賃金を5%上昇させますか?」 などの変更提案が企業サーバに表示されます(S209)。
5. 図3:ユーザグループの選択画面
この図は、事業者が選択する求人募集画面を示しています。例えば、求人日、勤務時間、締切時間の設定、求人全体の募集人数、基本時給、公開設定などが事業者により設定されます。
6. 図4:グループごとの条件設定画面
この図は、選択したユーザグループに対して具体的な条件を設定する画面の一例を示しています。例えば、優先度の高いグループから順に、公開時期、募集人数、給与条件などを設定することができます。これにより、各グループに適した条件で求人情報を公開することが可能となります。
(2) 特許第7559282号
【技術概要】
本発明は、技術情報の公開において、求職者の属性(スキルや経験)に基づいて公開優先度を制御するものです。
【技術の特徴】
1. 優先度の設定
■ 企業は、求職者を複数のグループに分け、それぞれのグループに「高」、「中」、「低」などの優先度を設定することができます。
■ 例えば、スキルが高い求職者グループには優先度「高」を設定し、求人情報を他のグループよりも先に公開します。
2. 優先度に基づく求人情報の公開
■ 優先度の高い求職者には、他のグループよりも早く求人情報が公開されます。
■ これにより、優先度の高い人材が他社に先に取られることを防ぐことが可能です。
3. 図1:優先度に基づく情報公開のフロー
■優先度の高いグループは先に公開され、一定時間後に次のグループが公開されるフローチャートが示されています。
(3) 特許第7559283号
【技術概要】
本発明は、求人情報の「公開開始時期」と「公開終了時期」を自動的に管理する技術を提供するものです。
【技術の特徴】
1. 公開/終了のタイミング管理
■ 企業は、求人情報の公開開始時期と終了時期をあらかじめ指定することができます。
■ 例えば、求職者が特定の時間に活発に動く場合、そのタイミングに合わせて公開を開始し、公開期間が終了すると自動的に非公開にします。
2. 自動的な求人情報の停止
■ 公開終了時期が到来した場合、自動的に求人情報が非公開になります。これにより、企業が手動で情報を非公開にする作業が不要になります。
ここがポイント!
これら一連の特許の技術的意義としては、以下のようにまとめることができます。
1. 企業の採用管理の負担を削減
■これらの特許は、企業が求人情報の公開、終了、条件変更を自動的に管理する技術を提供しています。これにより、企業の採用担当者は日々の管理業務から解放され、業務の省力化が実現されます。
2. 求職者の行動に基づく最適な求人情報の提示
■求職者がアクセスするタイミングに応じて求人情報を最適なタイミングで提示する仕組みが提供されています。
■これにより、求職者が最も求人に応募しやすいタイミングで情報を受け取れるため、応募率が向上します。
3. 優先度を考慮した求人のターゲティング
■求人情報がスキルや属性に応じた求職者に最適化して提供されるため、企業は必要な人材を迅速に確保することが可能です。
■これにより、必要な人材を優先的にターゲティングする求人活動が可能となります。
4. 求人情報の一貫性と陳腐化の防止
■公開/終了時期の自動管理により、期限が過ぎた求人がそのまま掲載されるリスクが回避されます。
■自動的な公開/停止機能により、求人情報の一貫性が確保され、不要な情報が削除されるため、求職者は正確な求人情報を閲覧できます。
未来予想
株式会社メルカリが提供する「メルカリハロ」に関するこれらの特許は、求人情報の公開管理、条件の変更提案、優先度制御、公開/終了の自動化という4つの要素を組み合わせることで、特に以下の2点において、企業と求職者の双方に利益をもたらすものです。
• 企業側は、求人情報の管理を自動化し、手作業を減らしてコストを削減できます。
• 求職者側は、最も適したタイミングで的確な情報を受け取れるため、求人に応募しやすくなります。
これらの技術によって、メルカリハロは、企業と求職者をマッチングするための最適なプラットフォームを実現しています。このような求人情報の効率的な管理技術は、今後も他の人材サービスにも応用が期待されます。
特許の概要
発明の名称 |
I情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 |
出願番号 |
特願2023-201377号 |
特許番号 |
特許7558618号 |
出願日 |
2023年11月29日 |
登録日 |
2024年9月20日 |
審査請求日 |
2023年11月29日 |
出願人 |
株式会社メルカリ |
発明者 |
圓城寺 博 |
国際特許分類 |
G06Q 10/1053 |
経過情報 |
発明の名称 |
情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 |
出願番号 |
特願2024-129274号 |
特許番号 |
特許7559282号 |
出願日 |
2024年8月5日 |
登録日 |
2024年9月20日 |
審査請求日 |
2024年8月5日 |
出願人 |
株式会社メルカリ |
発明者 |
圓城寺 博 |
国際特許分類 |
G06Q 10/1053 |
特願2023-201377号の分割出願 |
発明の名称 |
情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 |
出願番号 |
特願2024-129275号 |
特許番号 |
特許7559283号 |
出願日 |
2024年8月5日 |
登録日 |
2024年9月20日 |
審査請求日 |
2024年8月5日 |
出願人 |
株式会社メルカリ |
発明者 |
圓城寺 博 |
国際特許分類 |
G06Q 10/1053 |
特願2023-201377号の分割出願 |