レスポンス広告が主流のいま、脳科学で「刺さる」広告支援は有効か


「脳科学で『刺さる』デザイン感性可視化消費を刺激コニカミノルタ、広告の印象解析」こんな記事が先日の日経新聞に大きく載っていましたね。皆さんも読まれた方も多くいらっしゃるかと思います。

その記事を引用すると、【コニカミノルタは感性をデジタルで再現し、「刺さる」デザインを判断できる技術を開発した。脳科学をもとに、チラシやウェブサイトといった広告のデザインや形状などからひとが感じる印象や注目度を解析。

消費者の購買などにつながりやすい最適なデザインを提案する。電子商取引(EC)市場などでの訴求力を高めるサービスとして新たな市場を開拓する。】とある。

また、コニカミノルタのニュースリリースを見てみると。そのキャッチコピーは、【購買行動につながる最適なデザインを科学する ヒトの感性への働きかけを脳科学に基づいた画像解析で定量化 パッケージ・PR資材・商品陳列のデザインへ活用】とある。

日経新聞の記事の内容とコニカミノルタのニュースリリースの内容ではその期待・活用のについて少々ニュアンスが違ってるように私は受け取ったわけですがどうでしょうか。

このコニカミノルタの新サービスは、最先端の感性脳工学を利用して購買活動につながる最適なデザインを追求できるオンラインサービス「EXplainable感性®ソリューション(EX感性ソリューション)」で、今秋発売する予定だとしている。

商標登録第6543578号

®=商標登録もされてる「EX感性ソリューション」、人間の視知覚認知過程をもとにした数理モデルを画像解析に実装し、ヒトが注目するポイントを可視化。デザインの色、輝度、形状の特徴量をもとに、ヒトの注目し易さをヒートマップの形式で表示する。

この機能を利用して、訴求したいポイントを目立たせるデザインに改良できる。また、抽出した文字について、注目性を数値で表示することも可能。これにより、文字や背景の色などを変化させて比較しながら、より文字が目立つ改良を行うことができるというものだ。

コニカミノルタのHPより

一方、話は少し変わるが、一般的に広告活動にはブランディング広告とレスポンス広告がありますが最近のテレビや新聞での主流はレスポンス広告です。

いわゆるダイレクトレスポンス広告です。イメージや知名度を上げる、もしくは新発売などの告知を目的としたものから、直接注文や資料請求、問い合わせなどを一件でも多く獲得することを目的としたものです。

化粧品、健康食品、家電、保険などの新聞広告やオリコミ広告、またテレビショッピングはもちろん、ECもネット上の売り場なのでいかに注文を獲得するかが最も重要になってきます。

そのための表現はコトバであり映像やデザインでありモデルであり*オファーであるわけです。つまりすべては獲得レスポンス数を求めての表現ということになる。正確に言えば、媒体費用を超える粗利獲得レスポンス数が重要なのです。

しかもテレビや新聞やウェブでの表現には制作費も掛かかり、媒体費も掛かります。従って費用対効果でもっとも効率のいい表現、それを通販のクリエーターの中には「当り原稿」と呼ぶひとがいますが、この「当り原稿」を得るためには何通り、何十通りもの表現テストを最少の規模での実売を繰り返します。

いわゆるABテストと呼ばれるきわめてアナログな手法の連続で、「通販はすべてがテスト」との格言もここから来てるのかもしれません。バナーなどのweb上での広告でもこのABテストは盛んに行われます。

ちなみにここでの「オファー」とは、広告のなかで商品購入に繋がりやすくするため、または関心のある見込み客情報の獲得につながる仕掛け。

例えば、「無料サンプル配布」「無料モニター募集」「資料請求」「トライアル商品」「プレゼント付き」「初回無料」「まとめ買い」「定期割引」「返金保証」「送料無料」など、またそれらの組み合わせなどをオファーと呼び、レスポンス広告の「刺さる」に重要な施策と言われています。

こうしたレスポンス広告はとても理性的な行動を促すための訴求で、その表現開発はスタッフの感性と言うより経験(事例)から導かれるセオリーであり方程式といった合理的な根拠がベースとなってきます。

従って、健康食品のインフォマーシャルやECの商品ページの構成やデザインが各社よく似たものになっています。あれは、一番購買行動につながる最適を求めていくとほぼ同じような構成・デザインになってくるわけだということです。

ヒトの感性に働きかけを画像解析で定量化—感性脳工学により購買活動につながる最適なデザイン開発の支援を謳うコニカミノルタの新サービス、果たしてレスポンス広告の「刺さる」をどのくらい支援できるか。

