10月に出願公開された新技術 Appleのモジュール型コンピュータデバイス


10/5にAppleから出願公開された今回の技術は、モジュラー型のコンピュータデバイスに関するものです。発明の名称は「Modularized Computing and Input Devices(モジュラー化されたコンピューティングおよび入力デバイス)」となっています。

参考:https://patents.google.com/patent/US20230315166A1/

再構成可能なコンピューティングデバイスの必要性

最近のコンピューティングデバイスの進歩により、デバイスを動かすためのコンポーネント(プロセッサ、バッテリー、メモリ、統合回路など)のミニチュア化やサイズの縮小が可能になりました。その結果、特定の使用目的や環境に効率的なプラットフォームを提供するために、異なるフォームファクターを持つコンピューティングデバイスが採用されています。

例えば、モビリティが求められる場合(バスや公園のベンチでニュース記事を読むなど)には、ラップトップやタブレットデバイスが一般的に使用されます。また、ユーザーがより大きなディスプレイやフルサイズのキーボードを望む場合には、デスクトップコンピューティングデバイスが好まれます。コンピューティングデバイスは従来、単一の特定の使用(例えば、スケッチ、仮想・拡張現実アプリケーション、ソーシャルメディアの閲覧など)に合わせて構築されていましたが、現在においては幅広い使用目的や環境において高品質なユーザー体験を提供するために、再構成可能なコンピューティングデバイスが望ましいとされています。

これまでにも「再構成可能」という観点では、モニターとキーボードとを分離可能に構成することで、ラップトップPCとタブレットPCの形態を取りうるコンピューティングデバイスが知られています(microsoft surfaceの一部機種や、iPad Proに対するmagic keyboardなどが該当するでしょう)。

さまざまな用途や環境に対応させたい

本発明のデバイスは、さまざまな用途や環境で機能を向上させるために、モジュラーまたは再構成可能になっています。例えば、コンピューティングデバイスは、ベース102とベースに操作可能に連結されたヒンジ110を含み、ヒンジはベースに回転可能に取り付けられ、ベースにコンポーネントまたは電子デバイス(例えば、ディスプレイ)を保持するように設定されています。

ベースは、タッチまたは近接タッチ入力をベースの入力面114で検出するために、1つ以上のセンサーと通信する入力面を定義したり、または、1つ以上のセンサーは、コンピューティングデバイスのユーザーの手のジェスチャーなど、入力面の上にある物体の動きを検出することができます。

例えば、キーボードが入力面上に配置されるなど、1つ以上のデバイスまたはコンポーネントが入力面の上に配置されることがあります(つまり、114の面の上にキーボードを乗せる)。ベースの入力面には、1つ以上のディスプレイ、ノブ、スイッチ、ボタン、ターンテーブル、またはその他の入力デバイスが配置されることもできるとされています。

Surface等のように、キーボードやサブディスプレイを単体で脱着するのではなく、ベース102の上に置く、というのがポイントです。

ベースの上に置くものは1つである必要はないし、平面である必要もない

ベースの上に、キーボードやタッチセンサ、サブディスプレイを単体で置くことは誰でも考えることですが、複数のモジュールを組み合わせることも可能です。

また、ベースに乗せていない入力デバイスから任意の通信手段(例えばブルートゥースなど)で入力を行うことも当然可能です。

また、ベースに乗せる複数のデバイスが、ベースの面積と同等である必要もありません。

さらには、ベースに乗せるデバイスが平坦である必要もありませんし、ベースを直接タッチ操作することもできるとされています。

ユーザー中心の設計により、多様な用途に適応可能

本発明のデバイスは、その柔軟性とカスタマイズ可能な機能を提供します。これにより、音楽制作からビジネスワーク、エンターテイメントまで、さまざまなシナリオでこのデバイスを並行して活用できます。今後、Appleがどのような製品として具体化するのかは不明ですが、iPad Proと組み合わせて拡張デバイスのような位置づけで提供されるのが現実的かもしれません。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

好きなテーマは、#特許 #IT #AIなど新しいもが多めです。




Latest Posts 新着記事

世界初!宿泊予約者の希望に応じて自動紹介するビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」取得

2025年、日本発の革新的な宿泊予約関連技術が注目を集めている。旅行者の利便性を格段に向上させるビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」が、このたび世界で初めて取得されたのだ。これは、旅行中や移動中に次の宿泊地をまだ決めていない旅行者に対し、自動で宿泊施設を提案・紹介するという仕組みで、観光業界、特に地方創生を推進する自治体や宿泊事業者から大きな期待が寄せられている。 この基本特許技術は、...

