秘密特許制度とはどんなものなのか?


2022年4月7日に衆議院を通過し、今後法案が成立する見込みの「秘密特許制度」。
すでに意匠法では秘密意匠の規定がありますが(意匠法第14条)、特許法における秘密特許とはどのようなものなのでしょうか。そしてなぜそのような制度が必要なのでしょうか。今回は、今後新たに導入される秘密特許制度について、簡単に解説してみます。

秘密特許制度は、国際的には特別なものではない

我々が普段目にする特許法は、当然ながら日本の法律であって、諸外国ではそれぞれ別々の特許法が存在します。

諸外国の特許法をみてみると、実はG20加盟国の中においては日本とメキシコ以外の全ての国の特許法が、秘密特許制度を有しています。

日本の特許法にはこれまでずっと秘密制度がなかったわけですが、そもそもなぜ特許を秘密にする必要があるのか、特許制度自体の基本的な仕組みについて、まずは確認しておきます。

特許制度:公開代償説

特許制度とは、発明に対して特許を受けた特許権者が、一定期間、その発明の実施について独占排他権(特許権)を有するという制度です。そして、この特許権を付与するための理由として古くから広く支持されているのが「公開代償説」です。

公開代償説とは、簡単にいえば、新規で有用な発明を世の中に公開した代償(見返り)として、一定期間、その発明を排他的かつ独占的に実施できる権利を与えるとする説です。この説に基づいて、特許権を得るには、原則として発明の公開が要件となっているのです(特許法第64条)。

また、最高裁の判例でも、特許制度について「特許制度は、発明を公開した者に対し、一定の期間その利用についての独占的な権利を付与することによって発明を奨励するとともに、第三者に対しても、この公開された発明を利用する機会を与え、もって産業の発達に寄与しようとするものである」と述べられています(平成11年4月16日民集53巻4号627頁)。

秘密特許制度は限定的非公開制度

秘密特許制度、つまり上述した「公開することを前提とした特許権」の限定的例外の制度については、現在、経済安全保障推進法案の4本柱の一つ(第5章65条~85条)として衆議院を通過しました。この制度は特許制度の根幹に関わる部分の例外規定となりますから、適用にあたっては厳しい限定条件がつけられます。

まず、法律案の効果としては、秘密特許制度により、一定範囲の出願について出願された内容が所定の期間非公開となります。これにより、一定の技術公開や情報流出が防止されます。

また、安全保障上の理由で出願を断念していた発明についても、特許権によって保護することが可能となります。

秘密特許とするかの審査

秘密特許とするかについては、個別に審査が行われますが、大きく次の3ステップに分けられます。

一次審査では、特許分類と、出願人からの申出に基づいて、保全審査を行う出願を選定・抽出します。主として核技術や先進武器技術等(機微技術)が抽出されることになります。

保全審査では、総理大臣が「国家等の安全を損なうおそれの程度」「保全指定をした際の産業への影響等」を考慮して審査を行います。

保全指定されると、所定の期間、公開されなくなります。なお、この期間は1年以内で期間延長もできます。

保全指定により、
①出願取り下げの禁止
②発明の実施は許可制
③発明内容公開の原則禁止
④発明情報管理義務
⑤他社との発明内容共有は許可制
⑥外国出願禁止
という制限がつくようになります。

おわりに

今回は、秘密特許制度について、制度の概要を簡単に説明いたしました。

秘密特許制度は、その名称やイメージが先走っている側面もありますが、あくまでも国家安全保障上、公開すると望ましくない技術について一定期間を定めて出願を公開しないというものです。

昨今の地政学的変化、安全保障上の危機は非常に流動的で不安定になりつつあります。このような状況下、官民協力して、日本の技術を守ることが重要となっています。


ライター

杉浦 健文

パテ兄

特許事務所経営とスタートアップ企業経営の二刀流。

2018年に自らが権利取得に携わった特許技術を、日本の大手IT企業に数千万円で売却するプロジェクトに関わり、その経験をもとに起業。 株式会社白紙とロックの取締役としては、独自のプロダクト開発とそのコア技術の特許取得までを担当し、その特許は国際申請にて米国でも権利を取得、米国にて先行してローンチを果たす。 その後、複数の日本メディアでも取り上げられる。

弁理士としてはスタートアップから大手企業はもちろん、民間企業だけではなく、主婦や個人発明家、大学、公的機関など『発明者の気持ち、事業家の立場』になり、自らの起業経験を生かした「単なる申請業務だけでない、オリジナル性の高い知財コンサル」まで行っている。

■日本弁理士会所属(2018年特許庁審判実務者研究会メンバー)
■株式会社白紙とロック取締役
■知的財産事務所エボリクス代表
■パテント系Youtuber 




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