むしろ野外広告や看板、店舗の入り口デザイン、商品陳列、あるいは選挙ポスターなどにより有効なのではないかと考えるのは私だけだろうか。


ライター

渡部茂夫

SHIGEO WATANABE

マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表

通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。

6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。




Latest Posts 新着記事

村田製作所、“特許力”で世界を制す 年々強化される知財戦略の全貌

電子部品業界において、グローバルで確固たる地位を築く日本企業・村田製作所。同社はスマートフォン、自動車、通信インフラなど、あらゆる先端分野で不可欠な部品を供給し続けているが、その競争優位性の核心には、他社を圧倒する「特許力」がある。 村田製作所の特許出願数は、国内外で年々増加しており、特許庁が公表する「特許資産規模ランキング」においても常に上位を占める。2020年代以降、その特許戦略はさらに洗練さ...

トヨタ・中国勢が躍進 2024年特許登録トップ10に見る技術覇権の行方

2024年における日本企業の特許登録件数ランキングが、特許庁公表の「特許行政年次報告書2025年版」により明らかになりました。その結果、国内企業上位10社には、自動車関連企業が3社名を連ね、さらに中国企業の技術力と知財戦略の成長が際立つ結果となりました。本稿では、トップ10企業の顔ぶれを振り返るとともに、自動車関連企業の動向、中国勢の勢い、そして今後の展望について解説します。 ■ ランキング概要:...

メルク、英ベローナを100億ドルで買収 キイトルーダ後を見据えCOPD新薬を強化

米製薬大手メルク(Merck & Co.、日本ではMSDとしても知られる)は、英国バイオ医薬品企業ベローナ・ファーマ(Verona Pharma)を約100億ドル(1兆4,700億円)で買収することで基本合意に至りました。買収金額は現地株式の米国預託株式(ADS)1株あたり107ドルで、これは直近の株価に対して約23%のプレミアムを上乗せした水準です。 背景:キイトルーダの特許切れと「ペイ...

知財覇権争い激化 中国企業が日本の次世代技術を標的に

中国企業、日本で次世代技術の知財攻勢強化 特許登録が急増 日本における次世代技術分野で、中国企業による特許登録件数が急増している。AI(人工知能)、量子技術、電気自動車(EV)、通信(6G)といった先端分野での出願が目立ち、知的財産権を活用したグローバル戦略の一環とみられる。中国勢の台頭により、日本国内企業の技術優位性や将来的な事業展開に影響を及ぼす可能性があるとして、専門家や政策当局も注視してい...

「aiwa pen」誕生!端末を選ばない次世代タッチペン登場

株式会社アイワ(aiwa)は、ワコム株式会社が開発した先進的なAES(Active Electrostatic)方式の特許技術を搭載した新製品「aiwa pen(アイワペン)」を、2025年7月3日より全国の家電量販店およびオンラインショップにて販売開始したと発表しました。マルチプロトコル対応によって、Windows・Android・Chromebookなど様々な端末での利用を可能にし、使う端末を...

完全養殖ウナギ、商用化へ前進 水研機構とヤンマーが量産技術を特許化

絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの持続的な利用に向けた大きな一歩となる「完全養殖」技術の量産化が、いよいよ現実味を帯びてきた。国の研究機関である水産研究・教育機構(以下、水研機構)と、産業機械メーカーのヤンマーホールディングス(以下、ヤンマー)が共同で開発を進めてきたウナギの完全養殖技術について、両者が関連する特許を取得したことが明らかになった。 これにより、これまで不可能とされていたウナギ...

ミライズ英会話、AI活用の語学教材生成技術で特許取得 EdTech革新が加速

英会話スクール「ミライズ英会話」(運営:株式会社ミライズ、東京都渋谷区)は、AIを活用した「完全パーソナライズ語学教材自動生成技術」に関する特許を、2025年5月に日本国内で正式に取得したと発表した。この技術は、学習者一人ひとりの語学レベルや目的、学習傾向に応じて最適な学習教材をリアルタイムで生成・更新するという、従来にない革新的な仕組みである。 本技術の特許取得により、語学教育における個別最適化...

トランスGG、創薬支援で前進 エクソンヒト化マウスの特許が成立

株式会社トランスジェニック(以下、トランスGG)は、2025年6月、日本国内において「エクソンヒト化マウス」に関する特許が正式に成立したと発表した。本特許は、ヒト疾患の分子機構解析や創薬における薬効評価、毒性試験など、幅広い分野で活用が期待される次世代モデル動物に関するものであり、今後の創薬研究において大きなインパクトを与えるものとなる。 ■ エクソンヒト化マウスとは エクソンヒト化マウスは、マウ...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る