猛暑に革命!ワークマン『TSU-KEDカーゴパンツ』の涼しさが異次元すぎる

夏の暑さが年々厳しくなるなか、通勤もレジャーも「涼しさ」がファッション選びの鍵になってきました。そんな中、機能性ウェアで注目を集め続けるワークマンが放つ新作パンツが話題沸騰中。それが、「TSU-KED(ツーケッド)カーゴパンツ」です。 「まるで穿いていないかのような軽さと涼しさ」──この一言で一躍注目を浴びているこの商品は、現在特許出願中のテクノロジーを搭載。今回はこのTSU-KEDカーゴパンツの...

ニコリオ、「ラクビプレミアム」で腸内環境改善に関する新特許取得 独自性と競争力を強化

2025年、株式会社ニコリオは、同社の主力サプリメント「ラクビプレミアム」に関連する新たな特許を取得した。この特許は、腸内環境の改善に関する有効成分の組成およびその摂取方法に関するものであり、健康食品市場における同社製品の独自性と競争優位性をさらに強化することが期待されている。本稿では、今回の特許取得に至った背景、ラクビプレミアムの特長、そして今後の展望について詳述する。 ■腸内環境と健康の関係:...

パナソニックGの休眠特許が生む次世代産業 スタートアップ連携投資の全貌

技術の再活用で新産業創出とオープンイノベーション加速を狙う パナソニックホールディングス(以下、パナソニックG)は、これまで活用されずに社内に眠っていた「休眠特許」を軸に、スタートアップ企業への投資および協業を本格化させる新たな戦略を打ち出した。大企業が保有する膨大な知的財産を、スタートアップの機動力や柔軟な発想と掛け合わせることで、社会課題の解決、新たな市場の創出、そして日本経済の再活性化を狙う...

トヨタグループ、知財DX加速 AIサムライが特許補正業務を刷新

トヨタ自動車グループの知的財産関連企業が、人工知能(AI)を活用した特許補正支援システムを開発し、実務での運用を開始した。社内では「AIサムライ」と呼ばれるこのシステムは、特許庁から送付される拒絶理由通知や意見書に基づき、わずか数分で補正案の草稿を自動生成できるという。特許補正作業はこれまで人手に大きく依存してきたが、AIの力でスピードと精度を大幅に向上させることで、知財戦略の次世代化を目指す動き...

次世代モビリティー特許出願、浜松地域で初の実態調査 中小企業の活躍は限定的に

はじめに 浜松地域イノベーション機構は、地域経済の活性化と産業競争力の強化を目的に、近年注目が高まっている次世代モビリティー分野における特許出願の実態調査を初めて実施した。調査結果によると、特許出願数自体は堅調に推移しているものの、地域の中小企業による特許出願は限定的であり、今後の技術開発や知財戦略における課題が明らかになった。本稿では、調査の背景や内容、そして中小企業の現状と今後の展望について詳...

謎の新型セダン発見!日産『EVO』中国向けPHEVか?

近年、自動車業界はEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)へのシフトが加速しており、各メーカーが次世代モデルの開発に力を注いでいます。そんな中、日産が中国市場向けに開発中と噂されるPHEVセダン「EVO」の市販型と思われる新たな特許出願車両が発見され、注目を集めています。今回はその謎のセダンのデザインや性能の可能性、市場戦略などを詳しく分析し、今後の日産の動向を予測してみました。 ...

日本のAI特許戦略に赤信号──中国・米国の特許攻勢とその意味

近年、人工知能(AI)技術の進展はめざましく、産業構造や社会生活を大きく変えつつある。そんな中、AI関連の特許出願数は技術力やイノベーションの先進性を測る重要な指標の一つだ。2025年現在、世界のAI特許出願において日本は「周回遅れ」と指摘される状況にある。その背景には、中国の爆発的な特許出願数の伸びと米国の堅実な技術蓄積がある。日本は果たしてこの現実をどう捉え、今後どのような戦略を描くべきか。本...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る