コロナ感染拡大は年が明けて丸二年、しかも日本においてもオミクロン株の急拡大で生活や経済への影響はまだまだ続く。そのなかで、ご存知の通りダメージを受けている業界もあれば、フォローの風となっている業界も商品もある。その最たるものが通販だ。なかでもネット通販。商品ではやはりマスクではないだろうか。
そして、コロナ禍にあって店舗では100円ショップや300円ショップに代表されるワンプライス業界に勢いがある。
この業界、昨年10月20日に帝国データバンクから「100均」市場調査レポートが公表されているが、それによると、大手5社を中心とした2020年度の100円ショップ業界の売上高(事業者売上高ベース)は9000億円を突破している。(しかしながら、成長率は鈍化している。)
こうした中、それを上回る成長率なのが300円均一市場である。中でも注目したいのが「3COINS」だ。大阪の服飾大手パルグループが運営する同ブランドは「スリコ」の略称で親しまれ、2021年3~8月期の売上高は前年同期83.8%増の187億円と快進撃を続けている。
3COINS原宿店
100均では飽き足らない消費者に、より高い機能や驚きを満たす300円ショップは、特に生活雑貨など身の回り品でデザインや機能性など、100円にこだわらないことでマーチャンダイジングの幅と奥行きが広がり、さまざまなアイデアの実現を可能にしている。
私もコロナ禍で散策の幅を広げたまに100均を覘くことがあるが、それは楽しい!こんなものが100円だ!と感動さえする。その魅力はズバリ!「鮮度」と「アイデア」に尽きるのではないだろうか。
アイデアと言えば特許、しかもそれはオンリーワンな商品となる。それと同時に品数も多く入れ替わりの速い雑貨では知財紛争に巻き込まれることは避けなければならない。
そのことをクリアしながらプロのマーチャンダイザー(MD)は攻めのオンリーワン商品の実現、しかも月間の新商品投入数は半端じゃない。
「3COINS」で注目の原宿店、ここで面白いのは生花やフルーツサンドも扱っている。こうした展開、「300均無印」、またちょっとした「300均コンビニ」とも言えそうだ。
それはともかく、品揃えのメリハリの為に一定の比率で開発される「キラー商品」ではMDの思い入れの強い商品もあろう。そう思える商品がヒット商品にある。
スリーコインズ「グンゼTパンプスカバー」330円(税込)がそれだ。アンダーウエアで有名なグンゼとの共同開発で、しかもなんと特許取得済みだ。脱げないソックスとして、これがいま年齢問わず女子達に受けている。
グンゼTパンプスカバー
この商品に関連する特許を調べたところ、図面等から関連がありそうな特許を2つ見つけたので、興味のある方は脱げない秘密の詳細をチェックしてみて欲しい。
■特許6077859
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2013-001822/061E2B311D4225E44F795C98BDCECE6D3A27B1AA4479133B9074779F3BCA3B26/10/ja
■特許6210905
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2014-034273/239DF9CC70E416EA0A382CC5C9EF57EF193F9BB0D50C1ED0B218FE4A54CCFAA7/10/ja
なお、特許権者は、スリーコインズではなく、グンゼ株式会社等となっている。
また、iPhoneのコネクターが正規価格だと1999円なのに何故か100円ショップで売られているのかという事例もあるが、これはアップル社の特許権を回避していると考えられる。さらに、この世界では特許切れ商品としてジェネリックの手法でMDすることもある。
通販もコンビニもワンプライス店も、あるいは回転寿司でも、販売手法そのものの魅力とともにやはり肝心なのは商品力だ。価値と価格、そして決め手は独自のアイデア=オンリーワンな商品だ。
余談だが、いずれも直近の原材料高での価値と価格バランスの崩れは「商品と売り方」開発にとって向かい風であることは大いなる気掛かりだ。
ライター
渡部茂夫
SHIGEO WATANABE
マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表
通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。
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