Apple「アップルVR」関連特許が新たに公開!両腕ウォッチ型コントローラー


いわゆる「入力デバイス」といわれるものは、代表的にはキーボードやマウスが挙げられ、ほかにもトラックボール、ジョイスティック、タッチパネルなど、コンピュータにおいて何かしらの動作を実行するための多くのタイプの入力デバイスが利用可能となっています。

ところで、仮想現実(VR)を用いる場合には、キーボードやマウスなどを視認することが難しいばかりでなく、そもそも机の前に座って操作することが想定されていないことも多々あります。そのような使用態様を前提として、ユーザの身体の2つの異なる部分の間の接触を、入力ために使用することが試みられています。例えばヘッドマウントディスプレイに搭載されたカメラを使用して、指の動きを追跡し、反対側の手と接触している指を検出するといった技術が既に実用化されていますが、カメラベースのシステムは、反対側の手に接触している指と、そうではない指(ホバリングしている指)との間の差異を検出することが困難でした。さらには、カメラベースのシステムの場合、その動作のために指及び反対の手がカメラの視野内にあることを必要としていました。

今回のコラムでは、11月に出願公開されたAppleの特許出願のうち、皮膚間接触を検出する装置及び方法を紹介します。

発明の名称:Skin-to-Skin Contact Detection
出願公開日:2022年11月17日
特許出願日:2022年7月25日
公開番号:US2022/0365598A1

人体の接触を電気的に検出する技術

本発明は、身体の異なる部分との間の接触を検出する装置及び方法に関します。感知回路は、身体に触れるように構成された駆動電極に応答するように構成されています。

処理回路は、感知された信号の振幅が一定のしきい値を超えるか、また、信号の波形が歪んでいるか否かを評価して、皮膚と皮膚とが直接接触しているか、単に近づいているだけなのかを区別します。

左右の手の接触を検知するなら両手にApple Watch装着?

あくまで例示としてですが、出願された図面には両手にApple Watchのようなウェアラブルデバイスを装着する様子が記載されています。

このように両手に駆動電極を装着した上で、例えば片方の手に指を触れれば、両方の電極に流れる電流(基準波形)がショートカットされることで変化し、それによって皮膚に直接接触したことが検出できるのです。

片手の指同士の接触を検知するならリングを装着

もちろん、皮膚間接触は右手と左手といったことだけでなく、同じ手の2本の指の間の接触を検出してその移動ジェスチャーを検出することも可能です。その場合には、手首に装着したデバイスでは電流のショートカットを検出することはできませんので、指輪のようなデバイスを装着することが例示されています。

このようなリングデバイスを指に装着して、例えば人差し指と親指の接触を検知することが可能です。

デバイスは電流値の変化を検出していますので、単に接触・非接触を検知するだけでなく、接触したままスライドさせるジェスチャーを検知することもできます(スライドすることで電流の流れる距離が変わるため)。

このような皮膚間接触およびジェスチャーを検出することで、コンピュータに対して、例えばタップ、ダブルタップ、タップアンドホールド(長押し)、スライドといった入力として変換することが可能です。

複雑なハンドジェスチャーが検出可能

ハンドジェスチャーの例示として、2本指の場合、親指を含めた3本指の場合などが例示され、結構複雑なジェスチャーをそれぞれ検知することが可能とされています。

例えば2本指を閉じる動作を検出することもできます。

人差し指と中指を閉じた上で、さらに親指を接触させる動作を検出することも可能です。

逆に、人差し指と親指を接触させた状態から中指をさらに接触させる動作も検出できます。これらの動作はそれぞれ検出される波形が異なり、全て区別して検出することができるといいます。

ウェアラブルデバイスの拡充によってVRがさらに進化しそう

今回紹介したApple社の特許出願は、ウェアラブルデバイスを用いた入力装置・入力方法に関するものでしたが、このような技術が実用化されれば、ヘッドセットをつけて手元が見えない状態でも、様々な入力が可能となりますので、より一層VRの世界の没入感が高まることが期待できます。メタバースの進化は、このようなデータ入力・検出デバイスにかかっていますので、今後の発展に期待したいですね。




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