「チョコザップ」開業1年余りで80万人会員~常識を突き抜けるアイデアと強い思い込みがマーケティングの基本


瀬戸健(せと・たけし)氏、RIZAPグループ社長です。1978年福岡県生まれ。明治大学商学部中退で2003年、健康コーポレーションを設立し「どろあわわ」や「豆乳クッキーダイエット」など、通販でのヒット商品で一世風靡したアイデアマン。

創業間のないころ東中野の事務所で何度がお会いさせていただきましたが、当時、早々の2006年には札幌証券取引所アンビシャス上場を果たし、アイデアマンでゼロイチは得意だけど、継続性が弱点と思われるところもあったがM&Aにも積極的で、いまでは40社のグループ会社を擁し、20167RIZAPグループに名称変更している。

その瀬戸氏が久しぶりに持ち前のアイデアマンぶりでヒットしている。同氏率いるRIZAPグループ(本社:東京都新宿区)が運営する会員制トレーニングジム「chocoZAP」(チョコザップ)だ。テレビCMもやっているので皆さんご存知のことか。筆者の街にも昨年の12月駅前にオープンしている。

チョコザップがサービスを開始したのは227月のこと。フィットネスジム業界では異例の急成長を遂げ、23815日時点ですでに会員数は80万人、店舗数は全国32都道府県に880店を突破し国内フィットネスジムの会員数で日本一を達成したと発表している。RIZAPの圧倒的な知名度を生かし一年あまりでこの展開、このスピード、この思いっきりの良さが経営手腕ですね。

チョコザップに代表される最近話題の「コンビニジム」。明確な定義はなさそうだが、そのほとんどが月額5000円以下の高からず安からずの設定で、24時間営業の気軽に利用できる小規模なジムを言っている。なかには無人、シャワー無し、トイレ無しも。5分、10分のスキマ時間に気軽に利用してもう、鍛えるというより気分転換の為のジムといえる。これがいま大流行りだ。ちなみに「コンビニジム」はRIZAPグループが商標権者となっている。

商標登録の概要

商標 : コンビニジム
商標権者: RIZAPグループ株式会社
登録番号: 第6712237
登録分類: 第9類、第35類、第45類 出願日 : 202210月6日
登録日 : 2023年6月28

5,000憶円規模と言われるスポーツジム市場。そのすそ野拡大を狙った「コンビニジム」。まだ始まったばかりでゼロがイチになったわけだが、昨年末の日経トレンディの2023年ヒット予測の第一位が「コンビニジム」だった。すでに競合も多く乱立気のこの新領域。コナミスポーツの「ゆるジム通い」、先行している「カーブス」は店舗数約2000でライトなジムユーザーを取り込み、すそ野は大きく拡大している。そのなかでトップに躍り出たチョコザップ。それに同調するかのようにザイラップ株式会社の株価がここに来て大きく上昇している。

急激にひろまったサービスや商品は急速に縮小するとも言われる。すなわち事業の持続性、採算性が問われるのがこれから。そこに明確な事業戦略、都度都度の戦術がないと2年ぐらいのブームで縮小することにもなりかねない。定額性スポーツジム事業の持続性、採算性で肝心なのは継続性だ。ライトユーザーは「飽きる」のも早く脱会もライトなので。

その継続性、定額性=サブスクビジネスでのポイントはLTV(顧客生涯価値)だ。つまりこの点でも会員の継続性、継続率においていかに採算性分岐を超えるか、さらに高められるかにかかっている。定額料金を押さえ獲得のハードルを下げ獲得した客は、離脱もはやい。それぐらい気軽な付き合いとなり、そのスピードも速い。

このLTVの維持・拡大については、同社の健康関連商品の通販ビジネスでのノウハウが活きてくる点では他社より優位だと言える。そのポイントは顧客を「飽きさせない」来店動機の拡張、つまりはコンビニ化が重要になる。もうひとつ、顧客関係性において無接触サービスの点も通販ビジネスと共通している。一方、目立たないところでの法人契約。いわゆる企業の福利厚生としての取り込みが事業の基盤を支えるポテンシャルがあることにも注目した。

事業リソースとして利便性の高いやがて1000ヶ所超えの「箱もの」と、100万人を超える会員。さらには健康を想起させるブランド力。ライトジムユーザーを飽きさせないサービスメニューの開発力と「アプリ」を駆使したハートフルな顧客接触ノウハウ。瀬戸氏は「コンビニジム」を超えて「健康コンビニ」としての戦略で事業性を見据えてるのかもしれない。


