コンビニでは様々な商品やサービスが取り扱われています。本コラムの読者であれば、そこには多数の知的財産が付与されていることは想像に難くないところでしょう。ただ、こと特許に限ってみると、コンビニ各社の特許権に関する考え方に違いがあるのか、どの部分で独占権を得るのか、戦略に違いがあるようです。今回はコンビニ大手、ローソンに関する特許をピックアップしましたので紹介したいと思います。
ローソンは単独で勝負しない?
コンビニ最大手のセブンイレブン、サンクスと合体して業界2位となったファミリーマート、これを追いかける立場である業界3位のローソンという業界構造はよく知られたところです。特許検索を行ってみて気づくことは、ローソンは単独での勝負をせずに、何かしら特化した技術等を持っている会社とのコラボをすることで、特許を共同出願するケースが多いということです。特許庁のウェブサイトで、「株式会社ローソン」を含む出願人名の特許登録をサーチしてみると、ローソンが関係する特許は他社との共同出願が多いことがわかります。
やはり自社ですべて賄うよりは、特化した会社と提携することにより、より速く確実に共同研究の成果が得られるという点に、優位性を見出したのかもしれません。一例として、最も最近特許化されたローソン関係特許の概要を見てみましょう。
赤松化成工業株式会社・株式会社ローソン・三菱商事パッケージング株式会社・株式会社日本デキシー(4社共同出願)/カップコーヒー蓋の特許
発明の名称:飲料カップ用蓋体
登録日:2022年9月26日(特許第7146209号)
出願日:2019年8月19日
カップコーヒーの香りを楽しむためのプラスチック蓋
ローソンが展開する「マチカフェ」のホットコーヒーで既に実用化されている「香りフタ」ですが、2019年に出願されてすぐ各店舗で展開され、当時ニュースにもなりました(参考リンク:https://newswitch.jp/p/19724)。この特許出願は拒絶理由通知がされることなく特許査定され(いわゆる一発特許)、2022年9月に特許登録されました。
飲み口を開けるためにタブを引き起こし、それを固定するとともに香りのための開口部が開くという機構で、単純ではあるものの他に例がない独自のフタということで、「飲料カップ蓋体」という物の発明として新規性が認められたものと考えられます。
このようなフタの開発は、おそらくローソン単独では困難で、特にスピーディなプラスチック成形技術を有する会社とのコラボを行うことでスピーディな開発を実現したものといえそうです(赤松化成工業株式会社https://akamatsu.com/)。
共同出願のメリット/デメリットを考慮した戦略の必要性
特許出願を共同で行うということは、権利化されたときにその権利が共有になるということを意味します。一般に中小企業等は、研究設備や開発人員、販売ルートなどを一社で賄うことが難しく、商品開発のスピードアップのためには他社との共同開発は有力な解決策の1つです。
しかし、特許権が共有になった場合には当然ながらその権利から得られる利益は分配されるわけですし、また、第三者にライセンスしようとしたり、権利譲渡(権利の売り渡し)をしようとする場合には共有者の同意がなければ実行できないというデメリットもあります。このようなメリット/デメリットを勘案して、商品開発を行っていくことが重要です。
今回は、コンビニ特許から見える特許戦略のうち、ローソンの共同出願について見てみました。開発競争を勝ち抜くための戦略の1つとして、参考になれば幸いです。