フレキシブルディスプレイを用いた伸縮可能なスライド式ディスプレイ
Appleが2019年に仮出願(Provisional Application)をして以降、継続出願をし続けているエキスパンダブルディスプレイの出願公開が2023年5月18日にありました。
公開番号はUS2023/0156939A1、継続出願元はいずれも特許化されており、米国特許No. 11602062 及び No. 11071218で確認することができます。よって、まったくの「新技術」というわけではないのですが、新しい事項を追加して継続的に出願しているものですので、Appleが当該技術の特許化を行うことで独占権を得ようとしていること、及びAppleの考える最新の技術トピックが含まれているものといえます。
今回出願公開された内容についてみてみると、フレキシブルディスプレイを使って拡張状態のハウジングと、非拡張状態にあるハウジングとで視認可能エリアを分け、ハウジングとフレキシブルディスプレイとを細長い部材(スプリングなど)で結合することを特徴としています。
ハウジングとフレキシブルディスプレイとの関係は、概念的には上図のようなもので、非拡張時にはディスプレイの一部がハウジング内に格納される(もしくは視認エリアからはずれる)というものです。
このハウジングとディスプレイとは、例の一つとして、スプリングで両者をつなぐことで拡張状態と非拡張状態をスムースにスライド移行できるようにしたのが今回の出願です。
よこからの断面図をみればよくわかりますが、このように接続しておくことで、「戻り」がよくなることが期待できます。
簡単な模式図で表せば、次の図のように、ディスプレイの視認可能範囲を拡張することができることが理解できますね。これにより、必要に応じて作業領域を広げたり、仕事用と遊び用(ゲーム用)とでディスプレイのサイズを適宜調整することが期待できます。携帯端末に応用してもよいですし、ある程度のサイズのある卓上モニターに応用しても、それぞれ多様な使い方ができそうです。
今回のコラムはAppleが継続出願しているエキスパンダブルディスプレイについて紹介しました。画面サイズに関してはウルトラワイドディスプレイなどがゲーム業界等で話題になる一方、あまりに巨大なディスプレイは机の大きさや作業スペースと合わないといった問題もよく目にします。
適切なサイズ調整が可能なディスプレイが実現すれば、自分の机のサイズにあわせたり、使用するソフトウェアに合わせたサイズのモニターを手軽に用意できることになり、仕事の生産性も向上しそうです。実用化されるかは不明ですが、ちょっと気になる技術です。
ライター
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