知財ミックスで大ヒット!特茶の知財戦略


皆さん、こんにちは、弁理士の杉浦です。

暑い日が続いておりますが、汗をいっぱいかいた日には、コンビニで冷たいお茶を買って飲みたくなりますよね?私も、よくコンビニでお茶を買ったりします。特に好んで買うのが、「体脂肪をへらすのを助ける」などと記載された飲料を見ると、ついつい手が伸びますね。

今回は、この「体脂肪をへらすのを助ける」、つまり特定保健用食品(いわゆるトクホ)に関する商品、「伊右衛門の特茶」についてご紹介します。

まずは特許ですが、この特許は、「玉ねぎやリンゴなどの野菜や果物に含まれるポリフェノールの一種である、ケルセチン配糖体」を含有することで、体脂肪を低減できるというものです(詳細は以下の特許をご確認ください)。特許は、ケルセチン配糖体を配合する、容器詰緑茶飲料の製造方法について取得されております。

【特許番号】特許第6250353号
【発明の名称】ケルセチン配糖体配合容器詰緑茶飲料
【特許権者】サントリーホールディングス株式会社

次に、伊右衛門の特茶といえば、そのボトルデザインも当時は斬新なデザインで、一般消費者の興味をそそり、持ちやすく、竹筒のようなデザインの権利です。実はこれは意匠登録によって保護されております。

以下の図面を見ていただくと、点線の部分は権利不要求(ディスクレーム)している部分で、実線で描かれた部分について権利要求しております。つまり、部分意匠でボトルの一部の形状について保護しています。

最後に、商品名となっている「特茶」は商標登録で保護されております。特茶のネーミングがどのように決まったのか、わかりませんが、私は、なんとなく、特定保健用食品とお茶とがかけ合わさったようなものをイメージします。4文字ですし、覚えやすく、体脂肪を減らす、特別なお茶のような印象を受けます。

このように、1つの商品に複数の知的財産権を組み合わせて知財ミックスしており、全体で商品を保護している事例です。是非、御社の知的財産戦略に役立ててみてください。


【参考文献】
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6250353/83E1E133052A26372BB25D268351A3EE7B192F702CA8D6B5E5DD9E472E87EBBF/15/ja
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/DE/JP-2004-001075/370AD38137B03E56B0B9EC3E718B9DC375740E7D9C3C1B8CC1FEA35B582DDA5E/30/ja
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2012-046368/8F0CCFC45857C6AA05D280A004E2736293F1B218464A00D0C1345B886BA4CE70/40/ja


ライター

杉浦 健文

パテ兄

特許事務所経営とスタートアップ企業経営の二刀流。

2018年に自らが権利取得に携わった特許技術を、日本の大手IT企業に数千万円で売却するプロジェクトに関わり、その経験をもとに起業。 株式会社白紙とロックの取締役としては、独自のプロダクト開発とそのコア技術の特許取得までを担当し、その特許は国際申請にて米国でも権利を取得、米国にて先行してローンチを果たす。 その後、複数の日本メディアでも取り上げられる。

弁理士としてはスタートアップから大手企業はもちろん、民間企業だけではなく、主婦や個人発明家、大学、公的機関など『発明者の気持ち、事業家の立場』になり、自らの起業経験を生かした「単なる申請業務だけでない、オリジナル性の高い知財コンサル」まで行っている。

■日本弁理士会所属(2018年特許庁審判実務者研究会メンバー)
■株式会社白紙とロック取締役
■知的財産事務所エボリクス代表
■パテント系Youtuber 




Latest Posts 新着記事

ロボットタクシーの現状|自動運転と特許

「ロボットタクシー」の実用化が世界各地で進んでいます。本コラムでは、その現状とメリット・問題点を簡潔にまとめ、特にロボットタクシーを支える特許に焦点を当てて、日本における実用化の可能性を考察してみます。 世界で進むロボットタクシーの実用化 ロボットタクシーの導入は、主に米国と中国で先行しています。 米国 Google系のWaymo(ウェイモ)は、アリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシ...

