iRobotの新技術:ルンバがクリスマスに対応


今回のコラムは、2022年11月9日に出願され、2023年5月19日に出願公開されたiRobotのお掃除ロボットについての発明です。特許公開番号は特開2023-070674です。

https://patents.google.com/patent/JP2023070674A/ja?oq=2023-070674

iRobot社は2002年に発売を開始したお掃除ロボット「ルンバ」の世界的ヒットによって一躍有名になったロボットサプライヤーですが、まだまだルンバの改良は続いているようです。

お掃除ロボットが掃除する家庭環境は季節ごとに変化する場合がある

移動式掃除ロボットは、住宅所有者の指示に従って特別な掃除任務や日常の掃除を自律的に実行することができます。これらのロボットは、従来から周囲の環境を自己ナビゲーションしながら、掃除動作を行うことができます。ナビゲーション中にカメラを使用して、環境内の対象物を検知し、これにより掃除効率を高めるとともに、家庭環境内の地図を作成し、適宜更新します。

しかしながら、家庭環境において、地図が生成された後に、環境にいくつかの品目が追加されて、この対象物が追加の掃除対応または検討を個別に必要とすることがあります。一つの例は、クリスマスツリー(ホリデーツリー)の存在です。クリスマスツリーを飾る場合、その周囲には掃除ロボットは侵入してほしくないというニーズがあったり、逆にホリデーツリーとして本物の木を飾る場合には葉っぱが落ちたりして、いつもよりも掃除を念入りに行いたいというニーズも発生する可能性があります。このような場合には追加の掃除ルートが必要となります。しかしながら、クリスマスツリー等が所定位置に置かれるのは、大抵の場合、その年の約1か月間のみであり、地図に恒久的な対象変更を施すのは望ましくない解決策といえます。

この問題に対処するため、この発明では、ロボットがクリスマスツリーのような季節商品を内蔵カメラ等により検知し、季節的な掃除区域を生成するデバイスおよび方法を提案します。ロボットは検知した情報をモバイルデバイスや遠隔サーバに伝達し、季節的な掃除区域を地図上に表示します。このシステムにより、ロボットは季節に応じて掃除行動を変更し、季節が終われば元の掃除パターンに戻ります。これにより、家庭内の掃除をより効果的かつ効率的に行うことが可能となるのです。

単なるロボットの機能追加ではない

この発明の核心は、家庭内の掃除ロボットの適応性と柔軟性を高めることにあります。季節によって変化する家庭環境に対応することで、ロボットは一年を通して最適な掃除を提供できるようになります。これにより、掃除ロボットの利用者は、季節ごとの特別な掃除要求に手間をかけることなく、快適な生活環境を維持できるようになります。

つまり、この発明は、掃除ロボットの機能を進化させるだけでなく、ユーザーエクスペリエンスの向上にも寄与しています。ロボットが自動で環境の変化に対応し、必要に応じて掃除パターンを調整することで、よりスマートで使いやすく、顧客満足度の高い掃除ロボットとなることが期待されます。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

好きなテーマは、#特許 #IT #AIなど新しいもが多めです。




Latest Posts 新着記事

「しなやかでタフ」なカルコパイライト太陽電池の進化戦略

はじめに 太陽光パネルといえば、重くて硬いシリコン製を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし今、次世代技術として「カルコパイライト太陽電池」が静かにその存在感を高めています。 「曲がる太陽電池」カルコパイライトとは? カルコパイライト太陽電池は、銅(C)、インジウム(I)、ガリウム(G)、セレン(S)などを原料とする化合物系の薄膜太陽電池です。これらの構成元素の頭文字をとって「CIGS(シグス)」と...

連邦政府が大学の特許収入を狙う トランプ政権の新方針が波紋

はじめに 米国の大学は、研究開発活動を通じて得られる特許収入を重要な財源としてきました。大学の特許収入は、新しい技術の商業化やスタートアップ企業の設立に活用され、イノベーションの促進に直結しています。しかし、トランプ政権下で、連邦政府が大学の特許収入の一部を請求する方針が検討されており、大学の研究活動やベンチャー企業の育成に対する影響が懸念されています。 特に米国は、大学発ベンチャーの育成や産学連...

脱石炭から技術輸出へ:中国が描くクリーンエネルギーの未来

21世紀に入り、世界各国が環境問題やエネルギー安全保障への対応を迫られるなか、中国はクリーンエネルギー分野で急速に存在感を高めてきた。とりわけ再生可能エネルギー技術、電気自動車(EV)、蓄電池、送配電網、そしてグリーン水素などの分野において、中国は「追随者」から「先行するイノベーター」へと変貌を遂げつつある。なぜ中国が短期間でこのような飛躍を実現できたのか。その背景には、国家戦略、産業政策、市場規...

世界のAI特許6割を握る中国 5G・クラウドを基盤に国際競争を主導

近年、中国はデジタル経済の拡大と技術革新を国家戦略の中核に据え、AIや5G、クラウド、データセンターといった基盤技術において世界を牽引する存在となっている。その象徴的な事実として注目されるのが、人工知能(AI)に関する特許出願件数である。国際特許機関の最新統計によれば、中国からのAI関連特許は世界全体の約6割を占め、米国や欧州、日本を大きく上回る圧倒的なシェアを記録している。 本稿では、中国がいか...

AgeTech知財基盤を強化――パテントアンブレラ(TM)が累計41件出願、AI特許も追加

高齢社会の進展に伴い、健康維持、生活支援、介護軽減を目的としたテクノロジー領域「AgeTech(エイジテック)」への注目がかつてないほど高まっている。その中で、知的財産を軸に事業競争力を高める取り組みが活発化しており、今回、独自の「パテントアンブレラ(TM)」戦略を進める企業が、AI関連特許を含む29件の新規出願を追加し、累計41件の特許出願を完了したと発表した。これにより、類型141件の機能をカ...

フォシーガGE、特許の壁を突破 沢井・T’sファーマの挑戦

2025年9月、日本の医薬品市場において大きな話題を呼んでいるのが、SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)」の後発医薬品(GE、ジェネリック)の登場である。糖尿病治療薬の中でも売上規模が大きく、近年では慢性腎臓病や心不全の領域にも適応拡大が進んだフォシーガは、アストラゼネカの主力製品のひとつである。その特許の“牙城”を突破し、ジェネリック医薬品の承認を獲得したのが沢井製薬とT&#...

電池特許はCATLだけじゃない――AI冷却から宇宙利用まで、注目5大トピック

近年、知的財産の世界では、特定の企業やテーマに関心が集中しやすい傾向がある。中国・CATLの電池特許戦略や、AIをいかに効率的に冷却するかといったテーマは、テクノロジー産業の今を象徴するキーワードだ。しかし同時に、その裏側には見落とされがちな知財動向や、将来を左右しかねない新しい潮流が潜んでいる。本稿では、「電池特許CATL以外にも」「特集AIを冷やせ」を含め、いま注目すべき5本のトピックを整理し...

バックオフィス改革へ ミライAI、電話取次自動化で特許取得

AI技術の進化が加速するなか、企業のバックオフィスや顧客対応の現場では「省人化」「自動化」をキーワードとした取り組みが急速に広がっている。その中で、AIソリューションを展開するミライAI株式会社は、従来の電話取次業務を人手に頼ることなく「完全無人化」するための技術を開発し、特許を取得したと発表した。この技術は、音声認識・自然言語処理・対話制御を組み合わせ、従来課題とされてきた「誤認識」「取次精度の...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る