ライター

渡部茂夫

SHIGEO WATANABE

マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表

通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。




Latest Posts 新着記事

村田製作所、“特許力”で世界を制す 年々強化される知財戦略の全貌

電子部品業界において、グローバルで確固たる地位を築く日本企業・村田製作所。同社はスマートフォン、自動車、通信インフラなど、あらゆる先端分野で不可欠な部品を供給し続けているが、その競争優位性の核心には、他社を圧倒する「特許力」がある。 村田製作所の特許出願数は、国内外で年々増加しており、特許庁が公表する「特許資産規模ランキング」においても常に上位を占める。2020年代以降、その特許戦略はさらに洗練さ...

トヨタ・中国勢が躍進 2024年特許登録トップ10に見る技術覇権の行方

2024年における日本企業の特許登録件数ランキングが、特許庁公表の「特許行政年次報告書2025年版」により明らかになりました。その結果、国内企業上位10社には、自動車関連企業が3社名を連ね、さらに中国企業の技術力と知財戦略の成長が際立つ結果となりました。本稿では、トップ10企業の顔ぶれを振り返るとともに、自動車関連企業の動向、中国勢の勢い、そして今後の展望について解説します。 ■ ランキング概要:...

メルク、英ベローナを100億ドルで買収 キイトルーダ後を見据えCOPD新薬を強化

米製薬大手メルク(Merck & Co.、日本ではMSDとしても知られる)は、英国バイオ医薬品企業ベローナ・ファーマ(Verona Pharma)を約100億ドル(1兆4,700億円)で買収することで基本合意に至りました。買収金額は現地株式の米国預託株式(ADS)1株あたり107ドルで、これは直近の株価に対して約23%のプレミアムを上乗せした水準です。 背景:キイトルーダの特許切れと「ペイ...

知財覇権争い激化 中国企業が日本の次世代技術を標的に

中国企業、日本で次世代技術の知財攻勢強化 特許登録が急増 日本における次世代技術分野で、中国企業による特許登録件数が急増している。AI(人工知能)、量子技術、電気自動車(EV)、通信(6G)といった先端分野での出願が目立ち、知的財産権を活用したグローバル戦略の一環とみられる。中国勢の台頭により、日本国内企業の技術優位性や将来的な事業展開に影響を及ぼす可能性があるとして、専門家や政策当局も注視してい...

「aiwa pen」誕生!端末を選ばない次世代タッチペン登場

株式会社アイワ(aiwa)は、ワコム株式会社が開発した先進的なAES(Active Electrostatic)方式の特許技術を搭載した新製品「aiwa pen(アイワペン)」を、2025年7月3日より全国の家電量販店およびオンラインショップにて販売開始したと発表しました。マルチプロトコル対応によって、Windows・Android・Chromebookなど様々な端末での利用を可能にし、使う端末を...

完全養殖ウナギ、商用化へ前進 水研機構とヤンマーが量産技術を特許化

絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの持続的な利用に向けた大きな一歩となる「完全養殖」技術の量産化が、いよいよ現実味を帯びてきた。国の研究機関である水産研究・教育機構(以下、水研機構)と、産業機械メーカーのヤンマーホールディングス(以下、ヤンマー)が共同で開発を進めてきたウナギの完全養殖技術について、両者が関連する特許を取得したことが明らかになった。 これにより、これまで不可能とされていたウナギ...

ミライズ英会話、AI活用の語学教材生成技術で特許取得 EdTech革新が加速

英会話スクール「ミライズ英会話」(運営:株式会社ミライズ、東京都渋谷区)は、AIを活用した「完全パーソナライズ語学教材自動生成技術」に関する特許を、2025年5月に日本国内で正式に取得したと発表した。この技術は、学習者一人ひとりの語学レベルや目的、学習傾向に応じて最適な学習教材をリアルタイムで生成・更新するという、従来にない革新的な仕組みである。 本技術の特許取得により、語学教育における個別最適化...

トランスGG、創薬支援で前進 エクソンヒト化マウスの特許が成立

株式会社トランスジェニック(以下、トランスGG)は、2025年6月、日本国内において「エクソンヒト化マウス」に関する特許が正式に成立したと発表した。本特許は、ヒト疾患の分子機構解析や創薬における薬効評価、毒性試験など、幅広い分野で活用が期待される次世代モデル動物に関するものであり、今後の創薬研究において大きなインパクトを与えるものとなる。 ■ エクソンヒト化マウスとは エクソンヒト化マウスは、マウ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る