6月に出願公開されたAppleの新技術〜顔料/染料レスのカラーマーキング 〜

はじめに 今回のコラムは、2025年6月19日に出願公開された、Appleの特許出願、「Electronic device with a colored marking(カラーマーキングを備えた電子デバイス)」について紹介します。   発明の名称:Electronic device with a colored marking 出願人名:Apple Inc.  公開日:2025年6月19...

東レ特許訴訟で217億円勝訴 用途特許が生んだ知財判例の転機

2025年5月27日、知的財産高等裁判所は、東レの経口そう痒症改善薬「レミッチOD錠」(一般名:ナルフラフィン塩酸塩)をめぐる特許権侵害訴訟で、後発医薬品メーカーである沢井製薬および扶桑薬品工業に合計約217億6,000万円の損害賠償支払いを命じる判決を下しました 。東レ側は用途特許に関して権利を主張し、一審・東京地裁での棄却判決を不服として控訴。知財高裁は、後発品の製造販売が特許侵害に当たるとの...

Pixel 7が“闇スマホ”に!? 特許訴訟で日本販売ストップの衝撃

2025年6月、日本のスマートフォン市場を揺るがす衝撃的なニュースが駆け巡った。Googleの主力スマートフォン「Pixel 7」が、特許侵害を理由に日本国内で販売差し止めとなったのだ。この決定は、日本の特許庁および裁判所による正式な判断に基づくものであり、Googleにとっては大きな痛手であると同時に、日本のユーザーにとっても深刻な影響を及ぼしている。 中でもSNSを中心に広がったのが、「今使っ...

KB国民銀行が仕掛ける“銀行コイン”の衝撃 韓国金融に何が起きているのか

韓国の大手金融機関がデジタル通貨領域への進出を本格化している。2025年6月、韓国の四大商業銀行の一角を占めるKB国民銀行が、ステーブルコインに関連する複数の商標を出願したことが確認された。これにより、韓国国内における民間主導のデジタル通貨開発競争が新たな局面を迎えつつある。カカオバンクやハナ銀行といった他の主要金融機関もすでに関連動向を見せており、業界全体がブロックチェーンとWeb3技術への対応...

トヨタ、ホンダ、日産におけるインホイールモーター特許の出願状況と技術的優位性

はじめに 近年、自動車業界における電動化の波は急速に進展しており、特にインホイールモーター技術は電気自動車(EV)の駆動方式として注目を集めています。インホイールモーターとは、車輪内に直接モーターを組み込む技術であり、駆動効率の向上や車体設計の自由度拡大など、多くのメリットを持つため、世界中の自動車メーカーが開発競争を繰り広げています。 本稿では、日本の自動車業界を代表するトヨタ、ホンダ、日産の3...

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池:さらなる光電変換効率の向上へ

次世代太陽電池技術の最有力候補として注目されるペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、従来の太陽電池の光電変換効率を大きく上回ることが明らかになってきました。この革新的デバイスの実用化に向け、すでに様々な製造技術が開発されています。今回紹介する米国特許US11251324B2もその一つです。 https://patents.google.com/patent/US11251324B2/ 本コラ...

包装×保存×AI=知財革命──「Tokkyo.AI」で実現する食品技術の特許化最前線

1. はじめに:食品業界が直面する知財化の課題 昨今、食品メーカーを取り巻く環境は、フードロス問題の深刻化や消費者の安全・安心志向の高まりなどにより、新たな包装設計や保存技術の開発が急務となっています。革新的な包装材料やプロセスが次々と生み出される中、知的財産(IP)面での迅速かつ戦略的な対応が差別化の鍵を握ります。 しかし、多くの企業では「開発ドメインと知財部門のコミュニケーション不足」「特許調...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る